JABBA DA FOOTBALL CLUBが3月10日にメジャー1stアルバム「JABBA DA FOOTBALL CLUB」をリリースした。
セルフタイトルとなった本作には、「新世界」や「きみは最高」など2019年のメジャー進出以降にリリースされたバラエティ豊かな楽曲に加え、ORANGE RANGE、スキマスイッチ、the pillows、サンボマスターのヒット曲をサンプリングしJABBA流にリアレンジした楽曲などを収録。彼らの音楽的な影響源やそれらを元にした再構築力といった、JABBAが目指す方向性がより明確化された1作に仕上がっている。
音楽ナタリーではメンバーのNOLOV、ROVIN、JUQI、BAOBAB MCにインタビューを実施。自身の原体験にあった音楽を胸にこれからも歩んでいきたいという原点回帰の意思を感じさせる今作について、制作の中で見えてきたことや、サンプリング楽曲に込めた思いなどを語ってもらった。
取材・文 / 高木"JET"晋一郎 撮影 / 岩澤高雄
やっぱりJABBAはチーム戦
──JABBAは2020年3月に2ndシングル「国道9号線」をリリースしましたが、コロナ禍でツアーなどは実施できませんでしたね。
NOLOV 確かに予定してたことがうまくいかなくなったこともあったんですけど、すべて計画していたことがダメになったわけではなかったし、根本の方針自体は変わってないんですよ。実は去年の1月にはチームとしての方向性は決まっていたし、JUQIのソロ活動やROVINの別動ユニットの話(参照:JABBA DA FOOTBALL CLUBのROVINとアバンティーズそらがユニット結成)もすでにあって。2019年に行った、メンバーが各地に住み込んでライブチケットを手売りする企画「住み込んじゃってすいませんf(^^;」のような泥臭い動きはできなくなったけど、「何もできない!」という焦りはまったくなかったですね。逆に、あの時間でJUQIとROVINはそれぞれの活動に注力できたし、俺とBAOBAB MCにとってはJABBAの曲を作るための修行期間だったというか……ひたすら潜っていた1年でしたね。
BAOBAB MC 全部採用するとしたら、フルアルバムを3枚出せるぐらい曲を作ったよね(笑)。
──なるほど。JUQIくんは2020年7月にソロ曲「Bye again」を発表しましたが、手応えは?
JUQI 正直、音楽を作ることに集中できたのはありがたかったですね。その時間がなかったら、何をしたらいいのかわからなかったと思うし、音楽ができることのありがたさを改めて感じて。JABBAの制作に関わってくださっているプロデューサーのSUIさんと二人三脚で楽曲を作ったことで、技術面のレベルも上がったし、自分の成長につながった1年でしたね。
──ROVINくんはそら(アバンティーズ)とのユニット・ROVIN×Buddy、そしてBuddy、Kick a show、Sam is Ohmとのユニット・Be-Lovedの2名義で作品をリリースして。
ROVIN はい。去年はかなりがむしゃらに走ってたし、めっちゃ楽しかったです。自分のやりたいことをやり尽くせたかなと。ライブができなかったり、作ったものを直で届けられなかったりというフラストレーションはあったけど、そのぶん楽曲制作により集中できたと思います。
──水面下でのBAOBAB MCくんとNOLOVくんの動きはどんな感じでしたか?
BAOBAB MC 緊急事態宣言中の4、5月ぐらいは、とにかくソングライティング能力を上げるための修行期間でしたね。家でできることでもあったので、SUIさんの徹底コーチのもと1日に10曲、10メロディを作るという、マジで1000本ノックをし続けるような生活で(笑)。メロができたらSUIさんが「じゃあNOLOV、そのメロに10本歌詞を書こう」と言ってくれたり。どんな形でもいいから曲を作る、歌詞を書く、そして1曲作り切るという気持ちで、今振り返るとジャッキー・チェン映画とかドラマ「コブラ会」みたいな感じでした(笑)。ほぼ付きっきりと言ってもいいくらい、どんな些細な質問にも答えてもらったし、難しい話から駄話まで付き合ってもらいました。でも、それが本当に自分のためになったんですよね。自分の得意なことがはっきりとわかるようになったし、それが作品にも顕在化していきました。
──ひたすら曲を作るという作業は精神的にもかなりきつい作業だったかと思いますが、それをチャンスと捉えていた?
BAOBAB MC はい。その方向でがんばろうと自分の気持ちもすぐ切り替えられました。世の中のムードとしても、ライブは止まっても音楽作品のリリースがストップすることはなかったし、JABBAチームのスタッフも「止まらず、曲を作り続けましょう」と鼓舞してくれたので。自分の中で課題だった部分を整理したり、解決したりできて、すごく意味のある時間になりました。
NOLOV 俺も、チーム全体でJABBAの課題に向き合えたことが本当によかったなと思います。BAOBAB MCも自分も、A&Rやマネージャー、SUIさんみたいなプロデューサーを含めたチームからの意見で、自分たちの問題点に気付くこともありましたし、みんながいたから、いろいろ動いて問題解決ができたというか。身動きが取りづらいときに、悩むだけじゃなくて、「こうすればもっと伸びるんじゃないか?」と自然に前を向ける環境作りができた。それについては、僕らはすごく恵まれてるなと感じますし、やっぱりJABBAはチーム戦なんだなと強く思います。
──それは今まで以上に、結束力が強まった感覚でしょうか?
NOLOV というよりも、チームとしての意識が芽生えてきたんだと思います。今までは、みんなでJABBAを動かすという概念があまりなかったというか。チームでJABBAの方向性を考えていた中で、「JUQIはソロを動かした方がいいんじゃない?」「ROVINのユニットも動かそうよ」という話が出て、物事がその通りに進めば進むほど、それぞれが成長していく姿が見えたんですよね。だからJABBAは“塊”として動けるようになったのかなって、今謎の感動に包まれています(笑)。
NAOTOさんに導いてもらった
──今回のアルバムの構想はどのように固めていったんですか?
NOLOV 修行期間を経て10月ぐらいから制作を始めたんですけど、最初に「*~アスタリスク~」ができあがってから、一気にダダダダッと。
BAOBAB MC それまでバラバラに作っていたアルバム曲が、「*~アスタリスク~」完成後に徐々にまとまり始めたんです。
NOLOV ちょうどJUQIとROVINのソロ活動とも重なっていた頃だったので、アルバム制作はかなり混線していたんですけど、それが解けたのは、「*~アスタリスク~」をプロデュースしてくれたNAOTO(ORANGE RANGE)さんの存在が大きいと思います。
──それはどんな部分で?
NOLOV 今回のアルバムは、俺たちが少年の頃に聴いた曲をサンプリングカバーさせてもらうというのが鍵になっていて。制作に入ってから自分たちでもいろいろ試行錯誤していたんですが、「これだ!」とブレイクスルーできた手応えがなかったんです。でも、NAOTOさんに参加してもらって「*~アスタリスク~」の制作に入ったら、とにかく学びだらけ。NAOTOさんの一挙手一投足すべてがプロフェッショナルだし、「アイデア聞かせてよ!」という感じで僕らにパフォーマンスする幅を与えてくれたり、それを面白がって一緒に楽しんでくれたり、すごく懐が広くて……。そのおかげで俺たちも、この1年でそれぞれが蓄えてきた技術やアイデアを素直にアウトプットすることができました。結果、NAOTOさんとの制作を通して、曲作りの中で素材をいかに光らせるかという感覚をつかめた気がします。楽曲のプロデュース能力という部分においても、NAOTOさんに導いてもらったところがあって。そこで今回のアルバムに対するJABBAの方向性がやっと見えたというか。
BAOBAB MC サッカーでいうと、スペースの空け方やスルーパスの出し方を教わった感じ(笑)。
NOLOV そうそう。そういうゆとりや遊びの部分の作り方だよね。今までは「どうやってこのグループを1つにまとめるか」ということに終始していたけど、今は1人ひとりが「俺はドリブルできる」「俺は走り込む」みたいに、それぞれの持ち味を生かすような……そういうマインドをNAOTOさんから学びました。
ROVIN 俺のパートも、NAOTOさんがカッコいい部分だけを抽出してくれて、しかもそれを曲の一番いいところにハメてくれました。自分はこれまでソロ活動を含めていろんな人たちと制作してきましたけど、NAOTOさんは今までにないやり方で俺を使ってくれて、すごく新鮮で。完成した音源を聴いて「なるほど!」とじわじわ来ましたね。
JUQI あと、NAOTOさんはエディットするたびに、「さらにこういうのもありますけど」みたいに僕らの想像を超えるものを提案してくれたんです。僕らはそれに導いてもらって、ラップをしていった感じでした。
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「反則だ!」と言われても