ナタリー PowerPush - JAWEYE

実力派デジタルロックバンド 第2次初期衝動で新作完成

パフォーマンスを2Dから3Dに

──具体的にはどんな課題があったんですか?

上田 やっぱり、外に向けていく力ですね。今回の「Binary Monolith」のコンセプトでもあるんですけど。

師崎 知り合いのバンドとかに「2D感が強い」って何度か言われたんですよ。でも、求められるのってそういう平面性じゃなくて、目の前に迫ってくるくらいの立体的なライブじゃないですか。最初はその2D感覚がわからなかったんですけど、あるとき確かにそうだなって思いました。内向きでオブジェ的というか。やっぱり反応でわかるんですよね。お客さんが「もっと盛り上がりたい!」みたいな空気を出してるのが伝わってくるときもあったし。

上田 立体的なパフォーマンスに振り切るための話し合いはよくしましたね。やりすぎても引きすぎてもダメだから、線引きが最初は難しかったですけど、ひとまずそれぞれが限界のラインまでやってみようと。で、行きすぎたときはお互いに指摘し合うようにしました。自分たちのライブを毎回DVDに録って、みんなでチェックして(笑)。

師崎 ただ単に騒がしくて、テンション高いだけなのはもちろん嫌だから、ちゃんと音を媒介にしてお客さんと共有したいんですよ。音で納得させないとバンドマンじゃないですしね。そこのバランスを追求して3Dにするのが課題でした。

──となると、「Binary Monolith」には「解放」というイメージがあるんですか?

師崎 浩平がよく言ってるのは、「解放」と「共有」ですね。歌詞もそういうテイストが如実に出てきてる。前は自分の葛藤を描いたものや自分を奮起させるような詞がメインだったけど、今回は「届けに行く!」くらいのメンタリティで書いてるのが多いなって。

上田 今回は表現の先にあるもの=共有を意識しました。ライブで自分たちの表現を投げかけた結果、受け取った側に「うれしい」「楽しい」っていう感情が生まれるじゃないですか。それを共有することで、音楽がより楽しめると考えたんですよね。

──リード曲の「CRACK」がわかりやすいんですけど、聴き手に迫ってくるような巻き込む力を感じます。

師崎 それがこれまでにはなかった3D感ですね。

デジタルを大胆に使えるようになった

──今作から新メンバーとして、マニピュレーターの高橋広祐さんが加入されてるのも大きな変化ですよね。

上田 僕ら的にはマニピュレーターを正式メンバーに入れたい気持ちがずっとあったんです。ただ、メンバーにするんだったらバンドマンとしての自分の立ち位置をちゃんとわかってる人間がいいなと思ってました。その点、広祐は昔のバンドではベーシストでリーダーを務めてたので、強いポリシーを持ってる。マニピュレーターだけど、バンド感を意識して音を作ってくれるんです。いい意味で泥くさいっていうのかな。

──結果的に、JAWEYEってそういう人たちが集まってますよね。

師崎 そうそう(笑)。人間性が合わないといっしょにやれない。広祐はツアーを回ってみて間違いないってわかりましたね。なるべくしてなった感じ。サウンドにデジタルのアイデアが出てきたときから、僕の中ではJAWEYEはこの5人で構成されてるイメージがあったので。

──高橋さんが加入したことでエレクトロ色が強くなって、アレンジも積極的になった印象があります。

師崎 ビビらずにデジタルを入れていける感覚になったかもしれませんね。

──そう、結成当初はそのバランスに対してもっと過敏だったと思うんですけど、今回はずいぶん解放されてますよね。

師崎 「行けるときは行っちゃえ!」っていう大胆さが出てきてます。例えば「CRACK」のサビ前で生音をバッサリ抜いてるのは広祐がいてくれるからこそやれることですね。

上田 広祐が入ったからといって、打ち込みばかりになってもダメなんですよ。どっちかに寄ったらつまらない。バンドっていうひとつの塊の中に存在する音にしたかったんです。「GAMEOVER」はインストでデジタル色も強いんですけど、ドライにならずにウエットな感じをうまく出すようにして。

何も削らず“ごった煮”のままで成立させた曲

──ちなみに前作では「SALVAGE」が最も直感的な曲でしたが、今回は「CRACK」がそれに当たりますか?

師崎 はい。直球なのは「CRACK」ですね。前作の流れも汲んでて、サウンドの変化が如実に表われてるし、何よりわかりやすい曲です。

──ギターサウンドもソリッドに変化してますよね。「PROMISE」のイントロなんかはザラっとした質感があって。

上田 サウンドアプローチはかなりこだわってますね。ギターの音色もラインの「ジジッ」と貼り付いたところを使ったりとか。

師崎 前はもっとマイクだけに頼って生で録ってたけど、よりデジタルの要素が増えて音もソリッドにしたくなりましたね。

──変わった点で言うと、作曲クレジットがバンド名義になってますね。

師崎 最近はもう総力戦なので。パートごとに分担して、みんなで作ってるんですよ。

──「砂の城」はまさにそういう曲な気がしました。いろんな試行錯誤の末に、ひとつの曲が完成したような。

師崎 この曲は上田浩平そのものですね。彼の頭の中って本当に入り組んでて、簡単に解読できない部分があるんです。自分だったらもっとタイトにまとめて聴きやすくするところを、「この難解さがいい」って言うタイプで(笑)。そのぐるぐる回ってるような思考回路を楽曲で表現してみたいと思ったんですよね。感覚的には彼の頭の中を具現化していく作業でした。

上田 「砂の城」はとにかく削りたくなかったんですよ。最初に英語で書いた歌詞を日本語詞に書き換えるチャレンジをしたのもあって、この曲に関してだけは削るっていうことが妥協に思えたんですよね。いろいろなことを盛り込んだ上で曲として成立させたかった。

──ストレートなギターロックとダンスビートを強調した曲って、1stでははっきり分かれてましたけど、この曲ではどちらもごった煮になってますしね。

師崎 奇妙な曲ですよね(笑)。

上田 サビをすごくキャッチーにしてあるので、最終的にそのサビがまた聴きたくなって何度も聴いてくれたらうれしいですね。歌詞においてもメロディにおいても、1曲の中でたくさん発見があると思うんです。メロで言ったら、Eメロまでありますから。僕は難解なものが好きなんでしょうね。

ミニアルバム「Binary Monolith」 / 2012年1月17日発売 / 1890円(税込) /  LD&KR / R3RCD-109

収録曲
  1. GAMEOVER
  2. PROMISE
  3. CRACK
  4. 90's GHOST
  5. 砂の城
  6. ASH
  7. ASSASSIN
「Binaly Monolith TOUR 2012」
  • 2012年1月28日(土)高知県 高知X-pt.
  • 2012年1月29日(日)香川県 高松DIME
  • 2012年2月11日(土・祝)東京都 下北沢ReG
  • 2012年2月17日(金)群馬県 高崎club FLEEZ
  • 2012年2月19日(日)神奈川県 Club Lizard YOKOHAMA
  • 2012年2月24日(金)大阪府 福島LIVE SQUARE 2nd LINE
  • 2012年2月25日(土)愛知県 SAKAE R.A.D
  • 2012年3月2日(金)兵庫県 神戸太陽と虎
  • 2012年3月4日(日)石川県 金沢AZ
  • 2012年3月9日(金)茨城県 水戸ライトハウス
  • 2012年3月10日(土)宮城県 仙台JUNK BOX
  • 2012年3月16日(金)岡山県 岡山CRAZYMAMA 2nd Room
  • 2012年4月6日(金)栃木県 HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-2
  • 2012年4月7日(土)岩手県 盛岡CLUB CHANGE WAVE
  • 2012年4月14日(土)東京都 渋谷Star Lounge
JAWEYE(じょあい)

上田浩平(Vo, G)、師崎洋平(G)、齋藤孝(B)、松尾篤佳(Dr)の4人によって2010年に結成。パンク、エモ、ギターロックなどのバンドサウンドとエレクトロの要素を融合させた独自のスタイルで注目を集め、2011年4月にミニアルバム「alpha」をリリース。その後ライブサポートとして活動していたマニピュレーターの高橋広祐が正式加入し、5人組となる。2012年1月に2ndミニアルバム「Binary Monolith」をリリース。