音楽ナタリー Power Push - James Panda Jr.

“人間形態”で考えるアニメとパンダの不思議な関係

自分の引き出しを片っ端から開けた

──スラスラ作詞できたとおっしゃっていたし「青春×機関銃」のプロジェクトに苦労話的なものはない?

すごく楽しくやらせてもらいました。自分で言うのもなんですが、僕は音楽的な引き出しは多いほうだと思ってるんですね。要はただのJ-POPオタクで、昔から特定のジャンルに絞るような音楽の聴き方はしてこなかったんです。J-POPと括られるものであればビーイング系だろうとジャニーズ系だろうと、とにかく聴いていて、今回はそういう引き出しを片っ端から開けていった。それが面白かったんですよ。あとあくまでも自分だけの視点での話ではあるんですけど、僕はたぶん最初から飽きられないデモを出せてる気がするんです。

──飽きられないデモ?

James Panda Jr.

ここ3~4年は楽曲制作に着手する前、頭にメロディが浮かんだ段階で「あ、この曲は飽きられてしまうな」っていうのがわかるようになってきているので、そういう曲はとっとと忘れる。逆に「これは心に残るな」と思ったらiPhoneのボイスレコーダーアプリに吹き込む。そしてPro Toolsで改めて曲作りを進める過程の中でも何度もプレイバックして、もし途中で自分自身が飽きちゃったら、その時点でその曲は捨てる。そうやって何重にもふるいにかけられたデモだけを生かしているので、打率はかなり高いんです。全ボツになったデモはほとんどなくて、なんらかの形で使ってくださるケースが多いですね。

──なるほど。具体的にこの曲ではこの引き出しを開けました、みたいな例はありますか?

「The Bravest Destiny」で言うなら1つはアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)ですかね。2002年に出た1stミニアルバム「崩壊アンプリファー」を当時かなり聴き込んでいて、そのへんのノリを入れたというか、好きすぎて勝手に出てきちゃったんでしょうね。あるいは1990年代末のいわゆる「rockin’on」系もよく聴いていたので、椎名林檎さんのデビュー当時の感じとか。あとスタッフさんとはジャニーズの話もしたかな。男性2人がユニゾンで歌う部分で「もしジャニーズがギターロックをやったら?」みたいな。

──ほかの曲は?

「僕たちのザ・大成功」は、スチャダラパーと怒髪天。ブチ上がり感と、男子のバカっぽさみたいなものを出したくて。あとは曲のイントロとアウトロを、本編とガラッと変えるヒップホップ的なこと、PANDA 1/2ではできないことも詰め込みました。皆さんをいい意味で裏切りたいというか。

──確かにPandaさんにはPANDA 1/2の渋谷系のイメージがあるから「青春×機関銃」の楽曲を聴いて意外に思うかもしれませんね。

そうだ! この場を借りて言わせてもらいますと、僕は純粋な渋谷系だけの人間ではないんです。そもそも僕がPANDA 1/2を結成した2009年当時、渋谷系を標榜したアーティストはあまりいなかったんですよ。であれば、渋谷系難民がいるはずだから、その難民をかっさらおうという目論見で始めたので(笑)。

──先ほどおっしゃった「隙間を埋める」というスタンスと繋がりますね。

もちろん渋谷系の世界というか、ピチカート・ファイヴやフリッパーズ・ギターを世に送り出した音楽プロデューサーの牧村憲一さんのお仕事などはすごく愛していてるんですが、僕自身の聴き方は完全に雑食なんですよ。

──パンダなのに。

笹ばっかり食ってるわけじゃない!

パクろうとしてもPandaが顔を出す

──その雑食性を証明するように「日常サヴァイヴ」も、一聴するとスカっぽいんですけど、かといってスカとは言い切れないストレンジな曲ですよね。

あえて何かに寄せることをしなかった曲ではあります。おそらく曲のルーツにはスカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)やスチャダラがあると思うんですけど。

──確かに。

あとファンモン(FUNKY MONKEY BABYS)ですね。彼らの「西日と影法師」(FUNKY MONKEY BABYS の3rdシングル「ALWAYS」のカップリング曲)という曲が大好きなんですけど、あの“あえて演出しているイナタい感じ”を僕も出してみたくて。

──でもボーカルの割り方はスチャダラパーやファンモンほど細かくない。1番を前野さんが、2番を松岡さんがそれぞれソロで歌われていますね。

最初は1コーラスの中で短いフレーズを前野さんと松岡さんが交互に歌う、掛け合いみたいな形を考えていたんですが、結局やめたんですよね。2人が演じているキャラクターがお互いにお互いのことを見ていて、1番と2番で目線がひっくり返る。それぞれの目線からお互いのことを書いてみたら面白いかもって。さらに言うと、この曲は1番と2番で半音転調してるんですよ。だから実は前野さんのパートと松岡さんのパートはキーが違う。それをいかに自然に聴かせられるかっていうのにもチャレンジしてみたかったんです。

──第2巻の特典イメージソング「銃とオレンジ」は?

この曲はGreen Dayと、ELLEGARDENおよびthe HIATUSですかね。

──確かに微かにメロコアのにおいがしますね。Pandaさんの楽曲って、今おっしゃったようにさまざまな音楽を参照していて、しかもネタ元を隠さないし、そこに変な照れもない。その参照の仕方と、元ネタとオリジナリティの配合がうまいというか。

言われてみれば、ずっとそういうことをやってきた音楽家人生なのかもしれませんね。PANDA 1/2にしても渋谷系を参照はするけど、やっぱり単なるパロディではありたくないし、以前レコード会社の方に「何かのイメージがあった上で作曲依頼しても最終的にPandaが顔を出して別の色になっちゃう」と言われたこともありますし。おそらく僕はDJ感覚でAというネタとBというネタを選んで、それらをつなげるための接着剤、ないしは潤滑油みたいなものとして自分の音楽性を出していく感じで曲を作ってるんだと思います。

トイ☆ガンガン(前野智昭、松岡禎丞、小松未可子) シングル「The Bravest Destiny」 / 2015年8月26日発売 / STARCHILD
初回限定盤 [CD] / 1512円 / KICM-93303
通常盤 [CD] / 1296円 / KICM-3303
収録曲
  1. The Bravest Destiny
  2. 僕たちのザ・大成功
  3. The Bravest Destiny(off vocal ver.)
  4. 僕たちのザ・大成功(off vocal ver.)
V.A.「日本アニメ(ーター)見本市ヴォーカルコレクション」 / 2015年11月11日発売 / 3456円 / STARCHILD / KICA-3257
V.A.「日本アニメ(ーター)見本市ヴォーカルコレクション」
収録曲
  1. HILL CLIMB GIRL / 川崎里実
  2. ME!ME!ME! feat.daoko_pt.1 / TeddyLoid
  3. ME!ME!ME! feat.daoko_pt.2 / TeddyLoid
  4. ME!ME!ME! feat.daoko_pt.3 / TeddyLoid
  5. 中央線 / Sotte Bosse
  6. SKY5 / Avaivartika
  7. 夢のヒーロー(「電光超人グリッドマン」より)
  8. もっと君を知れば(「電光超人グリッドマン」より)
  9. アジアの海賊 / 山寺宏一
  10. はじまり / RINK
  11. セックス&バイオレンス with マッハスピードノてーま / O2i3 feat. あさちる
  12. Sunlight / Norihito Ogawa
  13. I can Friday by day! / Neko Jump
  14. 朧月夜 Vocal ver. / 冨田麗香
  15. 別れの歌 / 冨田麗香
  16. FAI FAI TU! / 林原めぐみ
  17. センチメンタルな予感 / 加隅亜衣
  18. 世界の国からこんにちは / 山寺宏一、林原めぐみ
  19. Robo La Bamba / Shunsuke Goto
  20. Friends / 林原めぐみ
  21. Friends for カセットガール / 林原めぐみ
  22. SKY5 / 林原めぐみ
Blu-ray / DVD「青春×機関銃」第4巻 / 2015年12月23日発売 / STARCHILD
Blu-ray / DVD「青春×機関銃」第4巻
Blu-ray / 7344円 / KIXA-90574
DVD / 6264円 / KIBA-92234
James Panda Jr.(ジェームズ・パンダ・ジュニア)
James Panda Jr.

パンダの音楽プロデューサー。2009年より日本で音楽活動を開始し、同年藤岡みなみ(Vo)とのユニットPANDA 1/2で2010年にメジャーデビューを果たす。以来ボーカリストの交代などを挟みつつユニットでの活動を続ける傍ら、小松未可子のアルバム「THEE Future」「e'tuis」の収録曲など、多くのアーティストに楽曲を提供。また2015年7月放送のテレビアニメ「青春×機関銃」では、小松、前野智昭、松岡禎丞がキャラクター名義で歌うオープニングテーマ「The Bravest Destiny」の制作を担当。アニメDVD / Blu-ray第1、2巻の初回限定盤付属CD収録の、3人が歌うイメージソング「日常サヴァイヴ」「銃とオレンジ」もプロデュースしている。続巻の5、6巻の初回限定盤にも新曲が収録される予定。また10月には「日本アニメ(ーター)見本市」で配信された沖浦啓之監督のショートアニメ「旅のロボから」のサウンドトラックと、エンディングテーマ「Robo La Bamba」も制作。「Robo La Bamba」は11月発売のコンピレーションアルバム「日本アニメ(ーター)見本市 ヴォーカルコレクション」に収録されている。2016年1月31日には「青春×機関銃」のスペシャルイベントにMCとして登場する。

James Panda Jr.の渋谷でP!

2015年12月20日(日)東京都 2.5D STUDIO
OPEN 12:30 / START 13:00