- Page 1
- Page 2
2008年1月にシングル「Water Lily」でデビューした、福岡出身の女性シンガーItsco。モデル並みのルックスとは相反する、パワフルでパンチの効いたボーカルが早くもコアなロックファンの間で注目を集めている。そんな彼女が1stフルアルバム「Its」を4月16日にリリース。本作には朝本浩文がプロデューサーとして参加しており、バラエティ豊かな楽曲で彼女の魅力を紐解いている。
「ナタリー」では今回、Itscoと朝本浩文にインタビューを敢行。デビューまでのいきさつや朝本との出会い、アルバムに込められた思いについてなど話を聞いた。
取材・文/西廣智一 インタビュー撮影/中西求
ちょっとひねくれた曲が好きな「クセ者」
——音楽はいつ頃から始めたんですか?
Itsco「最初は女優を目指してたんです。地元の福岡でモデルをやったりしてたんだけど、なにか違う気がして。その頃椎名林檎さんが大好きで、すごく憧れてたんですよ。それで音楽をやってみたいなぁと思って、オーディションを受けたら合格して、上京することになったんです。それが17歳のときですね」
——じゃあそれまでは、バンドなどの音楽活動はまったくしていなかったんですか?
Itsco「ぜんぜんしたことなかったです。でもギターは大好きでずっと弾いてました。それに、人前で歌うのがすごい苦手だったんですよ。だけど林檎さんを知って、急に歌いたいなって思うようになったんです」
——朝本さんとはアルバム制作の前に初めて会ったんですか?
Itsco「そう、最初に会食して」
朝本「沖縄料理だったね」
——朝本さんは、最初にItscoさんに会ったときのイメージはどうでした?
朝本「パッと見た印象が、GARBAGEのシャーリー・マンソンに似てるなと思いました。好きな音楽を聞いたら、椎名林檎ちゃんだけじゃなくてRADIOHEADやTHE FRATELLIS、KASABIANの名前が出てきて。しかもシングル曲じゃなくて、ちょっとひねくれた曲が好きなんだよね。クセ者だな、と思いました(笑)」
——Itscoさんは、朝本さんと実際に会ってみてどうでした?
Itsco「ドーンと構えてる方なのかなと思ったら、とても気さくで優しい方でした。自分もこういう人になれたらいいなって思いますね」
——そこからアルバム制作に入るわけですね。
Itsco「まず、どんなアルバムにしたいかというコンセプトを話し合って、こういう曲が好きというのをメールでやり取りしました」
朝本「YouTubeのURLを貼って、具体的な好みを探っていったんです」
尖った歌詞を書く人に頼みたかった
——作詞家陣がバラエティに富んでいますよね。この人選は、曲を聴いてイメージしたんですか?
朝本「そうです。曲に合わせて選びました」
——作詞家陣は男性アーティストが多いですよね。
朝本「ほとんど男性ですね」
Itsco「でも男性が書いたとは思えないような、女性的な歌詞も多いですよ。蔡(忠浩/bonobos)さんが書いてくれた『MOTHER WATER』なんて、強い女性のイメージですし」
朝本「蔡くんの詞は深いです。ドロッとしていて“オンナ”を強く感じさせるよね」
Itsco「詞の意味が深すぎてとても難しかったんですよ」
——ほかにも「これはっ!」とハッとさせられた歌詞はありましたか?
Itsco「PVにもなっている『スキャッター・ブルー』はサエキけんぞうさんに書いていただいたんですけど、不安定な心の動きを綴った歌詞なんですね。その不安定さが自分とすごくリンクするところがあって、気持ちを入れやすかったです」
朝本「最初に届いたとき、『こうきたか!』とビックリしました。メロディがスウィートなんだけど、そこに尖った詞が乗ることによって、よりメロディが引き立つ感じ。ちょっとイルな感じになっていて面白いですよね」
——なぜ職業作詞家ではなく、この人たちに依頼したんですか?
朝本「Itscoちゃんの持ってるひねくれ感とか、RADIOHEADやKASABIANが好きだという世界観を表現するためには、やはりどこか尖った歌詞を書く人に頼みたかったんですよ」
[CD+DVD]
2008年4月16日発売 / 3300円(税込)
AVCD-23575/B / avex trax
[CD]
2008年4月16日発売 / 2900円(税込)
AVCD-23576 / avex trax
CD収録曲
- 愛の灯~ainohi~
- スキャッター・ブルー
- MOTHER WATER
- 鏡の国の私
- 深紅の魚
- Water Lily~BAD BASS REMIX~
- アネモネバス
- ア・ノ・リ・ア・ル~I wanna be me~
- il y a
- 真冬のひまわり
- ろくでなし
DVD収録内容
- Water Lily
(MUSIC CLIP) - スキャッター・ブルー
(MUSIC CLIP) - ろくでなし
(アカペラ@非常階段)
プロフィール
Itsco(イツコ)
1987年福岡生まれ。中学・高校生時代に地元・福岡でモデルや女優を目指し活動するも、音楽への憧れを捨てきれず、17歳のときに受けたオーディション合格をきっかけに単身上京。その後紆余曲折を経て、2007年11月にリリースされた東京プリンのアルバム「TOKYO PUDDING presents TOKYO SOUNDSCAPES」で、メインボーカルを担当する。2008年1月にはシングル「Water Lily」で、本格的にソロデビュー。『自分探し』をテーマに、国籍/ジャンルを超えたそうそうたる面々が楽曲を提供し、大きな話題となる。同年4月発売の1stアルバム「Its」では、朝本浩文が全面プロデュース。土岐麻子、かの香織、蔡忠浩(bonobos)、木村世治(ex.ZEPPET STORE)など個性的な面々が作詞家として参加している。