Iwankof「in miracle」特集|謎多きプロジェクトに迫る初インタビュー (2/2)

この気持ちを別の言い方にしたらどうだろう?

──これまでリリースした4曲中3曲が恋愛ソングですが、これは先ほど話されていた「リスナーに共感されること」を意識したからなのでしょうか?

そうですね。今はたくさんの人に聴いてもらえるような曲作りを優先していて、リスナーが増えてきたら恋愛以外の曲にもどんどん挑戦していきたいと思っています。ただ、恋愛ソングと言ってもストレートに好きと伝えるようなアプローチにはしたくなくて。「好き」という感情を別の言葉で表現できないか、というのはいつも試行錯誤しています。

──夏目漱石の「月が綺麗ですね」的なアプローチというか。

そうですね。その点で言うとRADWIMPSの歌詞は本当にすごくて。

──野田洋次郎さんは1つの感情をいろいろな角度から表現することを突き詰めていますよね。

そうなんです。例えば「五月の蝿」とかすごく独特で生々しい表現をしていますよね。僕自身も「この気持ちを別の言い方にしたらどうだろう?」と考えるのが好きだし、作詞の面白さでもあると思うので、オリジナルな表現を目指していきたいです。

──Iwankofさんが書く歌詞は言葉数がとても多いですよね。

そうですね。例えば友達との会話でいい言葉が出たらメモを取るようにしていて、そうやって日常的に貯めていた言葉の中から曲とマッチするものを選んで歌詞を書いています。

──ソロ活動を始めるにあたってVaundyさんの作品を意識したとおっしゃっていましたが、ほかにシンパシーを感じるアーティストはいますか?

ほかのアーティストだとWILYWNKAさんの尖っている部分とピュアな部分が共存しているところにシンパシーを感じていて、自分の意見をしっかりと発信するマインドにも惹かれます。WILYWNKAさんの名前は「チャーリーとチョコレート工場」のウィリー・ウォンカから取ったらしくて。「キャラクターの名前から取るのっていいな」と思って、その影響でIwankofは僕が「ONE PIECE」のキャラクターの中で一番好きなイワンコフから取りました。あと僕はアーティストはファッションも重要だと思っていて。WILYWNKAさんからはそういう面でも刺激をもらってますね。

──ファッションがお好きということですが、スーツ姿のアーティスト写真も自分でアイデアを出したんですか?

そうですね。衣装は基本的に自分で決めてます。MVでは曲のイメージを踏まえて自分の好きなブランドの服を選んでいて、そういうビジュアル作りを含めて音楽活動は楽しい。アー写で着てるスーツは父親に成人祝いで買ってもらったイタリア製のオーダーメイドのスーツなんですよ。

Iwankof「VIKA」ジャケット

Iwankof「VIKA」ジャケット

Iwankof「悲劇のような喜劇のなかで」ジャケット

Iwankof「悲劇のような喜劇のなかで」ジャケット

武道館に立つまでは死ねない

──Iwankofとしてライブをやることは考えているんですか?

ライブこそ得意分野なので早くやりたいんです。今はバンドメンバーを集めているところで、いろんな人と一緒にやれたらいいなと考えています。

──いつか立ってみたいステージなどの目標はありますか?

一番は日本武道館ですね。2017年にRADWIMPSの武道館公演があって、すごく行きたかったんですけど「自分で立つまでは武道館には行かない」と決めて行くのをやめたんですよね。だから武道館に立つまでは死ねないと思っています。

──いつ頃から武道館でライブをすることを目標にしたんですか?

ギターを始めた頃に父親から「音楽やるなら武道館に立たないとダメだぞ」と言われて、初めて日本武道館という場所の存在を知ったんです。そこから好きなアーティストの武道館でのライブ映像を意識的に観るようになって。

──特に印象に残ってる武道館のライブ映像というと?

僕、高校生の頃に追っかけをしてたくらいSiMが好きなんですよ。彼らが2015年に武道館でライブをやるときに「人生で一度きりの武道館。これが終わったら俺らはもう武道館に立つことはない」と言い切っていて。でも、その後のインタビューでMAHさんが「武道館で1曲目を演奏したときに、一度きりの武道館なんて言わなければよかったと思った」と話されていたんです。「うわ、武道館でライブをやるのってそんなに気持ちいいんだ」と思って、武道館への気持ちが一層強くなりました。

──ドラムではなくギターを勧めたり、武道館という目標にも関わっていたり、お父様からの影響がかなり強いんですね。

ファザコンな部分はあるかもしれないですね(笑)。実家はケーキ屋をやっていて、父親が朝4時くらいに家を出て仕事をする姿を見ていたから「職人さんってカッコいいな」とずっと思ってました。父の仕事の手伝いをしていたこともあって、自分も曲作りに対して職人気質でありたいなと思っています。あと、月1回は2人で飲みに行くんですよ(笑)。

──めちゃくちゃ仲いいですね。

そうなんです。カラオケで歌う程度なのですが、父は歌もめちゃくちゃうまくて。僕に対して「もっとカッコよく歌えよ」とか偉そうに言ってくるんですけど(笑)、尊敬してるのでそういうことを言われるのもうれしいですね。

──「in miracle」でも「あなたのパパとママにありがとうを」と歌ってますもんね。

そうですね。親がいないと好きな人も生まれてきてないわけで、ご先祖様も含めて「ありがとうございます」という気持ちを表現しました。

プロフィール

Iwankof(イワンコフ)

作詞、作曲、編曲をすべて1人で手がけるシンガーソングライター。2024年1月の1stシングル「where???」発表以降、コンスタントにリリースを重ね、J-POPやJ-ROCKにトラップビートをかけ合わせた楽曲で注目を集める。10月には4作目となるシングル「in miracle」を配信リリースした。