JAM Project|結成20周年で明らかになるレジェンドユニットの真実の姿とは?初のドキュメンタリー映画を楽しむ5つのキーワード

キーワード3
海外

──今回の映画には、ニューヨークでのライブやその前後の観光や打ち上げの模様も収められています。普段から海外でのライブではあんな雰囲気なのでしょうか?

遠藤 セントラルパークを5人で歩いているシーンがありますけど、ああいうふうにそろって観光しているのはかなり珍しいです。海外に行ったときはライブ以外にも取材などの予定が細かく入っているので、そういうタイミングがなかなかなくって。この映画のおかげでゆっくりできました(笑)。

影山 あのニューヨークでのライブは、「Anime NYC」という毎年行われているアニメコンベンションの一環で行われたものだったんだよね。その前年にはしょこたん(中川翔子)とかモーニング娘。'18も出ていて。

遠藤 カラオケでしたけど、前日のリハーサルでイヤモニの回線が全然ダメで。だからほとんどリハができない状況だったし、スタッフも対応が大変だったと思います。

──そうしたトラブルも乗り越えてのライブだったんですね。

奥井 トラブルはもう慣れちゃいました。ピンマイクで歌うこともあったし。

影山 昔、ブラジルの野外で2DAYSライブをやったんですけど、PA卓にカバーかけないで帰ったら、夜に大雨が降って機材が全部ダメになったこともあったし。

遠藤 次の日に会場に行ったらPA卓ごと変わってて、「もう1回最初から準備するの?」って思ったやつですね(笑)。

影山 メンバーが5人なのにマイクは2本しかないとかもあったし。

──JAM Projectとしては2008年から何度も海外ツアーなどをされているだけに、もう慣れた様子ですね。

遠藤 強くなりました。僕はサッカー選手ではないけど、アウェイで戦うときは自分がしっかりしてないと絶対にいい歌が歌えないなと思いますもん。だからマイクが2本しかなくても、「じゃあ2本でなんとかしようぜ」というふうに考えられる強さは手に入れました。そこで負けちゃっていい歌が歌えずに日本に帰ったら、自分が悲しいですから。

奥井 遠藤さんはアウェイに燃えるんですよ。

遠藤 好きですね。

影山 でもお客さんに対してはアウェイ感とかないよね。

福山 最初の海外ツアーの台湾公演で、お客さんが3500人も入ったんですよ。当時、僕らの最大動員数はNHKホールの3500人だったので、それと同じ人数が海外の最初のライブでいたんです。全然アウェイではなかった。

左から福山芳樹、きただにひろし、影山ヒロノブ。

影山 アニソンファンはノリがいいしね。アジア音楽のフェスで人気絶頂の東方神起と俺たちが一緒になったとき、会場の9割が東方神起のファンだったときもあって。もうペンライトで会場は一面真っ赤。そんな中で1割だけオレンジのペンライトを振ってめっちゃノッてる人たちがいて、それがJAMのファンだった。「SKILL」歌ったときなんて、もう狂ったように盛り上がってくれて(笑)。ああいう熱いファンがいるから、どこに行っても自信を持って歌えますね。

きただに 頼もしいですよね。

──皆さんは世界中でライブされていますが、確かアフリカ大陸だけ未経験ですよね?

影山 俺はソロで呼んでもらってエジプトに行きましたけど、JAMとしても行ける可能性があったんですよ。現地のファンの子たちが始めたばかりのアニソンイベントでしたけど、お客さんが800人くらいいて盛り上がったんです。その後、日本に戻ってきたらエジプト大使館の人が食事に誘ってくれて、会ってみると「来年、エジプトで一番人気のポップシンガーとJAMでジョイントコンサートしてください。スフィンクス前のステージで」って。「もちろんやりますよ!」と返事していたんですけど、そのあと政変が起きてなくなったという。

遠藤 そういうところでも歌ってみたいなあ。

きただに オーストラリアとかも行きたいですよね。

──そうか、オセアニア大陸でもまだライブされたことないんですね。

遠藤 あと南極も。Metallicaは南極でやったんですよ。あのときは「やられた!」って思った。

影山 ははは(笑)。

きただに いろいろ行きたいですね。もう、しばらくライブで遠くに行けてないから、飛行機に乗りたいです。

キーワード4
ライブ

──映画では、2020年に予定されていた20周年記念ツアーが次々に中止になっていく中での、皆さんの意思も語られています。

福山 撮影が始まった頃は、そのツアーが映画のエンディングになるものだと思っていましたけどね。

──JAM Projectと言えばライブというイメージも強いだけに、ツアーの中止はとても残念でした。しかしツアーが中止になったあともJAM Projectは何回か配信ライブをされました。すでに慣れましたか?

奥井 いやいや、全然慣れない(笑)。

遠藤 やっぱりお客さんがいないと、どこか冷めているというか、冷静になって歌ってしまいますね。お客さんも冷静に観ることになるだろうし。配信だと、リアルライブの高揚感でみんなを丸め込めるような雰囲気が出ないんです。もちろん配信ライブのよさもあるけど、逆に難しさも感じていますね。

影山 確かにな。

──やはりリアルライブが普通にできるようになってほしいですね。2020年9月にゲストアーティストを迎えて行われたオンラインフェスの「JAM FES.」なんて、生で観られないのが悔やまれるほどの内容でしたし。「JAM FES.」はどういう経緯でああいった形式になったんでしょう?(参照:JAM Project結成20周年記念フェスに仲間たちが集結!コラボ続々の特別な一夜

影山 あれはツアーが全部なくなると決まったときに、考えに考え抜いて開催が決まりました。もともとはツアーラストの9月に会場を2日分押さえていて、その初日でゲストを交えてやる計画だったんです。だから8月の段階で「状況がもっと悪くなっても開催できるようにするには」と考えてたどり着いた唯一の代替案が、オンラインでの「JAM FES.」でした。

──なるほど。皆さんのアカペラから始まって、ゲストアーティストのライブやコラボレーションもふんだんにあり、最後は全員での「SKILL」歌唱ととても満足感の高い内容でした。

きただに 大変でしたよ。ステージに出たりハケたりが多くて。

福山 僕は何年も歌っているのにいつも1曲目はすごく緊張するんです。歌っているうちに落ち着くんですけど、「JAM FES.」はステージに登場するタイミングが何度もあったのでその1曲目の緊張の繰り返しで。開幕のアカペラはそのピークでした。

きただに あれは緊張したね!

福山 初めての試みだったから「音を外したりしたらどうしよう」とか不安も強かったし。でもあれはできてよかったよね。

影山 あのアカペラは、本当はツアーでやろうとしていたんです。遠藤が「アカペラをやったら自分たちの個性が出るんじゃない?」と言ってくれて、それからツアーに向けて練習して。でもそれは叶わなかったから、「JAM FES.」で披露できてよかった。

──配信を観ていたALI PROJECTやangela、GRANRODEO、FLOWのファンにも届けられたので、その点はよかったのかもしれません。

影山 彼らが快く出演して、協力してくれたおかげで多くの人が配信を観てくれたでしょうから、そういった仲間がいて俺たちはラッキーでした。

きただに ああいうときに助けてくれて、仲間っていいなと思いましたよ。

奥井 「JAM FES.」だと、angelaのatsukoちゃんが「自分たちもしばらくライブをできていなかったから、お声がけいただいてありがとうございます」と言っていたのをすごく覚えています。やっぱりみんな去年はあまりライブできていなかったみたいで。だから、そういう意味でもあのライブはやってよかったです。

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キーワード5
仲間

──「JAM FES.」にも出演したALI PROJECTやangela、GRANRODEO、FLOW、また彼らと同じく20周年記念アルバム用に曲を提供してくれた梶浦由記さんが、映画でもゲストとして登場しています。2020年は彼らと関わることも多かったと思いますが、特に印象が変わった人はいますか?

奥井 うーん、みんなもともと知ってたから特にいないかな。

影山 angelaのKATSUくんくらいか。あそこまで音オタクだったとは。だって彼らが作ってくれた曲を俺たちがレコーディングするときに、「これで録ってみたい」と言ってビンテージのプリアンプを家から車で持ってきてくれたんだよ! そんな人いないって(笑)。

奥井 うまく歌えているつもりなのに「波形が……」と言ってて。私たちが理解できずにいたら、atsukoちゃんもいつもそう思っているみたいで、2人で少し攻撃しました(笑)。

遠藤 当たり前のことなんでしょうけど、みんな強いこだわりを持っているなと思いました。だからこそ売れているんだろうし。

奥井 あとALI PROJECTの殿(片倉三起也)がとっても優しかった。

影山 優しいよね!

奥井 歌は難しかったけど。

影山 それはあったな。GRANRODEOの曲の早口な感じや、音への乗せ方はJAMにはない感じだったし、FLOWの曲もそう。

福山 スカビートでしたもんね。

影山 チャレンジのしがいがあった。自分たちが得意としているわけではないところに挑戦できたので、すごく面白かったし、新しい一面をファンに見せられたと思います。

──興味本位で聞きますが、次にコラボレーションしてみたいアーティストはいますか?

奥井 私、澤野弘之さんの曲で歌ってみたいな。

影山 「進撃の巨人」とかの劇伴を担当されていますよね。

奥井 おしゃれな洋楽っぽい曲が多いけど、私たちはそういうのを作らないし。

影山 あとは誰だろう……逆に誰の曲を聞いてみたいですか?

──ぱっと思い浮かぶところではSound HorizonのRevoさんでしょうか。皆さんがシンフォニックメタルやプログレチックな曲を歌うのは合うでしょうし、あの方は1枚のアルバムで物語を作る天才なので、そういったものも聴いてみたいです。

一同 あー!

影山 俺ら、カッコよく歌いますよ!

──最後に映画から少し離れた質問をさせてください。2020年はアニソンに関する特番が地上波のゴールデンタイムで放送されたり、LiSAさんが「NHK紅白歌合戦」に出場し、Spotifyにおいて海外でもっとも再生された国内アーティストになったりと、アニソンへの注目度がまた高まったように感じました。そんな状況に、アニソンシーンで挑戦を続けてきた皆さんはどう感じていたでしょうか?

影山 個人的には、LiSAちゃんの快挙って俺たちの業界にとっては最高な出来事だったと思います。アニソンミュージシャンとしての活動が認められたので。その活躍を見ていて「俺たちももっともカッコいいものをがんばって作ろう」と刺激を受けました。

遠藤 最近のアニソンシーンという点では、アーティストが自分のカラーをすごく大事にして、それぞれに個性的になっていると感じますね。

──今の遠藤さんの言葉、2010年に発売された「JAM Project 10th Anniversary Complete BOX」のブックレットで、「10年後のアニソンシーンはどうなってますか?」というアンケートに対する影山さんの回答とほぼ一緒ですね。ちょうど今日、用意させてもらっていますが。

きただに 未来人影山だ。

奥井 (ブックレットを読みながら)兄さんいいこと言ってますよ。10年後のJAM Projectに向けてのメッセージが「人気や実績にあぐらをかいているようなグループであってほしくない。今より貪欲に、未知なるスタイルを追うような、そんなJAMであってほしい」だって!

福山 当時は10年ってすごい先のことだと思ってたけど……。

影山 あっという間だったよね。

──では影山さん、締めとして10年後の30周年を迎えたJAM Projectにメッセージをお願いします。

影山 今まで追い求めてきたことの延長線上にある、ほかのアーティストに真似ができないような楽曲、アルバムを作っていてほしいですね。Deep Purpleの「Machine Head」みたいな「これが最高傑作ですよ」と言えるようなもの。そしてそのアルバムを引っさげてツアーをしているといいな……でも俺、10年後は70歳かあ。

きただに 元気で、楽しくありたいですね!

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