浪江女子発組合で最初に悩んだこと
──ここからは1stアルバム「花咲む」の話に移りたいと思います。アルバムは「Overture ~浪江発の風にのって~」を経て、“浪江町全体”をテーマにした「なみえのわ」で幕を開けます。
高井 お披露目のときにパフォーマンスした、浪江女子発組合にとっての始まりの曲なのでいろんな思いがあって。まず私たちのことを知ってもらうときはこの曲を聴いてもらいたいですし、浪江町の方にはそろそろお馴染みの曲になってくれていたらいいですね。“なみえのわ”を広げていこうという内容の歌詞も含めて大切な楽曲です。
播磨 加入前に「なみえのわ」のパフォーマンスを観たとき、サビでスカートをひらひらさせる振りがかわいらしいし、清楚な感じがあって、私もやってみたいなと思いました。ファンの感想みたいでごめんなさい(笑)。私が浪江女子発組合に入って最初に披露した曲も「なみえのわ」なんですよ。そのときはホントにうれしかったです。
佐々木 私たちは浪江町出身のメンバーがいるわけではないし、どういう立場で活動していったらいいのか、最初は難しいなと感じていて。「がんばれ」と言うのも厚かましいというか……震災から10年以上経って復興している場所もあるし、皆さん10年間がんばられてきた中でどういう声をかけたらいいのか、それが最初に悩んだことでした。「なみえのわ」の制作のときも「がんばる」という言葉を使わずに皆さんを元気付けて、穏やかな気持ちになってもらう歌詞にすることが1つのテーマでした。
──そういったテーマや歌詞はもちろんですが、曲調やメロディも含めて「なみえのわ」はすごくいい曲ですよね。一聴してグッと惹き付けられるものがあって。
佐々木 ですよね! 浪江町の皆さんに楽しんでいただくというのが一番なんですけど、普段から応援してくださっているファンの皆さんを置いてきぼりにしたくなくて。ファンの方あってのこの活動なので、もちろん浪江町をイメージして聴いてくれたらうれしいですが、そうじゃなくても疲れたときや気持ちが落ち込んだときに聴いたらそっと寄り添ってくれる曲になっていると思います。
師匠と2人でユニット曲を歌う気分は
──ほかの収録曲についても同じように紹介してもらいたいのですが、新曲やこのアルバムで初音源化された楽曲を中心に伺おうと思います。「なみえのわ」に続く3トラック目の「桜梅桃李夢物語」は、ノリのいい自己紹介ソングになっていますね。
佐々木 配信番組の中で「自己紹介ソングを作りたいね」という話になったのが始まりですね。どのアイドルグループも1曲は自己紹介ソングがあって、ライブで盛り上がるイメージが強いじゃないですか。「桜梅桃李夢物語」も浪江女子発組合のほかの曲よりアップテンポで明るくて、派手な音がたくさん入っている曲調になっています。そのうえでどうやったら私たちらしさを出せるかなと考えたときに、みんなを花に例えて紹介していくという案が出たんです。
愛来 メンバーの個性があふれ出ている歌詞になっていて。萌花のパートにビブラートを強調するところがあったり、ただの自己紹介ソングじゃなく、曲として聴いてもライブで観ても楽しんでもらえる曲になっているんじゃないかと思います。
鈴木 自然とメンバーの顔と名前が覚えられると思います。ももクロさんやB.O.L.Tのファンの方の中にはAMEFURASSHIの4人のことをそんなに知らない人も多いと思うので、これをきっかけに楽しく覚えてもらえたらうれしいです。
──それぞれの自己紹介のパートの中で、鈴木さんのビブラートは特に耳に残りますね。
鈴木 レコーディングでビブラートを毎回褒めてもらうんです(笑)。このパートには私っぽくない自己主張の強さがあるから、録っていて恥ずかしかったです(笑)。
愛来 でも、覚えてもらいやすいよね。
──続いて、佐々木さんと内藤さんによるユニット曲「ほれ、あいべ!」について聞かせてください。
佐々木 “うけどん”という浪江町のゆるキャラをテーマにした曲です。子供番組っぽい雰囲気があって、大人も童心に帰ってつい体を揺らしたくなるようなメロディになっています。歌詞もかわいらしくてわかりやすい内容で、私たちもゆるキャラになったような気分で歌ってます。
内藤 小さい子も一緒に楽しめる歌を歌うことに憧れがあったので、「ほれ、あいべ!」を歌えるのがすごく楽しいですし、この曲を聴いて「シャケの帽子? モッチモチの体って何?」というように、うけどんのことが気になってくれたらうれしいですね。あと、一緒に踊っていて楽しい振り付けになっているので、ぜひみんなに真似してほしいです。
市川 小さい子が真似してたらかわいいよね。
鈴木 うけどんや子供たちとコラボして歌ってほしいです。
──師匠と2人でユニット曲を歌うのは緊張しませんか?
内藤 そうですね……気分としては、ももクロさんのライブに行って急にステージに上げられて歌ってる人、みたいな感じです(笑)。
佐々木 そんな気分で歌ってるんだ(笑)。
内藤 ホントに毎回ドキドキしていますが、楽しみながら歌わせてもらっています。
あのとき感じた気持ちを忘れないように
──浪江町を含む相馬地方で毎年夏頃に行われる伝統行事「相馬野馬追」をテーマにしたという「それぞれのハタ」についてはどんな印象を持っていますか? この曲は浪江女子発組合の楽曲の中でもっともハイテンポで、疾走感あふれるナンバーになっています。
小島 浪江女子発組合にはかわいらしい清楚な曲がたくさんありますが、「それぞれのハタ」は歌詞に「挑め」や「プライド」など、強い言葉が多く並んでいて。どんな人にも刺さる歌詞になっていると思うので、落ち込んでしまった人の背中を力強く押せる曲にしていきたいです。
佐々木 アルバムのうち「なみえのわ」「ミライイロの花」「あるけあるけ」「つながる、ウンメイ」「またキミと。」の5曲はすでに配信されていて、「それぞれのハタ」はそれによってみんなの頭に中に浪江女子発組合らしさのイメージが固まってきたからこそ挑戦できる曲ですね。アルバムの中で新たな一面を見せられたらという思いがありました。私たちらしさを忘れず、勢いのあるライブの盛り上がり曲にしていけたらと思います。
愛来 移動が激しかったりと、振り付けにも疾走感が出ているので、ステージに集中して観ていても、一緒に踊りを真似しても楽しめるんじゃないかな。
佐々木 衣装によって曲のイメージも変わってくると思うので、これから衣装のパターンが増えていく中で見せ方に変化を付けられる曲になると期待しています。
──「それぞれのハタ」の次には、浪江町出身のシンガーソングライター・牛来美佳さんが2015年に制作したナンバー「いつかまた浪江の空を」のカバーが収録されています。この曲には地元を離れて暮らさざるを得なかったときの思い、前を向いて進んでいくという意志がつづられているとのことですが、テーマがシリアスな分、歌うのが相当難しそうです。
佐々木 牛来さんが被災したときに感じた気持ちや、浪江町に住んでいた方の気持ちが歌詞に詰め込まれているので、それをちゃんと伝えられるように私たちも受け継いでいく、という思いで歌っています。私も震災当時のことを印象深く覚えているんですけど、やっぱり東京で感じた気持ちと、当時浪江町に住んでいた方が感じられた気持ちは全然違うし、私たちが想像できないような大変なことがたくさんあったと思うんです。それを、私たちを通してもっと若い世代に伝えていけたらと考えています。10年経って震災と向き合う気持ちを忘れちゃった人もいるかもしれませんが、あのとき感じた気持ちを忘れないようにするのも大切なことだと思うので、そのきっかけになれたらなって。
──このカバーをLINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)公演で初披露したときは、かなり緊張したんじゃないですか?
佐々木 歌詞がストレートな内容ですし、テンポがゆっくりで音数も少ないので、かなり緊張感がありましたね。この曲に見合った活動をしてかなきゃと感じています。
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