ナタリー PowerPush - 泉 沙世子

苦節10年で1万人の頂点に 夢をつかんだ岡山の歌姫

キングレコードと講談社がタッグを組んで行ったボーカルオーディションで、1万人以上の中からグランプリを受賞。昨年11月にシングル「スクランブル」でデビューを果たしたシンガーソングライター・泉 沙世子が、早くも2ndシングル「境界線 / アイリス」をリリースする。

彼女の魅力は、曲によって変幻自在に表情を変える実力派の歌。柔らかくハスキーなボーカルが持つ独特の落ち着きと安心感は、多くのリスナーを癒し、勇気づけるに違いない。約10年間オーディションに落ち続けたという意外なプロフィール、目指すアーティスト像、今回のシングルについて話を訊いた。

取材・文 / 川倉由起子 インタビュー撮影 / 上山陽介

コタツに頭を突っ込んで歌っていた

──アーティストを目指したきっかけはなんだったんですか?

泉 沙世子

6歳くらいの頃、姉の影響でSPEEDさんに憧れたんです。ただ、すごくカッコいいって思ったのと同時に、なぜか「悔しい」って気持ちにもなって。この感情はなんやろう? 私も実はこういうことがしたいんかな?って思ったのが最初のきっかけだった気がします。

──人前で歌うことは元々好きだったんですか?

SPEEDさんのマネをして歌うことはありましたが、人前に出るのは大の苦手でした。ずっと恥ずかしがり屋だったので、家でもコタツに頭を突っ込んで歌っていたんですよ。

──歌手に憧れる子って、どちらかというとコタツの上に乗って……ですよね?(笑)

はい(笑)。でもそのくらい本当に照れ屋だったんです。

──そんな少女が、その後どう変わっていったんですか?

小学3年生のとき、両親に「今から1曲聴いてほしい。私は歌手になりたいと思ってる」って改めて意志を伝えた日があったんです。そしたら母親が「人前に出る習いごとやし、やってみたら?」って、地元の和太鼓教室を勧めてきて。すごく田舎だったのでボーカルスクールやダンススクールなどは一切なく、唯一あった音楽系の習いごとが和太鼓やったんです。

──あー、それで!

はい。だから興味があったというより、最初は連れて行かれた感じでしたね。でも本当にたまたまなんですけど、そこの忘年会で初めて人前でカラオケを歌ったら「沙世ちゃん、歌うまい。ビブラートもできてるわー!」ってみんなにほめられて。そういう経験とかも少しずつ自信になって、引っ込み思案な自分が変わっていったんかなって思います。

「なんで私が落とされなアカンの!?」って(笑)

──中学に上がってからは、本格的に歌のオーディションを受け始めたんですよね。

はい。初挑戦したのが中2のときで、岡山から東京まで夜行バスに乗って。でも、11~2時間かけて行って一瞬で散りました(笑)。

──ワンコーラス歌って終了!みたいな?

はい、まさに(笑)。その後もオーディションを受けては落ちる日々が何年も続いて……ここまで来るのに約10年かかりましたね。

──よくめげなかったですよね。

毎回すごくヘコみましたけど、夢をあきらめようと思ったことは1回もなくて。不思議なんですけど、ドーンって落ちて「もう私なんて……」って思った後はなぜか怒りの感情が湧いてくるんですよ。「なんで私が落とされなアカンの!?」って(笑)。

──資料によると、なかなか結果が出ない日々の中で一度オーディション活動をストップした時期もあったそうですね。

高校卒業後すぐ上京したんですけど、「このまま受け続けても最後の1人にはなれない」って自分を見つめ直して。しばらくは地道に実力をつける活動というか、自分の武器を身に付けたくて曲作りや路上ライブを始めました。

──どうしてそこで“武器”が必要だと思ったんでしょう?

オーディションを受けては試行錯誤して、「どうやったら歌手になれるんやろう?」ってずっと考えてる中で、徐々にその必要性を感じたんだと思います。例えばライブハウスに行くと、可愛くて歌もうまいうえに自分で(曲を)作ってる!みたいな人がたくさんいて。そういう人たちと何度か対バンさせてもらったことで、もしかしたら自分のコンプレックスみたいなものが浮き彫りになって、やる気につながったというか。負けたくない!って気持ちも強くなったんだと思います。

絶対ここで終わらせたくはない

──そうしてついにチャンスをつかんだのが、2012年に開催されたキングレコード創業80周年記念の「Dream Vocal Audition」。満を持して臨んだ、という感じだったんですか?

そうですね。約5、6年ぶりのオーディションだったんですが、募集要項に「10年先、20年先も残るアーティストと曲を探しています」って言葉があって、それにすごく惹かれたんです。私はデビューが目標というより、歌をずっとやっていきたいって気持ちが強かったから、このオーディションに受かったら長い時間をかけて一緒にやってもらえるんじゃないかって。あとは私も自分にやっと自信が持ち始められた頃だったので、いいタイミングかなということで。

──1万人以上の応募者から選ばれた瞬間はいかがでしたか?

泉 沙世子

もう、本当にホッとしました(笑)。

──うれしいとかじゃなくて?

もちろんそれもあるんですけど……20代になると受けられるオーディションが一気に減るんですよ。そのときも私は年齢制限ギリギリの23歳だったから、将来にすごく焦ってたし、「ああ、これでやっとスタートできるんだな」って。「あんたは遅咲きやから」ってずっと応援してくれてた家族も、本当に喜んでくれましたね。

──昨年11月にシングル「スクランブル」でデビューして、念願のアーティストとなった今はどんな気持ちですか?

本当にまだ始まったばかり……って感じなんですけけど、もっともっとたくさんの人に曲を聴いてもらいたいし、伝えたい欲求みたいなものも膨らんでる気がします。オーディションを受け始めてから10年……せっかく手にできた環境なので、絶対ここで終わらせたくはないですね。

泉 沙世子「境界線 / アイリス」発売記念インストアイベント
  • 2013年2月2日(土)
    埼玉県 イオンレイクタウンkaze 1F 時の広場
  • 2013年2月3日(日)
    愛知県 エアポートウォーク名古屋 3Fイベントスペース
  • 2013年2月9日(土)
    大阪府 なんばパークス 2Fキャニオンコート
  • 2013年2月10日(日)
    愛知県 アリオ倉敷 屋外イベントステージ
泉 沙世子 ファッションショー出演スケジュール
NACO 名古屋コレクション

2013年2月24日(日)愛知県 愛知県体育館

神戸コレクション

2013年3月9日(土)兵庫県 神戸ワールド記念ホール

東京ランウェイ

2013年3月20日(水・祝)東京都 国立代々木競技場第一体育館

泉 沙世子(いずみ さよこ)

1988年10月28日、大阪府豊中市生まれのシンガーソングライター。岡山県で育ち、小学生のときに歌手を志す。中学生時代よりオーディションを受け始め、高校卒業後に上京。地道な音楽活動を続け、2012年に開催されたキングレコード創業80周年記念オーディション「Dream Vocal Audition」でグランプリを受賞し、2012年11月にシングル「スクランブル」でメジャーデビューを果たした。2013年1月30日に2ndシングル「境界線 / アイリス」をリリース。