音楽ナタリー Power Push - 出雲咲乃

お高くとまれ!2作目で広がるぼくの世界

間に合った!

──そうして、今年に入ってすぐにオーディションを受けたんですよね。なぜこのタイミングで?

自分の中で納得できる20曲ができたら、オーディションに応募しようと思っていたんです。お正月くらいにその20曲ができたから応募しました。とは言えどのオーディションにしたらいいかわからないし「歌手 オーディション」で検索してヒットしたサイトを見て応募して。

──そうだったんですね。オーディションは、どんなことが印象に残っていますか?

私、すごい雨女なんです。その日も雨が降っていて、前髪をセットしてカッコつけてきたのに、ぺしゃっとなっちゃって。あとはステージが眩しかった記憶があります。緊張はあまりしなかったかな。

──合格したときに思ったことは?

「(20歳に)間に合った!」って感じでした。

──そうして歌手としての活動がスタートしたわけですが、活動を初めてから新たに気付いたことなどはありますか?

出雲咲乃

意思の疎通が難しいなと思っています。例えば、今までは全部1人で作っていたからコードを目で見て判断することはできるけど、口に出して伝えるやり方がわからないんですよ。Cmとか「シーエム」って読んでいたし(笑)。楽譜も読めないから、勉強しなきゃなって。ホントに名称がわからないんです! 「スネアがどーのこーの」って言われて「スネアってどれ?」って(笑)。

──出雲さんは、楽曲はどれくらいのスピードで書き上げるんですか?

アイデアが浮かんだら、2日間くらいでできるんです。でもそのアイデアが浮かぶまで、時間がかかるときがありますね。「もう曲を書けなくなるかも」って、すごく怖くなる。あと、曲を作っているときは部屋から出たくないし、なるべく人にも会いたくない。雑念が入ったら壊れてしまいそうなので。テレビもマンガも見ず小説も読まず、人の音楽もあんまり聴かんとこうって思います。

──今回のシングル曲の「世界のしかけ」や「はないちもんめ」も、そうやって仕上がったんですか?

そうですね。

全然ミステリアスじゃない

──「世界のしかけ」は読売テレビ・日本テレビ系ドラマ「遺産相続弁護士 柿崎真一」の主題歌として使用されていますが、作品のイメージから曲を作っていったんですか?

はい。私、そういう作り方が好きみたいです。テーマがあって、それに対して自分はどう思うか、イメージを膨らませていって。

──どんなイメージを膨らませていったのでしょう。

ドラマの中で三上博史さん演じる主人公が、故人が叶えられなかった願いを叶えてあげるんですけど、そういったストーリーを自分の今の状況と重ねました。私は「歌手になりたい」という意志があって、実際にここまで来ることができたので「意志があればなんでもできる」と思っていて。その思いを曲に込めました。

──前向きな歌詞は出雲さんからのメッセージでもあるんですね。

はい。願いは自分で叶えていくしかないんだよって。私は、自分のやりたいことは全部実行していきたいから。

──メロディと歌詞、どちらが先に浮かぶんですか?

この曲はメロディと歌詞が同時に浮かんだんです。すぐに完成しました。まず思い浮かんだ歌を口ずさんで、出てきた言葉を正して……という感じですね。

──ミステリアスなムードのあった前作「当流女」と比べると、この曲の突き抜けるようなさわやかさは意外でした。

そう。さわやかな曲にしろって言われたんです(笑)。もう1曲、この曲よりも自分らしいものも作ったんですけど、スタッフさんと話し合って「こっちがいいね」となりました。

──出雲さんが特にこだわったところはありますか?

歌詞を詩的にしたくて、そこを悩みました。三上さんが以前、中原中也を演じていらっしゃったんですよ。本当はドラマの主人公をイメージして書こうと思っていたんですが、頭の中にどうしても中原中也が浮かんでしまって(笑)。あと私は、こういう希望を感じさせる歌は男の子に歌ってほしいっていう思いがあるんです。だから、一人称を「ぼく」にしました。

──歌詞で言うと、「お高くとまれ」というフレーズの繰り返しが面白いなと思いました。

このフレーズも、パッと思いついたんです。あと、シャウトしているところも面白いですよね。今までこういう表現はしなかったけど、10代最後の年だし、「若くがんばろう」って思って(笑)。

──そしてこの曲のMVには、出雲さんがガッツリ出演されています。撮影はいかがでしたか?

ずっと額を持って歌っているんですけど、額がめっちゃ重くて。筋肉痛になりました(笑)。

──カメラの前で表現することは難しい?

難しさはあまり感じないです。以前ダンスをやっていたから、歌よりも体で表現するほうが緊張しないというか、不安がないんです。

出雲咲乃

──出雲さんはデビューからずっと、目元を隠していますよね。それには理由が?

大人に「隠して」って言われるんですよ。私は出したいのに(笑)。この曲も明るい曲だから、私が目元を隠していたら暗いイメージが付くんじゃないかな?って思っちゃう。

──実際今日お話するまで、ミステリアスなイメージを抱いてました。

もう、全然ミステリアスじゃないんですよ。周りに言われるから隠してやっています、という感じです(笑)。

──「FLOWERS BY NAKED 魅惑の楽園」のセレモニーに出演されたときも、花飾りで目元を隠していらっしゃいましたよね。ああいった公の場に出るのは初めてだったと思うのですが、感想を教えてもらえますか?

うれしかったです。とても性格悪い発言だと思うけど、私、どこに行っても主役でいるのが好きなんです。だから、すごく楽しかったですね。

出雲咲乃(イズモサキノ)

福岡県北九州市出身のシンガーソングライター。16歳のときにギターを購入し、楽曲制作を開始。18歳でスターダストプロモーション主催の「第1回 SDRオーディション」に参加し、合格者となる。4月にデビューシングル「当流女」を東京・ヴィレッジヴァンガード下北沢店限定でリリース。表題曲はBS朝日のスペシャルドラマ「女優堕ち」の主題歌に選ばれる。自室での楽曲制作を中心に活動をしており、8月には2ndシングル「世界のしかけ」を発表。表題曲は読売テレビ・日本テレビ系ドラマ「遺産相続弁護士 柿崎真一」の主題歌に、カップリングの「はないちもんめ」は体験型イベント「FLOWERS BY NAKED 魅惑の楽園」のテーマソングとして使用された。