なんで私の心を知っているんだろう？

──やなぎさんは詞を書くとき、特に心がけていることはありますか？

やなぎ　一番意識しているのは余白ですね。言葉の意味を全部説明することもできるんですけど、聴いていただく人がそれぞれのイメージを膨らませやすいように、ちょっとだけ説明を抜く、みたいな。「これってこういうことなのかな？」と受け取る方が考えてくださるのがすごくうれしくて。なので、ワードそのものはちりばめるんですが、物語の核心に触れる部分はあえて説明不足な状態にすることが多いです。あとは、ほかの方に歌っていただくときは、歌いやすい言葉を入れるように意識することもあります。例えば、高い所に「イ」と発音する言葉を持ってくると、喉にグッと力が入って歌いにくいと思うので、なるべく声が出しやすい音を当てるようにするとか。

石原　優しい！

やなぎ　自分の曲だったら、多少無理すればいいやと思うんですけど、誰かに歌っていただくときはなるべく楽しく歌っていただきたいので、歌っていて気持ちいい言葉かどうかはすごく意識するところです。それに、「Starcast」もそうだったんですが、歌っていただく方のパーソナリティが一番大事な部分だと思うんです。なので、おこがましいんですけど、「どうやったらこの方のリアルな部分を引き出せるかな？」と考えますね。その中でも「Starcast」は、私自身も夏織さんのパーソナルな側面に引っ張られていった部分がすごくあって。夏織さんの元気さを思い浮かべたら、普段の自分から出てこないような言葉を引き出してもらえたというか。すごく楽しかったです。

石原　そう言っていただけて幸せです。

──「キミしきる」の歌詞も、やなぎさんから石原さんへのメッセージと読める内容だなと思いました。

石原　本当にそうだと思います。「えっ、なんでこんなに私の心を知っているんだろう？」と驚いたくらいです。なので、レコーディングでも歌っていて気持ちが乗りましたし、コンサートで初めて歌ったときもライブということを忘れるぐらい曲に入り込んでしまって、歌い終わって明かりがついてから「そうだ、今みんなに観てもらってたんだ」と気が付いたという。そういう不思議な感覚になれるという意味でも、「キミしきる」は私の中で特別枠というか、すごく大切な曲です。まだ聴いたことがない方はこの機会にぜひ聴いてみてほしいです。

──そして今回のシングルにカップリングとして収録される、HoneyWorksさんからの提供曲「わざと触れた。」のお話もぜひ。

石原　こちらは「Starcast」とまったく違うテイストで、好きな人へ思いをキュンキュンさせている女の子の、明るくてストレートな歌詞がいっぱい詰まった曲になっています。10代の女の子が聴いてくれたら、ものすごい共感してもらえるんじゃないかなというような、甘酸っぱい歌詞で。「こういう恋愛いいなあ、私もしてみたかったなあ」と思いながら歌いました（笑）。今恋している方とか、少女マンガが好きな方にもぴったりな、いろんな妄想がはかどる曲になっています。ちょっとセリフっぽく歌ったフレーズにも注目してもらえるとうれしいです！

──来年3月12日には立川ステージガーデン、3月27日には神奈川県民ホールでのライブ開催も決定しましたね。

石原　毎年1回は開催できているライブ、来年も決定してすごくうれしいです。今回「Starcast」という自分にとってとても大切な曲をいただけたので、その世界観を引き継いだライブができたらいいなと思っていて。2日間、昼と夜公演の2公演ずつ行う予定なんですが、初の試みとして各日でライブの雰囲気をちょっとだけ変えてみようかなと。まだまだこれからの段階ですが、皆さんにお届けできるのが今から楽しみです。先日、パープルをテーマにしたやなぎさんのライブ（定期的に開催している“色”をテーマにしたコンセプチュアルライブ「color palette」。今年のテーマカラーは紫）を観させていただいて、いろんなことを感じたので、そこで得たものを生かして次のライブに挑めたらいいなと思います。

──そしてやなぎさんは来年、ソロデビュー10周年を迎えられますね。

やなぎ　そうなんです。最初にお話しした「あの夏で待ってる」と同い年なので。先日ファンの方々に“自分にとってのやなぎなぎの推し曲”を投票していただいたんですけど、この10年で生まれた曲が多すぎて、ファンの方もどれに投票していいかわからないみたいで（笑）、めちゃくちゃバラけていましたね。それでも、この10年でいろんな方にたくさんの曲を愛していただけたんだなあと感慨深かったです。

石原　やなぎさんの曲はどれも素敵で……私もいちファンとして、推し曲を1つ決めないといけないとなると、すごく悩みます！

うちの子をお友達にしてください

石原　これまで短い間しかお会いできていなかったので、今日はたくさんお話しすることができて楽しかったです。さっき、撮影の合間に猫ちゃんの話をしました。

やなぎ　夏織さんはワンちゃん（むーちゃん）、私は猫（こむぎ）を飼っているんです。

石原　こむぎちゃん、私が大好きな種類の猫ちゃんなので、「実際に飼われているとどんな感じなんですか？」と、いろいろお話を聞いちゃいました。と言うのも、私のワンちゃんが犬嫌いで猫好きという変わった子で。外に出たときとか、猫だけにものすごく反応するので、私も引っ張られるように「猫も可愛いかも♡」と思うようになって、一時期本気で飼おうか考えたくらいだったんです。で、そのとき飼いたいなと思っていたのが、やなぎさんのお家のこむぎちゃんと同じ猫種で。いつかもし猫を飼う日が来たら、その猫ちゃんがいいなって。

やなぎ　ミヌエットという猫種なんですが、おっとりした優しい性格なのでオススメですよ。

石原　いいなー。むーちゃん、今のところ友達がいないので、こむぎちゃんに初めての友達になってほしいです。

やなぎ　ぜひ！ うちの子をむーちゃんのお友達にしてください（笑）。

──そちらの対面も最高の癒し映像になりそうですね。今日の対談が今後のお二人にとって、よいものになることを願っております。

石原　やなぎさんに作詞のお話を聞いて、いつか自分が歌詞を書いて、やなぎさんに曲を作っていただきたいという新たな夢が生まれました。自分が作詞するのは遠い先のことのように思っていましたが、今日お話させていただく中で「やなぎさんの曲で歌詞を書けたらすごく幸せだな」と思ったので、その夢を叶えられるようがんばります！

やなぎ　書かせていただけるなら、いつでも喜んで。全然仕事じゃなくても書きますし、「夏織さんの歌詞をどんな曲に乗せたら楽しいかな」とか、私自身も妄想がはかどります。

石原　あはは！ そのときはぜひ、よろしくお願いします！

※特集公開時、内容の一部に誤りがありました。お詫びして訂正します。