ナタリー PowerPush - J
ソロ17年目に掲げる“FREEDOM”の意味
Jのニューアルバム「FREEDOM No.9」が10月23日にリリースされる。通算9作目のフルアルバムとなる今作は、デビュー以来貫き通してきたロックに対する情熱がぎっしり詰まった1枚。その情熱はソロ活動17年目を迎えた現在もなお冷めていないことが強く感じられる。
ナタリー初登場となる今回のインタビューでは、新作に込めた思いやソロ活動とLUNA SEAでの活動のスタンスなど、興味深い話をじっくり聞いた。
取材・文 / 西廣智一 撮影 / 福本和洋 衣装提供 / AKM
自分のサウンドに以前よりも愛着を感じる
──ニューアルバム「FREEDOM No.9」は前作「ON FIRE」から1年半ぶりという短いスパンでリリースされますね。
そうですね。前作「ON FIRE」の頃というのはソロ活動14周年という自分なりの節目として、音に向かうときにいろんなアプローチにトライしたかった時期なんですね。で、「ON FIRE」に関する一連の活動が終わったときに「ON FIRE」を通じて得たものの大きさに改めて気付いて、そこからこういうライブをしたい、こういうアルバムを作りたいというビジョンが明確にできて。まあ1年半……ずっと走りっぱなしですね(笑)。
──特にここ数年、Jさんはソロとして積極的にツアーをしているほかにも、LUNA SEAとしてのツアーやレコーディングもありましたし、止まらずにずっと走り続けてる印象が強いんですよね。
ここ最近の自分のモードなんですけど、やっぱり自分自身でやり続けてきたサウンドっていうものに対して以前よりも愛着を感じることがすごく多くて。いろんな経験をしてきた結果、自分自身でこう鳴らしたいんだっていう確かなものが自分の中にあって、自分なりの「Jのサウンド」を強く形にしたいっていう欲求がどんどん強まってる気がするんです。
──それは具体的にどういうことでしょう?
俺は自分のこと、すごく不器用な人間だと思ってるほど、もしかしたらこの日常のすべての時間を音楽に費やすことが重要で、それ以外のことには興味がないと思ってるくらいで。そうやって次なる刺激、次なる熱を探しながらずっと音楽生活を続けてきた人間なので、よりストイックになってきてるのかもしれないですね。
──その手応えが自分の中でどんどん確固たるものになっている?
そうですね。だから今は本当に自分がみなぎってるというか、充実してるのがすごくわかります。
危機感と常に並走してる感じ
──ソロやLUNA SEAでここまで精力的な活動を続けることで、逆にJさん自身が疲弊してしまうことはないんですか?
自分でも「そんな日がいつかは来るんだろうな」なんて思いながら20数年活動を続けてます。俺はいつもアルバムを作るときは「これが最後だ」と考えながら制作と向き合っていて。おそらくどのアーティストもそうなんじゃないかと思うんですけど、常にそういう気持ちでやっていかないと、長く続けられないと思うんです。そういった気持ちを叩き込んでアルバム作りをしていくと、不思議とその先が見えてくるんですよね。本気でぶつかっていかなければ、道の途中で何も見えなくなっちゃってたんだろうな、とも思うし。自分の中では危機感と常に並走してる感じです。
──その「危機感と常に並走してる感じ」がちゃんと音に表れているから、聴き手もJさんのことを信頼できるのかもしれませんね。
そう言っていただけるとありがたいですね。やっぱり、なんにもなかった俺に光を与えてくれたのはロックミュージックだったから、そこに対して嘘はつけないし、いつでも真剣でいようと思ってるし。もし信頼感のようなものを感じてもらえたのなら、自分にとってアルバム作りは成功だったのかなって思います。
ブレてないし、ブレたくない
──フルアルバムとしては9作目にあたる今回の「FREEDOM No.9」ですが、タイトルに使われている“FREEDOM”という言葉がすごく強い意味を放っているというか、アルバムを通して聴き終えたあとも印象に残ってるんです。同じように、1曲目の「Go Ahead」や5曲目の「Nightglow」に出てくる“革命”という言葉もアルバムの中で強く響いてきます。これが今のJさんが強く打ち出したいモードなんでしょうか?
そうですね。やっぱり俺自身がロックに求めるものって、聴いた瞬間にその人の何かを変えてしまうようなエネルギーなんです。そういった刺激みたいなものを自分の曲の中に求めているのもまた事実で。自分自身が作った曲もそうですけど、聴く人に何かを目覚めさせるようなトリガーになってほしくて、言葉選びやサウンドメイクについては常にいろいろ模索してます。ときどき「あ、このフレーズって自分自身に向けて発してるのかな?」と思うこともあるくらいで、結局自分自身と曲の距離感がどんどん近くなっていかなければ聴いてる人にもリアルに伝わらないだろうなって。強い言葉を選ぶのもその現れだと思います。
──それこそJさんが子供の頃にロックから受けた衝撃を今の若い世代にも与えたいし、同時に自分自身もその衝動を再確認していくと。その衝動は今でもブレてない?
ブレてないし、ブレたくないですね。今作に“FREEDOM”っていう言葉を使ったのは、まさにそういうこと。このアルバムを作り始めるときに、俺は何を求めて音楽を作ってるんだろう、演奏してるんだろうと考えたときがあったんですけど、もしかしたらロックミュージックに自由を求めてるのかなって。自分は音楽に自由を与えてもらったから、今ここにいる。そう実感して、9枚目のアルバムに「9番目の自由」というタイトルを付けたんです。
- ニューアルバム「FREEDOM No.9」 / 2013年10月23日発売 / cutting edge
- CD+Blu-ray 4515円 / CTCR-14808/B
- CD+Blu-ray 4515円 / CTCR-14808/B
- CD+DVD 3990円 / CTCR-14809/B
- CD 3150円 / CTCR-1481
- CD 3150円 / CTCR-14810
CD収録曲
- Go Ahead
- Love to Kill
- MARIA
- If you can see me
- Nightglow
- Everything
- Looser
- right away
- Sword
- Day Dream -the way of infinity-
- NEVER END
Blu-ray / DVD 収録内容
- 「NEVER END」Music Clip
- Documentary Film
J(じぇい)
1992年、LUNA SEAのベーシストとしてアルバム「IMAGE」でメジャーデビュー。1997年のバンド活動休止期間にシングル「BURN OUT」、アルバム「PYROMANIA」でソロデビューを果たす。2000年12月のバンド終幕以降、本格的なソロ活動を開始。LUNA SEA時代からソングライターとして知られる彼ならではの、パワフルでパンキッシュなロックサウンドが高い支持を得る。2003年にはソロとしては初となる日本武道館でのライブを敢行。また楽器メーカーESPから発売されているJオリジナルモデルのベース販売数は累計で5万本に達し、世界でもっとも売れているアーティストモデルのベースとなっているなど、現在も次世代のベーシストに影響を与え続けている。2008年にLUNA SEAが"REBOOT"(再結成)して以降は、ソロと並行して音楽活動を展開。2013年10月、通算9枚目のオリジナルフルアルバム「FREEDOM No.9」をリリースする。