今回のタイミングでメジャーの話がなかったら、おそらく解散してたと思う
──NOLOVくんは?
NOLOV まず「ウケんなあー」って(笑)。僕自身、ラップを始めてまだ5年目だし、大学出て就職してから始めたようなタイプなんですよね。しかも島根のめっちゃ田舎の出身なんで、そういう人間が、ラップでメジャー進出するっていうのは、めちゃくちゃ面白いなって。しかもメジャーデビュー作の「新世界」も、ミュージックビデオの制作にすごいお金をかけたし、こうやって取材してもらえるし、届かせるということにおいては、もう最強の環境じゃん!って。ウケると同時にめっちゃうれしい。それに変な話、おそらくインディーズのままだったら、JABBA DA FOOTBALL CLUBってグループ自体が存続できなかったと思うんですよね。今回のタイミングでメジャーの話がなかったら、おそらく解散してたと思う。
──なかなかシビアな話になりましたけど、そう思ったわけは?
NOLOV 去年1年が本当に過渡期だったんですけど、活動が楽しくなかったんですよね。グループ内でめっちゃ揉めてるし。
──それはどういうタイプの揉め方だったんですか?
NOLOV 「OFF THE WALL」(2017年3月発売の2ndアルバム)まではTSUBAMEさんが作品全体のプロデューサーとして制作を導いてくれてたんすけど、「FUCKING GOOD MILK SHAKE」(2018年3月発売のミニアルバム)からはTSUBAMEさんの力を借りないで制作し始めたんですね。そういう、次のフェーズに入るときに、この4人の力だけで真剣に音楽にちゃんと向き合えるのか、内容のある作品が作れるのかっていう部分で、ものすごく揉めたんすよ。やっぱり、それまでは遊びの延長線上だったけど、ソニーとの契約が進んで、グループとして責任感を持って音楽を作ることに真剣になったときに、それまではスルーできた歪みやアンバランスさが一気に露呈したんだと思う。それもあってとにかく揉めて、空気が悪かったし、4人で音楽を作る必要はないんじゃないか……っていうより「ない」って思うぐらい、状況が悪くなったんですよね。だから、本当にメジャーとの契約がなかったら空中分解してたと思う。
──続けるテンションや気力自体も、この経緯がなければ、保てるかわからなかった?
NOLOV 僕個人の意見ですけど、確実にそうだと思います。やっぱりモチベーションを維持することができなかったし、それをリーダーである僕が鼓舞することが難しかった。バンドだったらもっと役割分担とか別のアプローチが可能だったかもしれないんだけど、4MCグループって“4人全員がフロントマン”だから、余計にややこしかったのかも知れない。それで「音楽は楽しいのに、なんでこんなことで悩まなくちゃいけないんだ。くだらねえな」ってヤケになる部分もあって。
最悪の時期だった2018年の4人
──やっぱり「FUCKING GOOD MILK SHAKE」のリリースを含めた去年のJABBAは、非常に注目が高まってた時期だと思うし、外側からは「今ノッてるんだな」って見えていたと思うんですけど、内部は大変な時期だったんですね。
NOLOV 最悪の時期でしたね。
ROVIN みんなそれぞれバラバラだったし、見るべきところがみんな見えてなかったっていうのは感じますね。俺自身もどこに向かってるのかがまったくわからない状態で。「FUCKING GOOD MILK SHAKE」の制作中はモロにそういう感じだったんですよ。JABBAに対して半身になってしまっていたというか。
ASHTRAY 僕の場合は、メジャー進出が決まったことで1回満足しちゃったのかもしれないですね。そのあとが大事なのに、なんとなく満足して、停滞してしまったというか。自分たちで曲を作って、ライブして、ケツを叩くのも自分たちなのに、それを忘れてしまってたのかなって。
BAOBAB MC 僕の場合は普通に仕事もしてる二足のわらじ状態だったんですけど、その一足である昼間の仕事がいい感じのわらじだったんで、なかなかそれを捨てづらかったし、それで半身みたいになってたというのもあるし……もっと個人的な部分では、トラックメイカーとしてどんな曲を作るべきなのかがパッと浮かばなくなったんですよね。単純にクリエイトに対してボンヤリとしてしまって、「何がカッコいいんだっけ……?」という状態に陥ってしまって。「俺って何をよしとして作ってたっけ?」「みんなにはどうやって提供してたっけ?」みたいな。
──自分の感覚を信じられなくなってしまったと。
BAOBAB MC 今までだったら、トラックを作ってみんなを納得させることが、自分の一番のモチベーションだったんですけど、そのハードルがどんどん上がっていって、ジャッジが厳しくなっていく中で、いい悪いの判断が自分の中ではっきりしなくなっていって。スランプというか、イップスみたいになってしまったんですよね。だからYouTube向けに「OK」「すきにしちゃえば?」「CANDY IN THE POWDER」の3曲を作って荒療治した感じでした。
──今の話を聞いて、「そりゃ『DON'T WORRY, BE HAPPY』を作るわ」と思いました(笑)。
BAOBAB MC そうなんですよ(笑)。それの答えなんですよ。
──それまではあまり個性や内面性を出してこなかったJABBAが、あのミニアルバムで自分たちのパーソナリティだったり、グループとしてのアイデンティティだったりを打ち出したことが興味深かったんだけど、今の流れを聞いて、あの作品を作ることで足場固めをしたかったんだなって。
NOLOV 「DON'T WORRY, BE HAPPY」を作る中でもいろいろ揉めごとはありましたけどね。歌詞のダメ出しも多かったし、すんなりとできたわけではなくて。でも、成長曲線でいうところの一番苦しいポイントにいる自覚はあったので、なんとかここで踏ん張れば次が見えるのかなっていう期待もあって。だからその中で「i&i」ができたときはうれしかったし、実際に手応えも大きくて、「これがJABBAの突破口だ!」「これがスタイルだ!」って俺は思えたんですよ。メンバーもそれをライブで披露していく中で、どんどんその気持ちになっていったというか。
──そこでよりグループとしての結束が強くなったという感じだったんですね。そして、ちゃんとメンバー同士でぶつかって「何がいい、何が悪い」「どうしたらこのグループはちゃんと動くのか」という部分を見据える作業をしたからこそ、軋轢が生まれると同時に、「DON'T WORRY, BE HAPPY」という、自分たちを言及しつつ、結束を高めるような曲が生まれたのかなって。
NOLOV そうですね。仲良しだし楽しくできてるから、このままのいい空気でずっと上がれれば超理想だったんですけど、やっぱどこかで痛みを伴うようなことが起きるし、成長するときには、キツイことが絶対あるんだなって。
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「この曲はヒップホップじゃない」と言われようが問題ない