JABBA DA FOOTBALL CLUB|解散危機を乗り越えて、メジャーという新世界へ

NOLOV、ROVIN、ASHTRAY、BAOBAB MCの4MCで構成されるラップユニット・JABBA DA FOOTBALL CLUBが、ニューシングル「新世界」を引っさげてSony Music Recordsよりメジャーデビューする。

そもそもJABBAは、音楽的な影響元にKICK THE CAN CREWやRIP SLYMEがあることを公言し、その楽曲的なアプローチも非常にキャッチーだっただけに、メジャーへの進出はこのインタビューでも語られる通り、彼らの願望が叶ったと言ってもいいだろう。しかし同じようにインタビューの中で語られる、解散にも直結するようなグループ内の齟齬や制作面における変化という危機が、世間的には勢いに乗っていたと見られるようなアクティブな活動を展開した昨年に起こっていた。その危機を乗り越えるきっかけになったのが、本作の前に2月にリリースされた「DON'T WORRY BE HAPPY」の制作だったという。その意味でも、まるで筋繊維が破壊されてからさらにビルドアップするように、JABBAは痛みを乗り越えてさらにグループとしての芯を強くした。そしてそのうえで生み出された「新世界」は、彼らのグループとしての充実ぶりを感じさせる1曲となった。

取材・文 / 高木"JET"晋一郎 撮影 / 斎藤大嗣

頭上がんないっすよね、あの人には

──メジャー進出の発表は4月7日に開催された「OMAKE PARK」でしたね。あの場で所属レーベルだったOMAKE CLUBからの卒業と、ソニーへのメジャー移籍が発表されましたが、このときに発表した理由は?

ROVIN やっぱり、筋を通したかったっていうところだと思いますね。

NOLOV そこに行き着くのかな。レーベル主宰のTSUBAMEさん(TOKYO HEALTH CLUB)にももちろん相談して。前のナタリーのインタビュー(参照:JABBA DA FOOTBALL CLUB「FUCKING GOOD MILK SHAKE」特集)でも話してる通り、自分たちを育ててくれた、恩義のありすぎるOMAKE CLUBのイベントで発表するのが、一番ふさわしいと思ったんですよね。自分たちのイベントとかSNSじゃなくて。

ASHTRAY 逆に言えばあの場所以外、考えてなかったんですよね。今言われて「そうだ、ほかの方法もあったんだ」って思った(笑)。

NOLOV それもあって、あの時間はエモかったっす。すごく感傷的な気持ちになってました。

──エモ感を出してましたね。

NOLOV 出ちゃったんすよねー、なんか(笑)。とにかくTSUBAMEさんには感謝しかないし、感謝を伝えたいなって。

ROVIN ほかに登場したアーティストは、もちろん普通にライブしてるんだけど、こっちはすごくエモい気持ちでいるから、ほかのライブも全部エモく見えてた(笑)。

NOLOV あの日の僕らは異常だったかもしんないですね。ASHTRAYはイベントの前週のリハの段階で「たぶん、俺泣くんだよなー」って言ってたし(笑)。

ASHTRAY なんか想像するだけで、ちょっとウルウルしちゃって。結局、余裕がなくて泣かなかったすけど(笑)。

──実際、メジャー進出の相談をTSUBAMEくんに話したときは、どんな反応でしたか?

NOLOV メジャーから声がかかった段階でTSUBAMEさんには話してたんですけど、すごく親身になって相談に乗ってくれて。契約の内容確認のときも帯同してくれて、いつにも増してストロングな顔で「これはこういうことですか?」「それは納得いかない」みたいに、ソニーと大人同士のネゴシエーションをしてくれて(笑)。

ROVIN 「怖っ!」ってぐらい真剣に話し合ってくれました(笑)。

NOLOV 本当に、どこまでいっても先輩ですね。頭上がんないっすよね、あの人には。

ROVIN

感慨って言われたら“ゼロ”

──音楽を取り巻く構造が変化して、メジャーとインディーズの垣根というのも曖昧にはなってきているとはいえ、それでもメジャーというのは“プロ”という称号でもあると思うんですが、それを手に入れての感慨は?

ROVIN その話が決まったのは実は1年前で、そのときは「キタぜキタぜ!」「行くとこまで行っちゃうっしょ!」みたいにかなりアガッたんですよね。でも、すごく正直な話をすれば、「OMAKE PARK」で発表したとき、OMAKEへの感謝の気持ちはすごく高まったけど、“メジャーに行く”ということに関してはなんの感情も湧かなくて。それを「なぜか?」って考えたら、まだ何もつかんでないからだと思うんです。夢に見てた段階に足を踏み入れたけど、何もまだつかめてない。だから、発表しただけではなんの感慨も湧かなかったのかなって。

──現実感がないってこと?

ROVIN それもあるし、本当に“ゼロ”になった感じなんですよね。もちろん自分のやりたいこととか、JABBA DA FOOTBALL CLUBの中でやるべき仕事は考えているんだけど、感慨って言われたら“ゼロ”です。

──その意味でも、ここから始めるしかないというか。

ROVIN 本当にそれですね。ここから1個1個、がむしゃらに見つけていくしかないと思ってます。

ASHTRAY メジャーに行きたいっていう気持ちは、もともとグループとしてあったと思うんですよ。それに、声をかけてもらえるっていうのは、活動や作品が認めてもらえたってことだと思うし、それはすごくうれしい。でも何かが完全に変わるというよりは、これまでの延長線上なのかなと思いますね。ただ、“ホビーからジョブになる”と考えると責任は感じます。

──BAOBAB MCくんはどうですか?

BAOBAB MC 僕は、正直めちゃめちゃうれしかったんですよ。ただ、メジャーに行ったときにどうなるんだろうっていう恐怖もあって、去年はちょっとバッドに入る感じもあったんですよね。だけど友達や家族、その当時働いてた職場の人とかがすごく喜んでくれて。そういう親しい人の反応が「認めてもらえた」という1つの指標になったんです。それで、自分の活動は人を喜ばせることがちゃんとできてるんだって納得できたというか、肯定的に捉えることができるようになりました。そこからは明るく捉えて、これから起こるであろういろんなことに対しても、それは“新世界”なんだなって、前向きに考えられるようになってますね。