ナタリー PowerPush - ジェニファー
歌謡曲に私のフレイバーを野心と情熱に満ちたスピリッツ
歌手としてのキャリアのスタートは、小学生。14歳のときに地元のハワイでアルバムをリリースし、その後映画「フラガール」のメインテーマの歌唱、ミュージカル「レ・ミゼラブル」「レント」への出演など、幅広いフィールドで活動してきたジェニファーがソロシンガーとして本格的なデビューを飾る。1stシングル「25時のエアポート」は昭和歌謡を想起させるミディアムチューン。今回は「ジェニファーバージョンの歌謡曲を日本の皆さんとシェアしたい」と語る彼女にこれまでのキャリアを振り返ってもらいつつ、歌謡曲との出会いから「25時のエアポート」に至る経緯を聞いた。
取材・文 / 森朋之 撮影 / 佐藤類
歌謡曲への思い
──デビューシングル「25時のエアポート」、非常に魅力的な曲だと思います。昭和歌謡のテイストを受け継ぎつつ、新しいポップスとしての手触りもあって。
ありがとうございます。私もすごくいい曲だと思います! レコーディングのとき、フルオーケストラが参加してくれたことにも感動しましたね。「私の曲のためにこんなにも……」ってうれしく思ったし、歌ったときも涙が出てきて。ソロシンガーとして活動するのが夢だったんですよ、ずっと。
──歌謡曲をテーマにしたのはジェニファーさんのアイデアなんですか?
歌謡曲を聴かせてくれたのは、レコード会社のスタッフですね。私はもともと、アメリカの古い曲をアレンジして、日本語の歌詞を乗せて歌ってみたらいいんじゃないかなって思ってたんです。私のデモを聴いたレコード会社の方が「これは歌謡曲に似てますね」って言って、そのとき聴かせてくれたのが欧陽菲菲さんの「雨の御堂筋」で。
──THE VENTURESが作曲した楽曲ですよね。
初めて聴いたときから「すごく好きだな」と思ったし、私のテイストで歌ったらいいんじゃないかなって。私は日本人ではないし、歌謡曲を聴いても「懐かしい」とは思わないんですよね。そういう音楽で育っていないから。
──古い音楽ではなく、新しい音楽として捉えたと。
もちろん、古い曲だなというのはわかりましたよ(笑)。リズムもノリも今のJ-POPとは違っているし、それがすごくよかったんですよね。こういう曲を自分の中でトランスレーションして、日本のリスナーの皆さんとシェアできたら、すごくいいだろうなって。もちろん「25時のエアポート」にも、そういうフレイバーが入ってるし。
──なるほど。昭和の歌謡曲は、ほかにも聴きました?
はい。「SWEET MEMORIES」(松田聖子)も好きだし、石川さゆりさんが歌う「ウイスキーが、お好きでしょ」も好きだし、これも欧陽菲菲さんですけど、「ラヴ・イズ・オーヴァー」もすごく好き。大事なのは歌詞なんですよね。歌詞がよかったら、ジャンルに関係なく好きになるので。「25時のエアポート」の歌詞もいいですね、すごく切なくて。私、切ないのが大好きなんです(笑)。
──歌詞を重視するのは、日本人っぽいかも(笑)。
リズムやアレンジも大事だけど、やっぱり歌詞ですよね。寂しいときに大好きな曲を聴けば、ハッピーになれるでしょ? ちょっと暗い話になっちゃうけど、好きな歌のおかげで自殺を思いとどまる人だっている。歌詞に深い意味があれば、(リスナーの)人生を変えることができるんですよ。歌詞が素晴らしくないとあんまり好きになれないし、歌いたいとも思わないですよね。
──好きな歌を聴くことで人生が変わった、という経験はジェニファーさん自身にもありますか?
まあ、私はもともと明るい人だからね! ジムに行くとき、元気になるために好きな曲を聴くことはあるけど(笑)。あと、思い出のある曲を聴くと、その当時のメモリーが頭の中に浮かぶじゃない? 「あのときはすごく幸せだったな」とか。それだけでもすごくハッピーな気持ちになれると思うんですよ。音楽は本当に人を助けるものですよね。
歌は人の人生を変えられる
──ジェニファーさんのこれまでのキャリアについても聞かせてください。幼少の頃から音楽活動を行っていたんですよね。
そうですね。6歳か7歳のときホノルルでタレントコンテストがあって、それに出場したんです。歌とかダンスとかをやらなくちゃいけなかったんですけど、「一番簡単なのは歌じゃない?」ってママと話して(笑)。そのコンテストに勝ってから、イベントに呼んでもらえるようになったんですよね。で、あるとき地元のイベントでジョン・レノンの「イマジン」を歌ったら、20歳くらいの軍隊の方がステージに上がってきて、いきなり抱きしめられたんですよ。「ありがとう」って。すごくビックリしたんだけど、そのときに「歌をやろう」と思ったんです。歌によって、人の人生を変えられるかもしれないなって。
──すごい経験ですね、それは。ちなみに「イマジン」を選曲したのは……?
ママです。ママとパパが結婚したときのファーストダンスの曲が「イマジン」だったみたいなんですよ。
──家ではTHE BEATLESも聴いてた?
はい。THE BEATLES、EAGLES、JOURNEY、QUEEN。あとは1930年代くらいのシンガー。エラ・フィッツジェラルド、ペギー・リー、ビリー・ホリデイ……。彼女たちの歌が大好きで、よく(CDに合わせて)一緒に歌ってましたね。もう少し大きくなってからは、歌の勉強のために聴いてました。
──現代のシンガーは?
もちろん聴きますよ。リアーナやビヨンセも好きだし。でも、寂しいときや「落ち着きたいな」というときはEAGLESとかがいいですね。日本の人たちにとっての歌謡曲みたいなものなので。
──音楽的なバックグラウンドはすごく豊富だと思うんですが、シンガーを続けていく上で、方向性に迷ったことはなかったですか? 「自分にはどんな音楽が合ってるんだろう?」という……。
ありましたよ、それは。「絶対にソロの歌手になりたい」という気持ちはずっとあったんだけど、「どっちに行ったらいいだろう?」ということに関しては、いろいろと迷いました。ジャンル的にはいろいろな道があったんですよ。レゲエ、ハワイアン、R&B、ジャズ、ポップス、J-POP。どのジャンルも好きだし、どっちにも行ける……それがよくなかったの。もし、1つだけのことしかできなかったら、そこにフォーカスできるじゃない? 私はそうじゃなくて、いつもやりたいことがたくさんあったから。自分で曲を書こうとしたこともあったし。
- 1stシングル「25時のエアポート」/ 2013年7月24日発売 / 日本コロムビア
- 初回限定盤 [CD+DVD] 1600円 / COCZ-774~5
- 通常盤 [CD] 1300円 / COCA-16739
初回限定盤CD収録曲
- 25時のエアポート
- Song For Your Love
- 25時のエアポート(instrumental)
- Song For Your Love(instrumental)
初回限定盤DVD収録内容
- 「25時のエアポート」ミュージックビデオ
- ジェニファーデビューまでの軌跡(ショートドキュメンタリー映像)
通常盤CD収録曲
- 25時のエアポート
- Song For Your Love
- You Can Change Your Destiny
- 25時のエアポート(instrumental)
- Song For Your Love(instrumental)
ジェニファー
アメリカ人の父と日本人の母を持つハワイ出身のシンガー。1児の母。小学生の頃から地元ハワイにてテレビやミュージカルに出演、14歳でアルバムリリースなど着々と歌手としてのキャリアを築く。2004年にニューヨークに移住し、R&Bシンガー・シャギーのヨーロッパツアーにコーラスとして同行。2006年公開の映画「フラガール」ではジェイク・シマブクロがプロデュースを手がけたメインテーマのボーカリストを務めた。2008年には「レ・ミゼラブル」「レント」といったミュージカルへ出演。欧陽菲菲「雨の御堂筋」を聴いたことをきっかけに昭和歌謡に傾倒するようになり、2013年7月24日、満を持して歌謡テイストを取り入れた1stシングル「25時のエアポート」をリリースした。