心がズキューンと撃ち落とされて
──「Starcast」のレコーディングはいかがでしたか?
石原 めちゃめちゃ楽しかったです! この曲の2番には、「撃ち落としてく」みたいな、ちょっと強い言葉も出てくるじゃないですか。そういうところも「どうやって表現したら、より皆さんに伝わるだろう?」と考えながら歌ったのが、すごく楽しかったです。
やなぎ 曲自体、展開がどんどん変わっていくドラマチックなものだったので、そこにも夏織さんの歌い方がすごくマッチしていたなと思います。
石原 うれしい。ありがとうございます! 歌詞のストーリーと一緒に曲の展開も大きく変わっていくので、私自身、歌いながら演技をしているような感覚でした。最初のAメロはちょっと不安そうな雰囲気だけど、サビに向かうにつれてサウンドが明るくなっていって。2番でさらに音数が増え、最後はどんどんキーが上がって壮大な世界が広がっていく。キーについては、自分があまり歌ったことのないポジションだったので「歌えるかな?」と思っていたんですけど、歌詞と、この曲を一緒に作ってくださった皆さんの気持ちに引っ張ってもらいましたね。皆さんの思いやエネルギーを感じながら、「ああ、こんなふうに幸せな気持ちで歌えるんだ」と思っていました。
やなぎ 夏織さんのその気持ちは、歌を聴いていて、すごく伝わってきました。2番終わりの「キミが笑ってくれるならOK」も、歌声から笑顔が見えましたし、最後の「向こう岸で手をふってから」という部分からもエネルギーがどんどん上がっていって。
石原 ああ、うれしい! よかった、伝わって。
──やなぎさんのお気に入りのフレーズは?
やなぎ いっぱいあるんですけど、特にさっき夏織さんもおっしゃっていた「雨の音が言葉を撃ち落としてく」。正直、“撃ち落とす”というワードについては、「夏織さんに合うかな? ちょっとネガティブすぎるかな?」と悩んだんです。でも、夏織さんの歌声で聴いてみたいという、私個人の願望でフィックスしちゃいました(笑)。自分が歌ったら切なくなりすぎてしまうと思うけど、夏織さんだと、それすらも希望に思えてくるというか。「撃ち落としてくれたのね!」みたいな、ネガティブになることなくうまく昇華してくれる歌声だったので、結果的に歌ってもらって本当によかったなと思っている部分です。
石原 私もそのフレーズがすごく好きで、最初に歌詞を読んだ段階から、心がズキューンと撃ち落とされていました! 「この痛み、わかるなあ……」って。あと、そのあとのサビに出てくる「ずぶ濡れで空を見上げ 逆さまに持った傘で 落ちてく言葉をなみなみ受け止める」という部分も、めちゃくちゃきれいじゃないですか? 撃ち落とされた言葉が地面にバラバラ散らばるわけじゃなくて、逆さまの傘で受け止められるという。そして、“傘を逆さまに持つ”という発想もとても好きで。
やなぎ うふふ。端から見ると変な人ですよね(笑)。
石原 傘のちっちゃい先端の部分を持って受け止めてるんですよね? 想像しただけでかわいいから、ここも含めて2番は特に大事にしなきゃと思って歌わせていただきました。あとは終盤の「向こう岸で手をふってから 答え合わせをしよう」の「から」の部分がすごく好きです。展開も盛り上がっていって、ここで音と歌詞がピタッとハマる感じがしたので、すごく大事なところだなと思って。「私の歌でダメにしたらもったいない!」と気合いを入れて歌いました。
──ミュージックビデオはどんなコンセプトで撮影されたんですか?
石原 感情が強く表れている詞と曲だから、自分の体でそれを表現できたら素敵だなと思って、エモーショナルな振り付けが映えそうなジャズダンスで挑むことにしました。私自身、ジャズダンスにはちょっと苦手意識を持っているんですけど、MVを撮影した場所の風景も曲の世界観にぴったりで、踊っていて本当に楽しかったです。星空をイメージしたセットで、暗闇の中、優しい光がポポポポッと輝いていて。森の中で踊るシーンでは、ダンサーさんが一緒に踊ったほうが誰かとの距離が縮まった感じを表現できると思ったので、いつも私のライブをサポートしてくれているダンサーのNAOちゃんと一緒に踊っていたり、いろんな描写が組み合わさったMVになっています。
やなぎ 森の中の舞台で踊っている夏織さん、めちゃくちゃ素敵でした。最初は夏織さん1人じゃなく、途中からダンサーさんと一緒に踊り始めたときの驚きもあって新鮮でしたし、ダンサーさんと一緒に手を伸ばす振り付けでニコッと笑顔になっていたのがかわいくて。
石原 ありがとうございます。個人的にはこの曲の振り付けがすごく好きで。ダンスの先生が歌詞の意図を汲んでくださり、振りと歌詞がリンクしている部分があるんですよ。最初の「キミと同じことがいいな」というフレーズのところは手話を取り入れてみたり、さっきも話した「向こう岸で手をふってから」では、実際に大きく手を振ったり。私自身、自然と笑みがこぼれるような感じで踊らせていただいて、MVなんですけどまるで舞台に立っているみたいな感覚でしたね。
速い曲と遅い曲、作詞しやすいのは?
──ちなみに、この「Starcast」は詞と曲、どちらが先だったんですか?
やなぎ 曲が先でしたね。自分の曲を作るときはどっちのパターンもあるんですが、別の方の作品に参加させてもらうときは、曲先の場合が多いです。
石原 どっちのほうが難しいとかあるんですか?
やなぎ うーん、イメージさえ固まってしまえば、どちらでも大丈夫。イメージを固めるまでが大変なんですけど(笑)。「こんな曲を作りたいな」と音や曲調から考えるときもありますし、メッセージとして「この気持ちを伝えたい」と思ったら歌詞を先に書くこともあります。
石原 そうなんですね、すごい!
──石原さんも最近、作詞に興味が出てきたそうですね。
石原 はい。今までは「絶対私には作詞なんて無理」と思っていたんですけど、やなぎさんをはじめ、いろんな方々が書いてくださる歌詞を見ているうちに、「自分が感じたものや考えたことを歌詞にするって、すごく素敵なことだな」と思って。特にやなぎさんの詞は本当に印象的なので、「いったいどんなふうに考えて完成させるんだろう?」と気になって質問しちゃいました(笑)。
やなぎ 夏織さんご自身で歌詞を書かれるの、絶対いいと思います。歌うときに、より言葉の重みが増しますし、夏織さんは歌詞を書ける方だと思います。言葉から意味や気持ちを読み取る力がすごいですし、それは作詞の基礎ができているという証拠なので。
石原 うれしいです! めちゃめちゃ勇気をもらえました。私は最近まで本を読むことが苦手だったんですけど、これからは言葉にいっぱい触れて勉強したい。いつか作詞、やってみたいです!
やなぎ ぜひぜひ。夏織さんの詞、読みたいです。絶対素敵なものになると思いますよ。そのときは一番に読ませてくださいね。
石原 わかりました! やなぎさんに読んでもらえるなんてうれしいです。うふふふ。
──以前、石原さんはオフィシャルYouTubeチャンネルの企画「100の質問答えてみた!」で、「もし作詞をするならどんな曲をしてみたい?」という質問に「スピードが速い曲だと言葉を埋めるのが大変だと思うので、まずはゆっくりめの曲から挑戦したい」とお話しされていました。
石原 素人の考えですみません(笑)。実際作詞をしたことがないので自分ではわからないんですが、やなぎさんはテンポが速い曲と遅い曲、どちらのほうが作詞しやすいですか?
やなぎ うーん、私はゆっくりな曲のほうが、ひと言にかかる重圧をすごく感じるので難しく感じるかな。
石原 そう言われるとそうですね……。
やなぎ バラードみたいな言葉数が少なめの曲の場合は、「この1文字にどれだけの意味を込めよう?」みたいなことを考えますよね。個人的には速い曲はリズム重視で、韻を踏んだ言葉をパッパッパッと入れていくことが多いんですが、そういうほうが言葉が出てきやすいかもしれないです。
石原 なるほど! じゃあ私も最初は速い曲にします(笑)。
やなぎ 早い決断(笑)。じゃあ、私が夏織さんに速い曲を書きますね。
石原 ええ! やなぎさんに書いてもらえるなんてうれしいです……そしてこれも作詞に挑戦する前に聞けてよかった。うふふ。
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なんで私の心を知っているんだろう?
2021年11月22日更新