ナタリー PowerPush - Jeepta
噂の“憂い系”バンドが新作発表 フルアルバムが示すその多角的な魅力
自分たちの引き出しの多さを提示する作品に
──今回のアルバムだと「130」がchoroさんが作曲したナンバーですが、これはインストですね。Jeeptaは歌ものバンドっていうイメージが強かったので、意外な感じがしました。
choro 歌を乗せる案もあったんですけど、インストのままでいこうと。遊び心もある曲なので、音源でリスナーがどう反応してくれるのか楽しみです。
──「130」もそうですけど、今回の作品は新しい試みが詰まった作品だと思うんです。フルアルバムだからこそ挑戦できることもあったと思いますが、皆さんが感じたミニアルバムとの違いはどんな ところですか?
サトウ 単純に曲数が多いことですね。フルアルバムだから幅を持たせられるし、そういったことを念頭に置きながら選曲しました。「130」も、歌を入れずに「インストでいこうよ」って言えたのはフルアルバムだからですね。
──レコーディング面で違いはありましたか?
青木奈菜子 曲調やアレンジも今までとは違うことに挑戦できましたね。Jeeptaのいろんな側面を知ってもらえる作品になったかなと思ってます。
choro でも、このアルバムだけでJeeptaは完結しているわけじゃなくて。録っているときに「この先Jeeptaはどんなものが作れるんだろう?」ということを自分は感じたし、聴く人もそこを 感じてもらえるんじゃないかな。
──確かに引き出しの多さを感じさせる内容ですよね。終盤の「夢に見たこと」はピアノやコーラスが入っているし、「the present song」は手触り感のある弾き語りですし。従来のサウンドの質感を残しつつ、ネクストレベルを提示してるのかなという印象を受けました。
サトウ でも、別に無理に音楽性の幅を広げようとは思ってなくて。曲を作ってるタイミングで「夢に見たこと」にピアノが入ったらよくなりそうだなと思ったり、曲に呼ばれて出てきた 感じですね。「the present song」では一度バンドアレンジも試したんですけど、アルバムの全体像が見えたときに弾き語りにしたほうが曲の良さが引き立つし、最後に持ってきたら締まるんじゃないかなと思って最終的に戻しました。
アルバムタイトルの「傾向と対策」に込めた思い
──さて、アルバムには「傾向と対策」という意味深なタイトルが付けられていますが、どなたが付けられたんですか?
石井 僕が。「傾向と対策」って言葉が好きで、インパクトもあるし、タイトルにしたら面白いかなと思って。
──リスナーは何に対する「傾向と対策」だろうって気になると思うんですが、具体的には何を指しているんですか?
サトウ 自分たちの人生に対する傾向と対策じゃないですかね。卓からタイトルを「傾向と対策」にしたいって言われたときに、人生かなと直感的に感じて。
──大きなテーマが込められているんですね。
サトウ あと「シナリオ」にしても「進化論」にしても、全部途中経過の言葉なんですよね。それは狙ってたわけじゃなくて、人から言われて気付いたんですけど。確かにJeepta自体が途 中経過で、まだ進化する余地があると思うし。そういった意味でも「傾向と対策」という言葉は、アルバムを象徴するタイトルですね。
──これまでのJeeptaのサウンドの“傾向”を示しつつ、次のJeeptaの方向性を示す“対策”的な楽曲も入ってる作品なのでぴったりなタイトルだと思います。
サトウ そう言ってもらえると嬉しいです。
──アルバムを作ってみて、次のビジョンは見えましたか?
サトウ ええ。フルアルバムを出せたことで、今後活動の幅を広げていけると思ってます。曲のアレンジについても、いろいろと手を出しやすくなるし。今後もJeeptaを好きな人の期待を 良い意味で裏切っていけるような作品を作っていけたらいいなと考えてます。
ライブ現場はJeeptaの嘘のない場所
──Jeeptaは独特のサウンドはもちろん、ライブバンドとしても評価されていますが、皆さんにとってライブはどんなものですか?
サトウ Jeeptaの一番嘘のない場所ですね。僕らの場合はライブをするためにすべてがあるというか、ライブで自分が表現したいことを見せるために練習してるんで。
──作品だとクールな印象を受けたんですが、ライブだとアグレッシブなパフォーマンスが印象的で。なによりもオーディエンスを意識して演奏しているように感じたんですが、いつ頃から客席を意識するようになりましたか?
石井 お客さんをちゃんと意識できるようになったのは最近で……。聴いてくれる人が目の前にいるときに頑張らなくて、いつ頑張るんだっていうか。もちろん前も意識してなかったわけじゃな いんですけど、背中向けててもお客さんの視線やエネルギーを感じるんです。
──去年1年で100本近くライブをされてますけど、以前に比べて自分たちのパフォーマンスで変わったと感じるところはありますか?
choro 最初はステージ上だけでいろいろやってましたけど、最近はライブハウス全体を意識するようになりましたね。大きな枠組で見せ方を考えられるようになってると思います。
青木 あとみんな動くようになりましたね。前は定位置にいて一生懸命やってる感じだったんですけど、最近はいつの間にかドラムの前に誰かいる! みたいな(笑)。私も周りを見渡せる余裕が出てきたし、ライブがすごく楽しいです。
──頼もしいですね。ライブと言えば夏はツアー以外に「ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2009」への出演も決定していて、こちらは普段のライブとは違う雰囲気になると思いますが、意気込みはいかがです か?
石井 ライブハウスとは広さが違うし、そこはギアひとつ入れ直す必要があると思うんですけど……。下手に力んだりせず、ウチららしくライブができればいいと思ってます。
「心」ビデオクリップ
Jeepta(じぷた)
2004年12月に千葉で結成。翌2005年2月に初ライブを開催する。2006年7月にchoro(G)が加入したのを機に、石井卓(Vo,G)、サトウヒロユキ(B)、青木奈菜子(Dr)を含めた4人編成となる。2007年4月に自主制作 盤「リコール」を発表し、2カ月で500枚を完売させる。その後、全国各地でのライブツアーやイベント出演を経て、2008年1月にミニアルバム「シナリオ」をリリース。外資系CDショップで好セールスを記録し、注目を浴びる存在に。激走するエモーショナルなサウンドとクセのあるハイトーンボーカルの妙が、ライブハウスを中心に人気を集めている。