INUWASIの3rdフルアルバム「RAPTOR: IkAZuCHi」がリリースされた。
INUWASIは2020年の結成時よりメンバーが入れ替わることなく6人で活動を続けてきたが、今年9月、メンバーのイヴが2025年3月をもってグループを卒業することを発表。結成5周年を迎える2025年を節目として考え、今後の活動について話し合った結果、「5周年を1つの区切りとしたい」という本人の意向を尊重し卒業が決まったという。
そんなINUWASIだが、今年8月にデビュー時より目標としていた会場である東京・Zepp DiverCity(TOKYO)でのバンドセットワンマンライブを成功させるなど、進化を遂げている真っ最中(参照:INUWASIの時代を作り上げるため、デビュー時からの目標のステージで渾身のバンドセットライブ)。11月8日の東京・Spotify O-EASTを皮切りに、全公演バンドセットのワンマンツアーを行うことが決定している。現体制最後のリリースと、6人で駆け抜ける最後のツアーに対し、メンバーはどのような思いを抱いているのだろうか。音楽ナタリーでは6人にインタビューし、それぞれの胸中を聞いた。
取材・文 / 西澤裕郎(SW)撮影 / 安田まどか
初のメンバー卒業に対する率直な思い
──イヴさんは、いつ頃から卒業について考えていたんですか?
イヴ 1年くらい前から考えていて、気持ちが固まったのは今年の夏ですね。メンバーには発表する1週間前くらいに伝えたんです。5年間INUWASIで活動してきて、今後の自分の人生を考えたときに、節目というか、このタイミングかなと思って決心しました。
──ほかメンバーの皆さんはイヴさんの卒業をどのように受け止めました?
がるむ 私はうすうす感付いていたので、そんなにびっくりしなかったところは正直あります。イヴちゃんはINUWASIにとってかけがえのない存在なので、大きな損失だと思いますが、イヴちゃんが苦しみながらがんばって壁を乗り越えてきた姿を見てきたし、イヴちゃんの人生なので、少しでも幸せな方向に進んでいくことを願うばかりです。
──とはいえ、複雑な気持ちもあるんじゃないでしょうか。
カリヲリ デビューからこの6人で活動してきたので、グループ自体が終わるまで6人のままだと勝手に思い込んでいて。イヴちゃんが卒業するまであと約半年あるんですけど、その半年で心の整理をつけたいと思っています。
ライカ 事務所でイヴちゃんの卒業について聞いたとき、話しているイヴちゃんの後ろに、初期から最新までのINUWASIのポスターが飾ってあったんです。それを見ていたら、イヴちゃんのいないINUWASIが想像できなくて。私もカリヲリと一緒で、最後までこの体制のまま活動できると勝手に思い込んでいたので、話を聞いたときは寂しい気持ちがこみ上げてきました。でもイヴちゃんが決めたことだから、幸せになってほしいという思いと、一緒に行けるところまで高みを目指していきたいという気持ちがあります。
すずめ 1年前くらいに、イヴちゃんがINUWASIを辞めるかもしれないという話がうっすらとあったので、逆に言うと、そこからがんばって続けてくれたという印象のほうが私は強くて。5年間、6人で変わらず活動を続けられたことは奇跡だと思うから、寂しいですけど、気持ちを強く持ってがんばらなきゃなと思っています。
──はのんまゆさんも、うなずいていますね。
はのんまゆ INUWASIの曲にイヴちゃんの声は必要不可欠で、イヴちゃんの代わりになれる人はこの5人にいないから、この先大丈夫かなという気持ちも正直あります。でも、イヴちゃんの人生なので、卒業を止めるのは違うなと思うし、私たちががんばらなきゃいけないと思っています。
メンバーが主体になって道を切り開きたい
──イヴさんは卒業発表の際、「今後アイドル活動することは一切ありません。そして全てのSNSも削除します」とコメントしていましたね。
イヴ この5年間でINUWASIでやりたいことは思う存分やったと思っていて。こう見られたいとか、こうなりたいとか、そういう欲がもうないくらいやり切ったんです。
──INUWASIは2020年にデビューしましたが、コロナ禍によりいきなり活動が難しい状況に見舞われました。そんな中でも、ライブを大切に積み重ねてきたグループでもあると思います。改めて5年間を振り返って、どんなことを思いますか?
カリヲリ 今言ってくださったように、ライブで積み重ねたものがINUWASIの強みだと思うし、前回のツアーでO-EASTや野音に立たせていただいたり、着実に大きな箱でライブをさせてもらえていて。グループの未来を見据えて歩んできたから、目標だったZepp DiverCityでのワンマンも達成できたと思っています。この前、メンバーとのミーティングでも話したことなんですけど、これからは受け身じゃなく、もっと自分たちが主体になって道を切り開けるようにしていきたい。そういう前向きな気持ちでいます。
──メンバー同士のミーティングは定期的にやっているんですか?
すずめ いや、珍しいですね。
──どうしてこのタイミングでミーティングを行ったんでしょう?
すずめ 11月8日にツアーが始まる前に、みんなの意思や目指すものをもう一度確認しておきたかったんです。さっき、ライブを大切に積み上げてきたと褒めてくださいましたが、それだけちゃダメだと思っている面もあって。SNSももっと強化したいよねという話もしました。
はのんまゆ いろんなアイドルさんの記事などを拝見すると、SNSの話題が多いんですよね。そういう時代やトレンドに乗ることも大事と正直思っているんです。私たちはライブを大事にしてきているけど、そこにプラスして、もっとSNSもがんばったらさらに力が付くと思う。SNSのおかげで、世界中の人に楽曲が届きやすい環境になってきてるじゃないですか。最近、グループのTikTokアカウントを動かすようになり、「Altair」のライブ映像を上げたらけっこう反響があったんです。それって、私たちが積み上げてきたものが届いているということだから、世界にもっとINUWASIを発信していけたら、ファンの方がこの先もついていきたいと思うような未来になるんじゃないかな、と思っています。
未来への欲が湧いてきたZeppDCワンマン
──先ほど少し話に出ましたが、デビュー時から目標としてたZepp DiverCity(TOKYO)でのワンマンライブはいかがでしたか?
ライカ Zepp DiverCityでのワンマンを1つの目標にしていたから、終わった瞬間、やり切ったなという感覚がありました。この夏、すずめが「TIF」(「TOKYO IDOL FESTIVAL」)のPR大使に任命されたり、「TIF」をはじめ、出演したアイドルフェス全部のメインステージに立たせていただいたりして。いろんな人にINUWASIを届けられている実感があったし、それがきっかけでZeppに足を運んでくれている方もいました。今年の夏にやってきたことをステージ上で出し尽くせたかなと思ったんですけど、ライブが終わったら、もっと大きい会場でワンマンをやったらどうなるんだろうと未来への欲が出てきたので、ここで止まってちゃいけないし、やれることを自分たちで考えて実行していかなきゃいけないという気持ちが同時に芽生えました。
カリヲリ このライブで今後のINUWASIの行く末が決まっていくだろうと思っていたので、今までのワンマン以上にしっかりとした気持ち、自信を持って挑めたし、ファンの方とも思いをひとつにしてライブを完成させられたと思います。でもここで終わりじゃなくて、私ももっと大きな箱を目指したいですし、これからバンドセットでツアーを回っていくので、アイドルの枠を越えて活動範囲を広げていきたいです。バンドの方々と対バンをしたり、いろいろなイベントやフェスに出させてもらったりできるようにがんばっていきたいと思っています。
イヴ Zepp DiverCityはめちゃくちゃいい景色でした。Zeppの時点で私が辞めることは決まっていて。今までのワンマンは終わったあとに後悔の気持ちもあったりしたんですけど、あの日は本当に楽しかったんですよね。なんて言えばいいんだろう……とにかく楽しもうという気持ちで臨んで、その結果本当に楽しめました。
はのんまゆ 私はライブが一瞬に感じて、いろいろと記憶が抜け落ちています(笑)。毎回ステージに立つ前は、あまりお客さんがいなかったらどうしようと考えたりするんですけど、たくさんの方が迎えてくださって。フロアの後ろのほうのお客さんも、今まで以上に一緒に盛り上がってくださいました。いろいろ迷うこともあったけど、INUWASIを続けてきてよかったなと思ったし、もっとレベルアップして、たくさんのお客さんたちといろいろな景色を見ていきたいと思いました。
すずめ Zepp DiverCityには対バンで立たせていただいた経験が何回かあるんですけど、INUWASIのファンでフロアがあふれている光景に憧れていたので、それを実際に見れてすごくうれしかったです。お客さんがいっぱいいる景色を見て、やっぱり私はステージに立つのが好きなんだなと実感したし、Zeppをツアーで回りたいと思いました。まだまだINUWASIはやれるなと感じられたライブでした。
がるむ 私もはのんまゆと同じく、ライブが一瞬の出来事に感じられました。あまり記憶に残ってないというか、1曲目が始まって気付いたらもう最後の曲だったみたいな(笑)、極端に言うとそんな感じです。本番前、トイレにこもってMCの練習をしていたことはすごく覚えているんですけど。廊下がわいわいにぎわっている中、トイレにこもってMCの練習をしてる自分ちょっとかわいそうだな、なんて(笑)。
ライカ みんなけっこう緊張していたよね。
はのんまゆ していたんだろうなって、今になって思う。楽屋裏で動画のカメラが回っていたんですけど、みんな全然しゃべってなくて使える素材がまったくありませんでした(笑)。
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アルバムはバンドセットライブで映えるような曲ばかり