2020年に活動をスタートさせた6人組アイドルユニット・INUWASIは、昨年10月の東京・Spotify O-EAST公演にて、活動の第1章が完結したこと、2024年に第2章の幕が開けることを発表(参照:INUWASI、全公演完売の東京ワンマンツアー走り抜け第1章完結「頂点を目指して戦い続けます」)。そして今年2月に行った東京・日比谷公園大音楽堂(日比谷野音)公演の中で、INUWASIの存在や日本のアイドルカルチャーを海外にも発信していくこと、ライブではバンド編成のパフォーマンスを基軸とすることを宣言し、これまで以上に多方面で活動していくと表明した(参照:INUWASIが真冬の日比谷野音でバンドセットライブ披露、6人のすべてをぶつける迫真のパフォーマンス)。
今年4月にはZepp Shinjuku(TOKYO)ワンマンも成功させ(参照:INUWASI「立ち止まっちゃいけない」満員のZepp Shinjukuで気迫のバンドセットライブ)、華々しく新章の幕を開けたINUWASIの最新作が「Shadows Core:World of Unreal」だ。今までアルバムもしくはミニアルバムという形で楽曲を発表してきた彼女たちだが、今作はグループ史上初のシングル。彼女たちはなぜ“章”という形で活動に区切りを付けたのか、そしてこのタイミングで発表される新曲にどのような思いを込めたのか。音楽ナタリーでは今回もメンバー6人にインタビューし、それぞれの思いを聞いた。
取材・文 / 西澤裕郎(SW)撮影 / 坂本陽
なぜ第1章を完結させたのか
──約8カ月ぶりのインタビューとなりますが、グループの雰囲気が明るくなりましたね。
すずめ えー! ホントですか? デビュー当時に出演させていただいたライブハウスの方からも「変わりましたね」って言われたばかりで。
ライカ 「明るくなった」って言われたんですよ。
はのんまゆ みんな、ようやく心を開き出したよね(笑)。
──心を開くようになったきっかけはあったんですか?
はのんまゆ 普通に、6人で過ごしてきた時間の積み重ねもあると思います。
すずめ 5年ぐらいかけて、やっと心を開けるようになってきた(笑)。
──それぞれ自信が付いたというのも理由としてあるんじゃないですか?
カリヲリ それもあるかも。お互いのいいところも悪いところもすべて受け入れているから、そういう意味でメンバーと親しくなったなと感じることが増えました。
──INUWASIは昨年10月、Spotify O-EASTでワンマンライブ「INUWASI Tokyo Oneman Tour THE FINAL〝INWS〟」を開催し、“第1章の完結”を発表しました。なぜ、あのタイミングで活動の“第1章”を完結させたんでしょう?
ライカ 日比谷野音ワンマンが決まり、バンドセットでのライブを再開することになったのが活動を区切る1つのタイミングだったと思っていて。INUWASIは去年、都内の大きいライブハウスを回るツアーをやっていたんですけど、その最高峰として定めていたのがO-EASTだったんです。そのライブをソールドアウトできたことで、その後の野音ワンマンから第2章としての方向性を示しました。
──メンバー的にも、INUWASIの第1章が完結したという実感はあるんでしょうか?
すずめ はい。第2章が始まったなという感覚はあります。もともとバンドセット公演は昨年2月のLIQUIDROOMワンマンが最初で最後の予定だったんです(参照:INUWASI過去最高を更新!満員のリキッドで“最初で最後のバンドセットワンマン”)。そんな中、第2章が始まったときに、バンド編成のライブを軸にしながら、バンドさんやアーティストさんのいる対バン、音楽フェスに積極的に出ていくという決意を私たちからファンの皆さんに対して表明して。INUWASIの活動はまだまだ続いていくんだという気持ちになりました。
はのんまゆ INUWASIは最初、ゴリゴリのハードコアに近い音楽性で活動していたんですけど、途中で方向性を変えて、ちょっと明るい曲調になったんですよ。今は原点回帰したというか、初期の方向性と明るい要素を融合して進んでいる感覚です。
ライカ あと、O-EASTから衣装が“和”の感じになっています。これには、INUWASIの存在と日本のアイドル文化を海外にも広めたいという思いを込めていて。2月の野音のあとに開催したツアーでは、初の海外遠征で台湾に行きました。
──自分たちの存在を広く伝えていきたいという欲が出てきたわけですね。
ライカ はい。アイドルに興味のない方やバンドが好きな方にもINUWASIのことを広めていきたいなって。
イヴ ツアーでは初日のWWW XとファイナルのZepp Shinjuku(TOKYO)公演がバンドセットで。生バンドライブが定着してきていることがうれしいですね。
カリヲリ 今まではアイドルという枠で勝負してきたけど、今の私たちなら外のジャンルにも飛び込めると思っています。INUWASIのことをもっといろんな人に好きになってもらって知名度を上げていきたいし、ワンマンのキャパをアップさせたい。野音以上の場所に行きたいんです。
がるむ 例えば今はiLiFE!さんとかがアイドルシーン以外の多くの人に知られていて人気があると思うんですけど、INUWASIはINUWASIなりに自分たちの存在を外へ広げていきたいんです。
野音のステージに立って覚悟が決まった
──INUWASI第2章の幕開けとなった日比谷野音ワンマンは真冬の開催でしたが、バンドセットだったことも含め、生々しい熱量が伝わってくるライブでした。
カリヲリ 会場が広く感じましたが、そのときの自分たちの全力を出せたと思います。INUWASIのライブを初めて観た方もいっぱいいたと思うんですけど、そういう人たちをもっとパフォーマンスに引き込める力が付けば、さらにいいライブにできたのかなと思っていて。あと、ソールドアウトできなかったことは心残りですね。野音の建て替え工事が延びたので、個人的にはリベンジしたいです。
ライカ 野音ワンマンの開催をライブ中に発表したとき、今までで一番の歓声が上がったんですよ。当日ステージに上がったときの歓声もホントにすごくて、ここまで活動を続けてきてよかったなと感じました。そしてバンドセットならではの迫力のあるライブを届けられたという自信もありました。ライブが終わったあと、SNSで「よかった」「最高」という声を見かけましたし、特典会でも同じような感想を聞けてうれしくなりました。
イヴ 私は野音にアーティストさんのライブを観に行ったことがあって。そのライブはお客さんがパンパンだったから、自分たち6人があそこに立ったらどうなるんだろうという不安もあったんですけど、INUWASIのファンのみんながすごく幸せそうで、私も幸せになりました。
──かなりの手応えがあったんですね。
はのんまゆ 最初にナタリーさんのインタビューを受けたときから、私は「アイドル好きじゃない層にも刺さるグループになりたい」と言っていましたけど、ようやく声を大にしてそれを言えるスタートラインに立てた感覚があって。私は中学生の頃からバンドをやっていて、野音に何回もライブを観に行っていたし、自分も立ちたいとずっと思っていたんです。ライブ当日はもちろん不安もあったけど、どこか吹っ切れていて、お客さんの反応からも手応えを感じられました。細かいところを見たらいろいろと反省点はありますが、野音の工事が1年延長されたので、「それはリベンジしろってことでしょ!」と思っています。
がるむ 私は野音という会場にどれほどの歴史があるか知らなかったんですけど、貴重な経験をさせていただけたと強く思っています。今まではスクリーンの映像や演出でファンの人を沸かせていたけど、ぶっ続けでパフォーマンスして、バンドとともにお客さんを楽しませるライブができた。もちろん力不足な点もあって、バンドメンバーさんと一緒にライブするのが恐れ多いみたいな感情があり、今後は「自分たちが率いているバンドなんだ!」と胸を張ってステージに立とうと思っています。
すずめ 野音は第2章のスタートということで、私たちの決意を見せるライブだと思って挑みました。これまでのインタビューでお話ししたように、私、ライブで歌っている途中に怖くなっちゃったりして、正直、心から楽しめたことがあまりなくて。でも、野音のステージに立って目の前の景色を見たときに覚悟が決まったというか。私たちの“これから”を楽しみにしてくれている人がいるんだと思ったら、やる気がさらに湧きました。MCの臨機応変さとか、バンドセットなのに自分たちが主になって仕切れてないとか、ここがダメだなという気付きを得られたライブでもありました。
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野音後のツアーで感じた成長