ナタリー PowerPush - 石崎ひゅーい

1stシングルで日常を脱出 「ファンタジックレディオ」

孤独は歌を作るのに必要な時間

──この曲はラブソングですが、恋愛中は曲ってできるものですか?

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恋愛中はできないんですね。僕は恋愛してると、恋愛だけになっちゃうんですよ。もう「彼女いればいい」みたいになっちゃって。よく考えてみれば、バンドやってる頃に彼女できたときは、バンド活動をすごくおろそかにしちゃったんですよね。音楽も作らなくなっちゃうんですよ。むしろ別れたときのほうができますね。悲しい感じがあったり、誰かのことを思ってるほうができるかなあと思ってます。

──なるほどね。あなたの歌を聴いてると、かなり寂しがり屋なのかなと思うんですよ。前のアルバムではお母さんのことをたくさん書いていたし、この曲も想像の、手の届かないところにいる人のことを歌にしてますよね。

うん。すげえそうだと思います。

──だから曲を書いてるときには、せつなさがあるんじゃないですか?

そうなんですよ。その上、最近は書いてるシチュエーションが特に寂しい感じです。マンションみたいなのに住んでるんですけど、前はお姉ちゃんと弟と、お姉ちゃんの彼氏と、僕とそのとき付き合ってた彼女と、みんなで住んでたんですよ。そこに友達も来て5~6人とかいたこともあって、だから家が毎日ワイワイしてたんです。それが今、誰もいなくなっちゃって……結構デカい家にひとりで住んでて。その感じがだいぶ曲に出ちゃってますね。だらしない話なんですけど、料理とか洗濯も、今までは姉ちゃんがやってくれたんで、生活も大丈夫だったんです。それをひとりでやるようになって、結構つらいというか、寂しいというか。

──ガラーンとした家での生活なんですね。でもこうやってデビューするタイミングだったのなら、それは良かったんじゃないですか?

そうなんですよ! それはわかってるんです。孤独に引き寄せられて歌を作るから、自分には必要な時間なんだなと思います。だからこのタイミングで(同居人が)いなくなったのは、たぶんそういうことなんだと思ってはいるんですけどね。あと彼女がいないのも、「もしかしたら死んだ母ちゃんが『歌に集中しろ』って仕組んでんのかもしれない」と考えたりします。

声が出なくなっちゃうのもライブかな

──で、今回はライブDVDも同時にリリースされますね。

はい。これは、俺のライブに興味を持ってくれる方がいっぱいいるということなので、ライブを撮ろうという話になったんですよね。それで、あえて誰もいないところでライブをすることになったんです。

──お客さんがいない中でのライブはどうでしたか?

うーん……面白かったけど、いるほうがいいですね。寂しい。誰もいないのは。寂しい感じが(映像に)出てますね。

──お客さんがいなくて気が抜けるとか、集中力が上げづらいとかは?

それはなかったですね。「大丈夫かな?」と思ってたので、本番では1人観てくれてる人がいると想像してやってました。1人だけ、すごく観てくれている人が椅子に座ってる、みたいなイメージをして歌ったんです。

──ステージで跳んだり、前や後ろに転んだり、いつも通りのパフォーマンスをしてますよね。

そう、みたいですね(笑)。ああなっちゃうんですよね。あれは仕方ないっていうふうに最近思ってます……。

──そこは反省点なんですか?

反省してるんですよ。最後、歌えなくなっちゃうんですよ。声が出なくなっちゃうんです。だけど「もういいや」と、最近は。「声が出なくなっちゃうのもライブかな」と(笑)。

──ほんと極端な人なんですね。ライブに入ると我を忘れるし、彼女がいると曲が書けないし。のめり込んでしまうタイプなんですよね。

あ、そうだ! 多分そうです。うん(笑)。

──でもそれでエネルギーが出るわけですからね。それにさっきの話だと、お母さんも「今こそがんばりなさい」と言ってくれてるかもしれないですから。

そうですよね(笑)。はい。がんばります!

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ライブDVD / Blu-ray「キミがいないLIVE」 / 2012年11月21日発売 / EPICレコードジャパン
「キミがいないLIVE」 / [DVD] / 2000円 / ESBL-2331 / Amazon.co.jpへ
「キミがいないLIVE」 / [Blu-ray Disc] / 2000円 / ESXL-21 / Amazon.co.jpへ
収録内容
  1. ガールフレンド
  2. シーベルト
  3. 常識
  4. ナイトミルク
  5. 第三惑星交響曲
  6. 3329人
  7. ひまわり畑の夜
石崎ひゅーい (いしざきひゅーい)

1984年3月7日生まれ、茨城県水戸市出身の男性シンガーソングライター。風変わりな名前は本名で、高校時代より音楽活動を開始する。高校卒業後、大学で結成したバンドにてオリジナル曲でのライブ活動を本格化させる。その後は音楽プロデューサーの須藤晃との出会いをきっかけにソロシンガーに転向し、精力的なライブ活動を展開。2012年4月から行われたRakeの全国ツアーでは12会場でオープニングアクトを務めた。2012年7月、ミニアルバム「第三惑星交響曲」でメジャーデビュー。11月には1stシングル「ファンタジックレディオ」と、初のライブDVD / Blu-ray「キミがいないLIVE」を同時リリースする。自身の心情やエピソードを歌った、赤裸々な中に幻想的な表情を見せる歌詞、強い印象を与えるメロディライン、ダイナミックなライブパフォーマンスで、大きな注目を集めている。