ナタリー PowerPush - JASMINE

自身と聴き手を未知なる空へと誘う「High Flying」

JASMINEが9thシングル「High Flying」をリリースした。これまで自身にしかつづれないオリジナリティと熱量を持ったリリックを圧倒的な歌の力で表現してきた彼女だが、今回はその次なるステージを見据えた強烈な楽曲を制作。現在世界各国で大ブームを巻き起こしているEDM的アプローチを加えた、JASMINEのネクストレベルともいえる作品だ。今作の制作に至った経緯、そして、これからの彼女が突き進む方向をじっくり語ってもらった。

取材・文 / 川倉由起子

EDMは日本にもちゃんと浸透してきてる

──約10カ月ぶりのシングルですね。その間、どんなことをしていましたか?

JASMINE

次のシングルから方向性を変えようということで、いろいろな音楽を聴きながらその打ち合わせをずっとしていました。で、EDM、TRAP、ダブステップとかのほうに向かって進んでいこうかって話になって。

──なるほど。でもなぜ今、方向転換を考えたんでしょう?

世界的に音楽のムーブメントが変わってきてるなって思ったんです。自分自身が聴いてる音楽やジャンルも徐々にEDMとかに変わってきてたし。だから、この新しい潮流にチャレンジしてみたいなーって思って。

──EDMはここ数年、海外で大ブームですよね。でも、ブラックミュージックのイメージがあるJASMINEさんがそれを聴くのは少し意外かも。

まあ最初はちょっと抵抗もあったんですけど。ブラックから、いきなりそっちには飛べなかったというか。でも、どんどんいい曲と出会っていくうちに「あ、いいじゃん!」って思って(笑)。向こう(海外)でそのブラックとEDMの2つが掛け算されたみたいな音楽も出てきてたので、それもあって聴けるようになったって感じです。

──JASMINEさんのブログを見ると、3月に音楽フェス「SPRINGROOVE 2013」に行って「初のEDM生体験をした」とも書かれています。

はい。イベントはすごく楽しかったし、今、世界の音楽がそういう方向に向いてて、それが日本にもちゃんと浸透してきてるっていうのを肌で感じました。特にZEDDのDJは、光や映像も使ってずっとフロアをアゲ続けるのがすごくて! オーディエンスの聴き方も変わってきてるというか、フロアの中にそれぞれが自分のスペースを作って楽しんでる感じがありましたね。

昔から「自分に怖いものはない!」って決めてる

──そんな経緯があった上でEDMサウンドを採り入れた新曲「High Flying」が完成したということは、やはりこの曲はEDMを意識してイチから作ったものなんですか?

いや、これは実はけっこう前からあったデモで。それを何度か作り直してこの形になったんですけど、EDMを加えたことで突き抜けるような音に生まれ変わったと思います。リリックも大事ですが、今回はどちらかというとサウンド重視ですね。

──確かに文句なしにカッコいい、洗練されたサウンドでした。ちなみに今回提示したサウンド感は今後も続けていくんですか?

そうですね。もうバッキバキにやっていきたいと思います!

──あ、宣言しちゃいます!?

はい。こういうサウンドとバラードがMIXすることで、すごいパワーを生み出すってこともわかってきたので。

──そこまでJASMINEさんがどっぷりハマるEDMの魅力とは?

アガるし、やっぱりパワーくれるところですかね。でも個人的にアガるというよりは、鳴り始めたら「ヤバイ、アガる!」ってみんなで一緒に楽しめる感じ。EDMって基本オンビート(小節の奇数拍を強調したリズム)だから聴きやすいんですよ。ヒップホップとかみたいなオフビート(小節の偶数拍、裏拍を強調したリズム)だと踊れる人しかフロアでノれないってこともあるだろうけど、そういうのがないんで。

──今後、日本にもさらにEDMの波が来ると思います?

思います。というか、来ないとマズいと思います。浸透してきてはいるんだけど、なんか日本だけ遅れちゃってるんですよね。世界的にはそっちが進んでるのに。

──正直、そこに対する悔しさや危機感もあるんですか?

「ヤバイなー」とまでは思わないけど、私自身、単純にこっちが好きだから。そこがもっと広がっていけばいいなって思います。

──でも今回の新曲でEDMの魅力を知る人もいるだろうし、そうやって新たなサウンドを広める開拓者的な存在になりたいという気持ちは?

すごくあります。むしろ、そうなるつもりでいます。新しいところにぶっ込んでいくのって、楽しいじゃないですか。

──未知の領域に踏み込むことは全然怖くない?

怖がっててもしょうがないから。それに私、昔から「自分に怖いものはない!」って決めてるんです。唯一怖いと思うのはゾンビに追いかけられることかな(笑)。

ニューシングル「High Flying」 / 2013年5月29日発売 / Sony Music Associated Records
完全生産限定盤 [CD] / 1020円 / AICL-2540
通常盤 [CD] / 1020円 / AICL-2541
収録曲
  1. High Flying
  2. BED
  3. High Flying(Instrumental)
JASMINE(じゃすみん)

1989年生まれの女性シンガーソングライター。幼い頃からゴスペルやブラックミュージックに親しみ、17歳から都内のクラブを中心に本格的な歌手活動をスタートさせる。その圧倒的な歌声がリスナーや音楽関係者から高い評価を受け、2009年6月にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズからシングル「SAD TO SAY」でメジャーデビュー。JASMINE本人がすべての作詞作曲を手がけており、心を打つメロディと等身大の感情を描く鋭い歌詞で熱い注目を集める。2010年7月には1stフルアルバム「GOLD」をリリース。2011年は楽曲制作やライブを中心に活動し、約1年ぶりとなるニューシングル「Best Partner」を2012年7月に発表。翌2013年5月、9thシングル「High Flying」をリリースした。