ナタリー PowerPush - JAWEYE
紆余曲折のバンドマン人生
ルーチン化するのがすげえイヤ
──会社員時代って結構稼いでました?
いや、言うてもそんなにですよ。同い年の人よりはちょっと稼いでたくらいじゃないですかね。
──でもそういう安定した生活を捨てて、再びバンドを結成するわけですよね。
そうっすね。師くん(師崎洋平 / G)に誘われてJAWEYEを結成しました。当初は仕事を辞めてまでやろうとは思ってなかったんですけど、楽曲のクオリティを上げたかったし、ライブもどんどんやっていきたい気持ちが湧いてきたので会社を辞めることにしたんです。
──今の時代、会社勤めをしながらバンド活動をやっている人もたくさんいると思うんですけど、そうしなかったのはどうしてですか?
やっぱりバンドとして動ける時間が限られちゃうことが大きいですね。あとは、3年間会社勤めをしたことで、また日常がルーチン化してきてたんですよ。それがすげえイヤだった(笑)。
──あははは。ルーチンを相当嫌ってますね(笑)。
イヤっすね。会社を辞めても、そこでの経験を生かしてフリーとして働けばいいとも思ってましたしね。
──生きていくためにはバンド以外の仕事をしてもいいと思ってると先程もおっしゃってましたけど、上田さんにとって最高の理想は音楽1本で食べていくことなわけですよね?
もちろん音楽でもっと稼いでいきたいし、音楽を自分の中でもっと大きなものにしていきたいと思ってますけど、「稼ぐ」という術が音楽じゃなきゃいけないとは思ってないというか。音楽とは全く違ったことをやることで、音楽をより楽しめるようになることもありますから。何がなんでも音楽だけで生きていかないとダメだって思ってる人のほうが、アーティストとしては正しいのかもしれないですけどね。
──いや、でも上田さんのその柔軟な考え方は大きな武器のような気がします。
柔軟さっていうのは自分でも感じますね。あとはバランス感っていうんですかね。そこは何をするにもすごく大事にしてる。仕事にしても音楽にしても、自分たちのエゴとお客さんの求めてるものが絶妙にマッチしたものが一番素晴らしいんだと思うんですよ。それは偶然生まれるものなのか、狙っていけるものなのかはわからないですけど、僕はちゃんとそこのバランスを柔軟な思考で狙い澄まして行きたいんですよね。そうじゃないと自分たちが楽しくないから。
意志の必然性を感じて生きていけるかどうか
──今回リリースされたJAWEYEとして初のシングル「STARGAZER」は、収録されている3曲とも“自分らしさ”というテーマが込められているように感じました。それって上田さんがここまで歩んできた中で、最も大事にしてきたことのような気もしていて。
そうかもしれないですね。今回の作品は“アイデンティティ”をコンセプトにして作っていったんですよ。最初に出した「alpha」というミニアルバムは自分たちと向き合った作品で、それを持って回ったツアーで得た反応を元に、お客さんが求めてるものを自分たちなりに考えて出してみたのが次のミニアルバム「Binary Monolith」だったんです。で、その後に回ったツアーで自分たちの考えが間違ってなかったことがわかったので、じゃあ今回の作品ではまた改めて自分たちらしさ、JAWEYEはここがいいんだよっていうことをちゃんと提示しないとなって思ったというか。それはつまり、バンドとしてのさらなるアイデンティティの確立ということになると思うんですけど。だから曲的にも自分のパーソナルなところがすごく出てると思います。
──2曲目の「Plastic Sunlight」に出てくる「僕は僕の出した答えに沿って、生きて、死ぬ、って信じてる。」というラインがすごくいいですよね。
自分の意志の必然性を感じて生きていけるかどうかってことだと思うんですよね、大事なのは。誰かに言われたままに動いて「自分で選んだわけじゃないのになあ」って思いながら死んでいくのってイヤじゃないですか。これは俺が選択したんだってちゃんと言い切って死んだほうが絶対幸せだと思うから。
──上田さんは要所要所で自分なりの確固たる選択をし続けてきていますよね。
僕の場合は自分で選んだっていうことがわかりやすい生き方をしてるんでしょうね(笑)。そういう生き方が自分には合ってるなって思う。そうじゃないときっと誰かのせいにして生きていくことになっちゃいますからね。
──JAWEYEが自ら選択した、自分たちならではのサウンドが詰まったシングルからは、バンドがすごくいい状態だということが感じ取れましたよ。
そうですね。前のバンドは僕がひとりで全てを抱え込んでしまって、結果的にそれが背負いきれなくなった感じだったんですよ。でもJAWEYEはみんなでやってる感がすごく強いんです。それぞれの役割で、それぞれがちゃんとアイデンティティを確立できていて、それで成り立っているバンドだと思うので。
──メンバー同士の信頼関係が厚そうですよね。
うん。すごく信頼してるし、すごく尊敬してますね。珍しいぐらい仲良いですからね、うちのバンドは。
バンドで稼いだお金で“終の棲家”を買って死ねたら
──JAWEYEは結成から2年が経ったわけですけど、上田さんが懸念するルーチン化は、バンド内にはまだ訪れてはいませんか?
いや、それはありますよ、やっぱり。でもそういうときはメンバーに言うんです。「今ちょっと危なくない?」「ルーチン化してない?」って。で、例えばすげえ変な曲を作ってみたりとか、ライブのセットリストを変えて新しい展開を考えてみたりとか、そういうことをして自分たちのモチベーションアップを図ったりっていうことをしてますね。つまんなくなるのはイヤだねっていう話はメンバー同士でしているので、今のところ大丈夫そうです(笑)。
──じゃ最後に。今の段階で思い描いているJAWEYEとしての成功って?
紅白出場とかは超どうでもいいから(笑)。そうだなあ、バンドで稼いだお金で“終の棲家”を買って、そこで死ねたら成功じゃないっすかね。その間、バンドは解散せずに。
──いいですね、それ(笑)。
やっぱ老後のこととかね、もういい歳なんでメンバーみんな考えてますよ。実際そういう話もしますし。「年金払ってる?」とかね(笑)。ただ、考えてるっちゃ考えてるけど、そこだけ見て不安になっててもしょうがないから、今できる範囲で未来に投資できることをやろうみたいな感じですよね。
ニューシングル「STARGAZER」/ 2012年8月7日発売 / 1050円 / LD&K Records / R3RCD-112
CD収録曲
- STARGAZER
- Plastic Sunlight
- MURAKUMO
ワンマンライブ情報
JAWEYE 1st ONE-MAN LIVE!! 「Exhibitionist! viol.2」-STARGAZER Release Party-
2012年9月23日(日)東京都 渋谷Star Lounge
OPEN 17:30 / START 18:00
オープニングアクト / DJあり
料金:前売 2800円 / 当日 3300円(ドリンク代別)
一般発売:2012年8月11日(土)
ローソンチケット(Lコード:76472 )
JAWEYE(じょあい)
上田浩平(Vo, G)、師崎洋平(G)、齋藤孝(B)、松尾篤佳(Dr)の4人によって2010年に結成。パンク、エモ、ギターロックなどのバンドサウンドとエレクトロの要素を融合させた独自のスタイルで注目を集め、2011年4月にミニアルバム「alpha」をリリース。その後ライブサポートとして活動していたマニピュレーターの高橋広祐が正式加入し、5人組となる。2012年1月に2ndミニアルバム「Binary Monolith」をリリース。8月7日には初のシングル「STARGAZER」を発表した。