板野友美|新境地の胸キュンラブソング&カップルの日常描くMVで踏み出した新たな一歩

キスシーンで話題集めるMVには裏テーマがあった

──ミュージックビデオはカップルの日常を描いたショートフィルムのような内容でしたが……いきなりのキスシーンに驚きました。中盤にはシャワーシーンなどもあるし、畳みかけるように翌朝のシーンでは……。

「またキスした!」って(笑)。

──素敵すぎるシチュエーションがこれでもかと出てきますが、これは板野さんご自身のアイデアなんですか?

当初は「こういうMVにしたい」という構想があったんです。そのイメージではもっと歌詞に沿った内容で、「今度映画に行こうって帰り道、言ってくれた その言葉期待しちゃダメかな?」という歌詞のような、思いを寄せる彼の背中を見て、ちょっと切ないけど一緒にいられることがうれしい、みたいなシチュエーションのMVを想像していて。監督とお話したときにそんな自分なりの構想を話したんですけど、監督から「もっと新しいことをしよう」と言っていただいて。

──そんなやりとりがあったんですね。

はい。監督は「板野さんのイメージもわかるけど、それだとありきたりな“よくあるMV”になってしまうから」と。歌詞の意味が伝わるような、ちゃんとしたお芝居をするMVにしたいんだというお話をいただきました。監督が用意してくれた台本には本編には出てこない裏テーマがあって、2年付き合っているカップルの日常を描いているんです。2年も付き合っているとしたらそんなにキュンとすることも減っちゃう気がしますけど、「日常にある幸せ」を表現することで新たな胸キュンを誘えるんじゃないかなって。自分の思い描いていたイメージと違うので葛藤はありましたけど、「視聴者に映画を観ているような思いを抱かせるMVにしたい」と言ってくれた監督に委ねることにしました。

──自分の構想とは違ったものになってもいいと。

そう思ってお願いしたんですが、最初に上がってきた映像は完成版よりも映画っぽくて。言ってしまえば楽曲が映画のBGMになってる感じがしたんですね。それももちろんいいのですが、とはいえMVなので「もうちょっと曲のテンポにあわせて場面を切り替えたい」というように、私なりの思いや細かい意見をお伝えしたうえで、あとは監督にお任せしました。

──台本にはキスシーンなどの指定があったわけですよね。躊躇しませんでしたか?

これからもお芝居をやっていきたいという気持ちがあるので、監督の思い描くイメージをきちんと表現するために、恋人役の塩野(瑛久)さんともしっかりお話をして取り組みました。ベタな恋愛モノのストーリー展開だと、それぞれが片思いのシチュエーションで始まって、最後にキスシーンってなりますよね。私自身、最初は手をつなぐくらいから始まると胸キュンかなと思っていたので。でも監督の中では最初からキスすることが決まっていたみたいで、斬新だ……と驚きました。あと台本には「2人でシャワーシーン」とも書いてあったので、「えっ、どうやって撮るの?」と思って(笑)。でも監督はすごく熱意のある方で、どんなシーンもその意図を真剣に説明してくださったので、やるしかないと思いました。

──女優としてしっかりやると。

監督がいいと言うならきっといい作品になると思ったので、思い切って挑戦できました。今までと違う、新しい自分に生まれ変わった気持ちでやってみようと。

──できあがったMVを客観的に観て、どう思いましたか?

最初はちょっと恥ずかしかったです(笑)。でも3回目くらいから映画を楽しむように観られました。

タイトルに付けた「。」

──一方でカップリング「君。」は失恋、未練を感じさせる内容です。

表題曲のカップルが別れたというストーリーではないので、そこは安心してください(笑)。この曲は私が出演する映画の主題歌になる予定で、映画と連動した内容になっています。

──「すき。ということ」がさわやかなラブソングであるのに対して、こちらは少し重くて切ない曲ですね。

映画の細かい内容はまだお話できないのですが、とても切ないけど心はつながっているというお話で。「君。」は映画の最後に流れてもグッとくるはずだし、そうではないシチュエーションで聴いてもグッとくるような。映画の世界観を取り入れつつも、そのときの気持ちで人それぞれに共感できるような内容になっています。

板野友美

──表題曲とカップリング「君。」はどちらにも句点が付いてますが、ここには板野さんのこだわりが?

9月くらいにまずカップリングのレコーディングがあったんですが、その時点でまだタイトルが決まってなかったんです。思い付いたタイトルが「君」だったんですけど、ひらがな、カタカナ、漢字で見比べて、自分の中で一番しっくりきたのが漢字の「君」だったんですね。でも「君」だとかわいらしくも取れるので、映画の内容に合わせて少し重みが持たせたくて、マルを付けました。それでなんか心のどこかで「マル……いいな」と思っちゃったんでしょうね(笑)。

──表題曲にまで波及しちゃって(笑)。

はい。「すきということ」だとなんかペタッとしてるけど、「すき。ということ」だと間が生まれていいねって(笑)。表題曲に関してはウキウキした軽やかな恋心を歌った曲なので、重かったり、真剣すぎたりするよりかはちょっとポップにしたくて「すき」がひらがななんです。だからと言って「すきということ」とひと息で流れちゃうのも嫌だったから。“すきまる”ですごくピンと来てます。そうそう、この曲の略称は「すきまる」なんですよ。会議のときにレコード会社の方がなんとなく「すきまる……」ってつぶやいたのを、「……あれ、すきまるってかわいいかも?」って(笑)。