音楽ナタリー Power Push - 石崎ひゅーい×蒼井優×松居大悟鼎談
映画でタッグを組んだ3人が再び集結 惹かれ合う3つの個性
みんなでライブで「大好き」って言いたい
──「花瓶の花」以外で今回のアルバムの聴きどころは?
石崎 シングル以外の曲とか、けっこうふざけて作ったりした曲で。
松居 「トラガリ」の「偶然と書いてなんて呼ぼうかな?(大好き)」っていう歌詞とかいいよね。
蒼井 ひゅーいくんの曲ってさ、出だしからサビへの持って行き方がすごいよね。「おっぱい」(1stアルバム「独立前夜」収録曲)もそうだけどさ、「この始まりでそこにいく?」みたいな展開だもんね。
松居 これ絶対ライブで聴きたいよね。みんなで「大好き」って言いたい。
蒼井 うん、「トラガリ」はライブで聴きたいね。あとさ、「天国電話」って「花瓶の花」のMVを観たらつながるんじゃない?
石崎 そうだね、そういうつながり方もあると思う。
──「花瓶の花」には「天国には君の母さん」という一節がありますもんね。
松居 MVの撮影の前にひゅーいから「海人にすごいぴったりな曲ができたんだ」って言って送ってもらったのが「天国電話」だったんです。海人っていうのは短編映画の主人公で、村上虹郎くんが演じてるんですけど。その曲を聴いたときにすごくいい曲だなって思った。
──石崎さんの歌はどれも優しさがありますよね。決して完璧ではない人が描かれていて、そういう人たちに手を差し伸べてる印象があります。
石崎 そうですね、曲は救いのある歌がいいなと思うんですよ。最後に死んじゃったみたいなのは嫌で、歌って最終的には光が見えるものがいいんじゃないかなと思うんですよね。それはいつも意識してるかもです。
石崎ひゅーいは客観性を持たずにいられる
──先ほど蒼井さんから「ひゅーいくんは愛されてる」という話がありましたが、確かに園子温監督とかムロツヨシさんとか、他ジャンルの人から愛されてる印象があって。石崎さんがそうやって人を惹きつける魅力ってなんだと思いますか?
蒼井 私はひゅーいくんと出会って感動したことがあって。どうしても私たちって大人になってしまうから、どこかで自分というキャラクターを作ってる節があるんだよね。それはたぶん人生経験によって「こういう場のときはこうしたほうがみんなが楽しい」とか、「スムーズに場が回る」とか「自分も楽だ」とか。そこで取る行動は、その場その場によってちょっとずつ違うんだけど。
松居 うんうん。
蒼井 でもひゅーいくんって、さっき生まれたみたいな状態というか。誰からどう見られるかっていう客観性をまったく持たずにいることができる。私はそこに「なんで自分はこういうふうにできないんだろう」「ひゅーいくんみたいに生きられたらいいのにな」って思ってしまう。みんなの弟みたいな存在なんだけど憧れてしまう存在でもあって、あらゆる言葉を超越してしまっているんだよね。それを「無垢」と言ってしまったらそれがキャラ付けになっちゃうからそういう言葉を使いたくないんだけど。それを私、映画の撮影初日の1シーン目で感じて。
松居 あの薬局の?
蒼井 そう。ひゅーいくんがドラッグストアでレジ打ちしながらセリフも言わなきゃいけないシーンがあって。何かをやりながらセリフを言うのって私でも難しいシーンなんですけど、ひゅーいくんは慣れてないから1人で「あーもー、あーーーっつ、ダメだー」ってずっと言ってて、その感じがすごくいいなと思った。私だったら間違いなく「周囲に『すいません』って謝る」って行動をしてると思うんだよね。あれを見ながら私、カウンターのこっち側で感動してた。
石崎 テンパってただけだよ……。
松居 でもわかる気がする。僕もわりと気を遣って角が立たないようにって考えてしまうけど、ひゅーいと会ってるときって本当に気楽で。だからいつでも会えるし、会いたいって思う。ひゅーいは自分より2つ年上で別業種だから緊張してもおかしくないはずなのに、なんか安心する。そういう人ってなかなかいないから。
──松居監督は以前、尾崎世界観さんにライバル心があると言っていましたが、石崎さんにはそういう感覚はない?(参照:2人はライバル!? 尾崎世界観×松居大悟対談)
松居 ないですね。尾崎くんにはあるけど、ひゅーいは仲間みたいな。
石崎 へえー。
蒼井 そういえば今回、映画にひゅーいくんが出るって言ったときにザキくんにすごい怒られたんでしょ?
松居 そうそう。お前はひゅーいを俳優の道に入れるな、あいつはミュージシャンだぞ!って(笑)。
「これはダサい」の感覚が似てる
──皆さんお互い似てるなって思う部分ありますか?
蒼井 ひゅーいくんとは似てることが多いかな。松居とは同い年で地元が一緒で、その程度なんですけど(笑)。
松居 十分じゃい(笑)。
石崎 僕なんかが言うのはおこがましいですけど、優ちゃんとは「僕たち似てますよね?」って話をさせてもらって。いろいろ経験してきたこととか、何か起きたときの感情とか似てるなって。
蒼井 仕事に対する考え方もすごい似てる。
──例えば?
蒼井 なんでもいいと思ってからのほうが強い。こうしなきゃ、ああしなきゃって思ってるときはがんじがらめになってることが多いけど、なんでもいいって思ってからのほうが進めるっていうのを話してて。言葉が合ってるかわからないんだけど、「適当さの強み」っていうのかな。
石崎 でもさ、適当ってさ、いい意味なんだって最近思うんだよね。違うかな?
蒼井 わかんない(笑)。
石崎 あと、「これはダサい」とか、「これはダサいけどカッコいい」とか、そういう微妙な感覚がみんな似てる気がする。だから「花瓶の花」のMVを2人にやってもらえるってだけで安心っていうか、僕なんてなんにもやらなくても大丈夫っていう信頼感はありましたね。
次のページ » 「ひゅーい、呼吸だぞ」
- 石崎ひゅーい ニューアルバム「花瓶の花」 / 2016年5月18日発売 / EPICレコードジャパン
- 初回限定盤 [CD+DVD] / 4500円 / ESCL-4614~5
- 通常盤 [CD] / 3200円 / ESCL-4616
CD収録曲
- ピーナッツバター
- 星をつかまえて
- メーデーメーデー
- 僕がいるぞ!
- トラガリ
- カカオ
- 花瓶の花
- 泣き虫ハッチ
- オタマジャクシ
- 天国電話
初回限定盤DVD収録内容
- 第三惑星交響曲(MV)
- ファンタジックレディオ(MV)
- 夜間飛行(MV)
- 僕だけの楽園(MV)
- ピーナッツバター(MV)
- 僕がいるぞ!(MV)
- 花瓶の花(MV)
- 短編映画「花瓶に花」
石崎ひゅーい(イシザキヒューイ)
1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身のシンガーソングライター。風変わりな名前は本名で、デヴィッド・ボウイのファンだった彼の母親が、ボウイの息子・ゾーイ(Zowie)をもじってひゅーい(Huwie)と名付けた。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビューし、2013年2月から5月にかけて全国47都道府県を回るライブツアー「全国!ひゅーい博覧会」を実施した。同年6月にテレビ東京系ドラマ「みんな!エスパーだよ!」のエンディング曲「夜間飛行」を、7月に1stフルアルバム「独立前夜」をリリース。2015年6月には劇団鹿殺しの舞台「彼女の起源」で俳優に挑戦した。2016年5月に2ndフルアルバム「花瓶の花」を発売。同年冬には、松居大悟監督、蒼井優主演の映画「アズミ・ハルコは行方不明」に出演する。
蒼井優(アオイユウ)
1985年生まれ。1999年にミュージカル「アニー」でデビュー。2001年に岩井俊二監督による「リリイ・シュシュのすべて」で映画初出演を果たし、以降「花とアリス」「亀は意外と速く泳ぐ」「ニライカナイからの手紙」など話題の映画に出演する。2006年には映画「フラガール」で第30回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞など数々の賞を受賞。その後も「百万円と苦虫女」「ホノカアボーイ」「るろうに剣心」といった映画を始め、ドラマ、舞台、アニメ声優、ナレーションなど幅広く活躍。2016年冬に「百万円と苦虫女」以来約7年ぶりの主演映画「アズミ・ハルコは行方不明」が公開される。
松居大悟(マツイダイゴ)
1985年生まれ。慶應義塾大学入学とともに演劇サークルに入団し、2006年に劇団「ゴジゲン」を結成。2009年にNHKドラマ「ふたつのスピカ」で脚本家デビュー、2012年2月に映画「アフロ田中」で初の長編映画の監督を務める。以降は「自分の事ばかりで情けなくなるよ」「スイートプールサイド」などコンスタントに映画を発表し、「ワンダフルワールドエンド」と「私たちのハァハァ」で第7回TAMA映画賞の最優秀新進監督賞を受賞。またクリープハイプや大森靖子などのミュージックビデオも手がける。2016年冬に監督作「アズミ・ハルコは行方不明」が公開。