自分に宛てた手紙
──ではここから新曲「Just as I am」について詳しく聞かせてください。まずは板野さん自身が手がけた歌詞について。
“自分らしく”というコンセプトで制作を始めたものの、自分で自分のことが100%理解できるわけではないし、場面場面で違うと思うんですよね。ただ、26歳になった今、女性にとってこれから先の人生を歩んでいく中で、男性よりも自分で選択していかなきゃいけないことが増えるんじゃないかなと思って。このままずっと仕事を続けるのか、辞めるのか。辞めるとして、そのタイミングで結婚するのか、結婚したら家庭に入るのか、子供が生まれてからも仕事を続けるのか……私も子供の頃から「お母さんになりたい」という憧れがあったので、じゃあそのタイミングはいつなのか。それは私だけじゃなく、女性みんなが抱える悩みと言うか、いつか訪れる選択だと思うんです。その場面に立ったときに、私ならどうするんだろうと考えるようになって。
──女性としての岐路に立ったとき、どの選択をするのが“自分らしい”のかを。
はい。でも考えてみたら、私が今こうしていることも、自分が今までいろんな選択をしてきた積み重ねなんだなと感じて。自分にとっても、楽曲を聴いてくれる人にとっても「その選択は間違ってなかったんだな」「自分だったら大丈夫」って自信が持てるような曲にしたいなと思いました。それに、今までの選択で間違えたなと思うようなこともあるかもしれないけど、たとえそのときに戻っても同じ選択をするかもしれないし、今つらかったとしてもきっといい方向に進む選択だったと自分に対しても強く言えるような、同じように悩んでいる人の背中を押せる曲にしたいという思いから歌詞を書き始めました。まずは自分に手紙を書くような形で言葉を起こして、少しずつ曲に合わせて歌詞にして。
──自分を見つめ直しながら、聴いてくれるリスナーにも届く言葉を探し出すのは難しそうですね。
そうですね。だけど、私が感じていることはきっとみんなも感じることだと思うんです。それは同世代の女性だけじゃなく、受験してる子とか、選択をしなければいけない立場にいる人たちも一緒で。「自分の選択は間違いじゃなかった」って背中を押してくれるような曲があったら、少しだけでも前に進める曲になったらいいなって。
──まずは自分に手紙を書く、というのはいい手法かもしれませんね。自分自身のことでありながら、客観性を入れるという意味では。
昔お母さんや友達に出したメールを読み返したりして、「あのときこんなふうに思ってたんだな」と振り返っていたら、意外な発見も多かったんです。今思えばAKBの現役メンバーだった頃は若かったなと思うけど、意外としっかり考えてたんだなとか。今の自分の背中を押してくれそうな言葉を自分が言ってたり(笑)。振り返るのも悪くないなって思いましたね。
解放的なLAの風景が想像できるような曲を
──板野友美=アッパーなダンスミュージックという印象が強いですけど、「Just as I am」はアコースティックギターを中心にした壮大なバラードですね。歌詞はこのサウンドありきで作っていったんですか?
はい。今回はまず写真集と連動した企画になるということが決まっていて、撮影をする場所もだいたい決まっていたんです。大好きなLAを想像したら、あの真っ青な空だったり、大きな海だったり、解放的な画が浮かんで。あの風景が聴いた瞬間に想像できるような曲にしたい、と思って選ばせてもらいました。バラードなんだけど元気がもらえる、映画のワンシーンみたいな曲であってほしいという思いをディレクターさんたちと話していて。できあがった曲を聴かせてもらったときは、本当に一瞬であの風景がイメージできて、すごくうれしかったです。
──これ、MVもLA撮影でよかったですね。「LAっぽい雰囲気の日本のどこか」とかではここまでハマらなかったかもしれない。
あははは(笑)。そうですね、本当に。サビの盛り上がりは絶対にいい映像にしたい!というこだわりが私にもあって。画がイメージしやすいぶん、歌詞は書きやすかったかもしれないです。
──いつも曲作りの際にはスタッフにお任せではなく、板野さん自身から「こんな曲にしたい」という意見を伝えるんですか?
だいたいのコンセプトで「じゃあこんな感じのダンスナンバーにしよう」とか、そういうのはディレクターさんから提案してもらったり、みんなで打ち合わせしたりして決めることが多いですけど、そのあと何曲かデモを聴かせてもらって「この曲がいい」とか「もっとこんな感じがいい」という意見は聞いてもらっています。あと、曲を作る前はいつも「最近どんな感じ?」とか「どんな音楽が好き?」とか聞いてもらっているので、私のそのときどきの興味は必ず反映されていますね。
──ドキュメンタリー映像「Documentary of "Just as I am / Wanderer"」のワンシーンで、リップシンク用に流れる曲を聴きながら「何これ、いい曲」と自分でおっしゃっていた場面が印象的でした(笑)。
自分でいい曲と言うのもなんですけど(笑)、デモをもらったときもすごくいいなと思ったし、歌詞を書いたあとはもっと、自分の子供みたいな気持ちになって(笑)。ずっと大切にしていきたい1曲になりました。
挫折と葛藤の先にある景色
──「あの日描いた未来の景色 辿り着けるかな」というフレーズがありますが、板野さんが考えた「未来の景色」とはどのようなものでしょうか?
そこには2つの意味があって。最後の「シンデレラストーリーじゃなくていい 自分だけのストーリー」という歌詞にもつながるんですけど、小さいときはみんな「芸能人になりたい」「サッカー選手になりたい」「お医者さんになりたい」みたいな夢を持ちますよね。でもそこには挫折もあって、違う夢を見つけたりすると思うんです。挫折と言うと「これからの人生終わった」といったような感情に陥りやすいけど、決してそうとは限らないし、別の道で成功するかもしれない。結婚して幸せな家庭を築くかもしれない。最初の夢にたどり着けなかったからこそつかめる夢もあると思うんです。私は歌手になれたけど、「あの日描いた未来の景色」にたどり着くことがすべてではないし、たどり着いたからと言ってそれが自分にとって最高の幸せだとは限らない。その葛藤を描きたかったんです。
──SPEEDのようなアーティストやソロシンガーになりたかった板野さんにとっては、ある意味AKB48での活動も、望みとは違うという意味では“挫折”ですもんね。
「ソロデビューしたい」とか「もっとカッコいい音楽がやりたい」と思っていたけど、AKB48を始めた頃はあんなに売れるとは思っていなかったし、AKB48が広く支持されたからこそ今の私がいるので。遠回りしたからこそ叶ったこともあるし、叶ったら叶ったで思っていたのとは違う景色を見ることもあって(笑)。がんばった結果その先にたどり着けなかったとしても、きっと新しい自分が待っていると思うんです。
──「まだ超えられる」「何処かへ続いている旅の途中だから 何が見えるのか 知らないまま歩いて行くの」というリフレインは、まさに板野さんが今おっしゃったことを歌詞にしたフレーズですね。
そうなんです。ちょっとマイナスに取られるかなとも思うんですけどね。サビの歌詞は「まだ進めるよ」とか「まだ走れるよ」みたいな前向きなものにしようかなと思ったんですけど、今の自分がマイナスだって言ってるような感じがしたんです。まだ走ってる途中なのにギブアップ寸前、みたいな気持ちにはしたくなくて。「がんばんなきゃ!」という方向じゃなく、楽しく前に進んでいけるようになるか。そこの言葉選びにはすごく気を遣いました。
次のページ »
ぱるるの解釈
- 板野友美10thシングル「Just as I am」
- 2018年2月28日発売 / KING RECORDS
-
初回限定盤 [CD+DVD]
1800円 / KICM-91837 -
通常盤 [CD]
1200円 / KICM-1837 -
Wanderer盤 [CD+フォトブック]
2160円 / NMAX-1293
- 初回限定盤、通常盤CD収録曲
-
- Just as I am
- Show time
- Just as I am(Instrumental)
- Show time(Instrumental)
- Wanderer盤CD収録曲
-
- Just as I am
- Show time
- 初回限定盤DVD収録内容
-
- Just as I am(ミュージックビデオ)
- 板野友美「Wanderer」
- 2018年2月19日発売 / 講談社
-
写真集
2916円
- 板野友美 ドキュメンタリーDVD
「Documentary of "Just as I am / Wanderer"」 - 2018年2月28日発売 / KING RECORDS
-
[DVD]
2916円 / NBD-141
公演情報
- 板野友美「Just as I am」発売記念イベント(※終了分は割愛)
-
- 2018年2月28日(水)東京都 ヴィレッジヴァンガード渋谷本店
START 19:00 - 2018年3月2日(金)大阪府 あべのキューズモール
START 18:30 - 2018年3月3日(土)東京都 ららぽーと豊洲
[1回目]START 13:00[2回目]START 16:00 - 2018年3月4日(日)愛知県 イオンモール木曽川
[1回目]START 13:00[2回目]START 16:00
- 2018年2月28日(水)東京都 ヴィレッジヴァンガード渋谷本店
- 板野友美 LIVE TOUR 2018 ~Just as I am~
-
- 2018年4月21日(土)宮城県 darwin
- 2018年4月28日(土)愛知県 THE BOTTOM LINE
- 2018年4月30日(月・振休)大阪府 BananaHall
- 2018年5月6日(日)福岡県 BEAT STATION
- 2018年5月12日(土)東京都 マイナビBLITZ赤坂