音楽ナタリー Power Push - James Panda Jr.
“人間形態”で考えるアニメとパンダの不思議な関係
台湾で紙袋をかぶってDJプレイ
──その「日本アニメ(ーター)見本市」での活動の一環として台湾で行われたイベントに出られたんですよね?
「JAPAN MEDIA MIX FESTIVAL in TAIPEI 2015」という日本のアニメやマンガなどを紹介するイベントで「(ーター)」と書かれた紙袋をかぶってDJをしました。
──なんでまた紙袋を?
まずJames Panda Jr.って「徹底して顔を隠す」というブランディングが珍しく成功しているケースだと思うんですよ。もちろん僕の素性を知ってる人はたくさんいますけど、その皆さんの優しさもあって、たとえ検索しても正体が出てこない。その正体不明性を僕の1つの価値としていくつもりなんですけど、逆に面が割れてないなら何をやっても大丈夫なんじゃないかとも思っていて。
──はい。
で「日本アニメ(ーター)見本市」の題字は宮崎駿さんが描いていらっしゃることだし、そのお仕事、しかも日本のアニメを紹介するために海外に行くなら「(ーター)」をかぶるのが正解なんじゃないか、と(笑)。事実、台湾では見事にハマりましたし。今後は覆面DJもJames Panda Jr.の活動の1つになっていく気がします。
──正体を明かして自己主張したいという欲求は?
難しい質問ですね。正体不明性が僕のブランドの1つだとは思いつつも、現状だと「実は俺、James Panda Jr.なんだよね」って誰もが嘘つけちゃうんですよね。
──どこかの知らないおっさんに紙袋をかぶせてもお客さんは気付きようがない。ある意味PandaさんのDJとして成立してしまう(笑)。
そう。台湾ではサイン会もやったんですけど、紙袋をかぶった僕のテーブルの前に人がいっぱい並んでくださって。それがPandaである保証はどこにもないのに(笑)。ただ素顔を晒して「この曲を作ったのは僕です!」と言いたいかというと……。僕にとっての自己主張って音楽の作り方にも通じていると思うんですよね。オリジナリティを出したいのか、隠したいのかあいまいな感じ。ぼんやりと自己主張するみたいな。少なくとも今は顔を出そうとは思いませんね。
「中の人」の存在に自分が気づいて
──ただパンダのぬいぐるみが“実体”だった頃に比べるとはるかに身体性が強くなっています。
当時は肉体を隠してましたからね(笑)。タワーレコードさんなどでのインストアライブでも、机の上にぬいぐるみを置いて、僕自身はリハ終了から本番までの時間、その机の下にずっと潜んでるくらい徹底して「中の人などいない」アピールをしていました。
──音楽ナタリーの小松さんの記事(参照:小松未可子、i-depナカムラプロデュースの7月アニメED曲)に載っている“2ショット写真”も、小松さんとぬいぐるみにしか見えないというか……。
5年前にPANDA 1/2として取材を受けたときも(参照:PANDA 1/2「NEW MUSIC MACHINE」「PANDA! PANDA! PANDA!」インタビュー)、インタビューカットの撮影中「これってブツ撮りですよね?」って言われました(笑)。
──状況的にはそうなりますよね(笑)。
でも当時の僕はコイツ(持参していたパンダのぬいぐるみ)こそがPANDA 1/2のプロデューサーで「中の人などいない」と本気で主張していた、この世でただ1人の人間なんですよ。みんな「中の人はいるよね?」と思ってたけど、僕だけは「いやいや、ぬいぐるみがプロデューサーなんだって!」と訴え続けてきたんです。
──だから“インタビューカット”を撮ったし、小松さんとの写真には「ジェームズ☆パンダJr.(左)と小松未可子(右)」とキャプションを添えました。
でも6年くらいのうちにPANDA 1/2から藤岡みなみちゃんが抜けたり、いろんなことがあった中で「あ、やっぱり中の人、いたわ」って、ようやく僕自身が気付いたんです。2013年か14年に。
──取り巻く状況や活動形態が変わってきたことに合わせて、ご自身のありようを見つめ直した感じ?
僕自身としてはあえて見つめ直したというよりも「やっぱり中の人、いたわ」とふと気付いたという感覚ですね。人間形態を晒してもいいんだって、なぜか自分の中で納得できたんです。
James Panda Jr.は一生続ける
──じゃあ人間形態のJames Panda Jr.と、ぬいぐるみ形態のJames Panda Jr.の現在の関係は?
まだぬいぐるみが“本体”なのかな?
──人間のほうは「ジョジョの奇妙な冒険」でいうスタンドみたいな感じ?
うーん……。今決めるのは難しいですね。James Panda Jr.として2009年に活動を始めたときから「このプロジェクトは一生続ける」と決めていたんですよね。で、一生やるってことはこの先30年も40年も続くわけで。そう考えるとここまでの5~6年なんて、テスト走行みたいなものだと思っていて。あとあと振り返ったときには「ぬいぐるみだった時期もあったよね」ってくらいのものでしかないというか。40年も経てば35年前の昔話になりますから。
──とはいえ現時点ではぬいぐるみ時代のほうが長いだけに、どちらが主であるか決めかねる?
そうですね。でも今年は人間形態で、台湾以外にもカンボジアやベトナムでもDJをして、MVの撮影なども含めると12カ国を回っているんです。この海外へ積極的に行く活動は突然降って湧いた話ではなくて、もともとが上海を拠点に、日本のみならず海外で通用するコンテンツ作りを目指していた、ぬいぐるみ形態の頃の活動の延長線上にあるんですよね。だから厳密に主従は分けなくてもいいのかも、とも思ってます。ただ、その一方で最近考え方が変わった部分もあって、一番大きな変化は大衆ウケってすごく重要だと感じたこと。PANDA 1/2も十分大衆的だと思ってたんですけど、そうはなりきれていなかった。そう気付かせてくれたのが「青春×機関銃」であり「日本アニメ(ーター)見本市」に楽曲を提供したことへの反響であることは間違いないですね。
──アニメの力は大きい。
しかも畑違いだと思っていたアニメの仕事が、人間形態でDJをする、ある意味予定通りだったのかもしれない現在の姿での活動につながるんだから、不思議なもんです。2016年も人間形態で、肉体を駆使して国内外で創作を続けるつもりです。もちろん素顔は徹底して隠しつつですけど。
次のページ » ライブ情報&「青春×機関銃」DVD / Blu-ray
- トイ☆ガンガン(前野智昭、松岡禎丞、小松未可子) シングル「The Bravest Destiny」 / 2015年8月26日発売 / STARCHILD
- 初回限定盤 [CD] / 1512円 / KICM-93303
- 通常盤 [CD] / 1296円 / KICM-3303
収録曲
- The Bravest Destiny
- 僕たちのザ・大成功
- The Bravest Destiny(off vocal ver.)
- 僕たちのザ・大成功(off vocal ver.)
- V.A.「日本アニメ(ーター)見本市ヴォーカルコレクション」 / 2015年11月11日発売 / 3456円 / STARCHILD / KICA-3257
- V.A.「日本アニメ(ーター)見本市ヴォーカルコレクション」
収録曲
- HILL CLIMB GIRL / 川崎里実
- ME!ME!ME! feat.daoko_pt.1 / TeddyLoid
- ME!ME!ME! feat.daoko_pt.2 / TeddyLoid
- ME!ME!ME! feat.daoko_pt.3 / TeddyLoid
- 中央線 / Sotte Bosse
- SKY5 / Avaivartika
- 夢のヒーロー(「電光超人グリッドマン」より)
- もっと君を知れば(「電光超人グリッドマン」より)
- アジアの海賊 / 山寺宏一
- はじまり / RINK
- セックス&バイオレンス with マッハスピードノてーま / O2i3 feat. あさちる
- Sunlight / Norihito Ogawa
- I can Friday by day! / Neko Jump
- 朧月夜 Vocal ver. / 冨田麗香
- 別れの歌 / 冨田麗香
- FAI FAI TU! / 林原めぐみ
- センチメンタルな予感 / 加隅亜衣
- 世界の国からこんにちは / 山寺宏一、林原めぐみ
- Robo La Bamba / Shunsuke Goto
- Friends / 林原めぐみ
- Friends for カセットガール / 林原めぐみ
- SKY5 / 林原めぐみ
- Blu-ray / DVD「青春×機関銃」第4巻 / 2015年12月23日発売 / STARCHILD
- Blu-ray / DVD「青春×機関銃」第4巻
- Blu-ray / 7344円 / KIXA-90574
- DVD / 6264円 / KIBA-92234
James Panda Jr.(ジェームズ・パンダ・ジュニア)
パンダの音楽プロデューサー。2009年より日本で音楽活動を開始し、同年藤岡みなみ(Vo)とのユニットPANDA 1/2で2010年にメジャーデビューを果たす。以来ボーカリストの交代などを挟みつつユニットでの活動を続ける傍ら、小松未可子のアルバム「THEE Future」「e'tuis」の収録曲など、多くのアーティストに楽曲を提供。また2015年7月放送のテレビアニメ「青春×機関銃」では、小松、前野智昭、松岡禎丞がキャラクター名義で歌うオープニングテーマ「The Bravest Destiny」の制作を担当。アニメDVD / Blu-ray第1、2巻の初回限定盤付属CD収録の、3人が歌うイメージソング「日常サヴァイヴ」「銃とオレンジ」もプロデュースしている。続巻の5、6巻の初回限定盤にも新曲が収録される予定。また10月には「日本アニメ(ーター)見本市」で配信された沖浦啓之監督のショートアニメ「旅のロボから」のサウンドトラックと、エンディングテーマ「Robo La Bamba」も制作。「Robo La Bamba」は11月発売のコンピレーションアルバム「日本アニメ(ーター)見本市 ヴォーカルコレクション」に収録されている。2016年1月31日には「青春×機関銃」のスペシャルイベントにMCとして登場する。
James Panda Jr.の渋谷でP!
2015年12月20日(日)東京都 2.5D STUDIO
OPEN 12:30 / START 13:00