INUWASI「Revive Your Faith」インタビュー|フロアに熱狂を生み出す6人の現在地

犬と鷲の融合“ハイブリッドラプター”をイメージした6人組アイドルユニットINUWASI。東京のライブハウスを舞台にした「INUWASI Tokyo Oneman Tour」のチケットを次々ソールドアウトさせ、アイドルフェス「TOKYO IDOL FESTIVAL 2023」ではメインステージに立つなど、右肩上がりに注目度を高めている彼女たちの5thミニアルバム「Revive Your Faith」がリリースされた。

ライブ活動と同時に音源の制作にも力を入れ、コンスタントに作品をリリースしているINUWASIだが、今作はどのようなコンセプトで作られたのか? また、メンバーはグループの現在地をどのように捉えているのか? 音楽ナタリーでは6人に話を聞いた。

取材・文 / 西澤裕郎(SW)撮影 / 塚原孝顕

上に行かなきゃいけない

──前回のインタビューでは5月の渋谷CLUB QUATTROワンマンへの意気込みを聞いて話が終わりましたので、そこから現在に至るまでの活動についてまず聞かせてください(参照:INUWASI「Tranxend」インタビュー)。

ライカ 去年の10月に東京のライブハウスを舞台にしたツアーが始まって、クアトロはその3公演目だったんですけど、ありがたいことにチケットが完売して、ライブ後に「INUWASIって毎回最高を更新してくれるね」とファンの方から言ってもらうことができました。夏には「TOKYO IDOL FESTIVAL 2023」のメインステージに立つことができて、去年メインステージ争奪戦で負けてしまったのですごくうれしかったです。いざステージに立ってみたら、心がキュッとなるような、感じたことのない感覚になりました。うれし泣きしているファンの方がステージ上から見えて、それにも感激しましたね。その後、ツアーの追加公演として開催した新宿BLAZEワンマンは、よかったところもたくさんあったんですけど、悔しさを感じる部分も多くて。自分の足りないところや課題がはっきりしたライブだったと思います。

はのんまゆ クアトロのときは一番自分たちらしいというか、いい意味で肩の力を抜いたライブができたと思っていて。前のインタビューのときに、2月のLIQUIDROOMのワンマンでようやくINUWASIとして殻を破れた気がすると言ったんですけど、クアトロでは殻を破った感覚を自分たちのものにできたと思うんです。夏は「TIF」や新宿BLAZE公演があったことでなんだかせかせかしていて、そんな中でもライブを成功させなきゃいけないという気持ちでメンバーみんな常に緊張していたかもしれません。そういう意味で、もっと自分たちらしいパフォーマンスができたんじゃないかなという反省点があります。

すずめ 日を重ねるごとに、メンバーがどんどん自信を付けてライブを楽しんでいっている印象があります。新宿BLAZEの日は台風の中、たくさんの方が足を運んでくださって、今までやってきたことがちゃんと結果になって返ってきているんだなと感じられてうれしかったです。でも個人的には勝手にプレッシャーを感じてしまうというか、ステージの真ん中に立つことが怖くなってしまう感覚も覚えて。そんな自分にショックを受けたんですけど、「上に行きたい、変わりたい」という決意がなければそういう気持ちも生まれてこないと思うんです。今は自分のことを認めて、自分らしくがんばろうという気持ちになっています。

カリヲリ すずめは曲の中で一番目立つパートを歌うことが多いんですけど、グループの中で一番歌と向き合っているからこそ、プレッシャーを感じるんだと思います。私たちももっと練習して、グループにより貢献できるようになれば、そういったプレッシャーもなく、メンバーみんな同じ気持ちでステージに立てるはずで。もっと歌を磨いていかなきゃなと思っています。

──そうした反省点もある一方、ライブでは毎回お客さんの熱狂ぶりがすごいじゃないですか。そのことについてはどう捉えてますか?

カリヲリ 今のところツアー全公演のチケットがソールドアウトしていたり、「TIF」のメインステージに立たせてもらったり、1つひとつを成功させて、階段を駆け上がることができていると思います。ファンの方も次のステージに一緒についていきたいという気持ちを持ってくれていて、成長する過程を応援するのが楽しいと思ってくれているのかなって。

はのんまゆ 1つのライブが終わるたびに新しい課題ができる。常にその繰り返しだと思うんですけど、いい意味でメンバーみんな負けず嫌いなんですよ。自分のいいところと直さなきゃいけないところを全員がわかっている。それがINUWASIの強みだと思います。

カリヲリ

カリヲリ

はのんまゆ

はのんまゆ

──慢心せず、常に向上心を持てているのは、どうしてでしょうか?

ライカ 現状には誰も満足していないんです。目指す場所が、デビュー当時と比べてどんどん大きくなっていて。今回のツアーファイナルの会場はO-EASTなんですけど、それも1つの通過点で、もっと大きいところを目指しています。ファンの方たちをもっと楽しませて、INUWASIにまだハマっていない方や、興味はあるけど対バンに出演していたら観てみるぐらいの方たちもINUWASIの輪に巻き込む。それくらいの勢いで上を目指していきたいです。メンバーみんながそう思っているから、現状に満足せずに活動できているのかなと思います。

がるむ ファンの方が熱狂してくださっているのを目にしても、自分的にはその自覚があまりないというか……。でもライブでファンの方の顔を端から端まで見ていると、初めて来てくれた方が増えている印象を受けるので、徐々に自覚し始めてはいますね。

ライカ

ライカ

がるむ

がるむ

イヴ 私も現状に満足はしてなくて、ファンの方の期待もBLAZEのときとO-EASTではたぶん違うと思うんですよ。求められているものに応えたいし、もっと大きな景色を見せたいです。

すずめ TikTokで曲がバズっているわけでもなければ、SNSが強いグループでもないですけど、ステージに立つたびにびっくりするぐらい多くの人が観に来てくれていて。それって、ライブを積み重ねてきた結果だと思うんですよ。一度ライブを観た人が私たちのことが気になって、そのあとも現場に来てくださっていると思うととてもうれしいです。おかげで自信を持てていますが、自分たちが現状に満足していないのは周りの環境のおかげでもあります。事務所のスタッフさんもいつも支えてくださるし、ファンの方が大切な時間を割いてライブに来てくれて、いつも温かい言葉をくださるので、上に行かなきゃいけないという気持ちが常にあるんです。

イヴ

イヴ

すずめ

すずめ

初心をよみがえらせよう

──ライブの積み重ねもそうですし、作品を毎回しっかり作り込んでコンスタントにリリースしていることも熱狂を生み出している理由の1つだと思います。今作の「Revive Your Faith」というタイトルには、どのような思いが込められてるんでしょうか?

ライカ 「Faith」は信念という意味の言葉で、このタイトルには初心をよみがえらせようという思いが込められているんです。今はINUWASIが大きくなるためのターニングポイントの時期だと思うんですけど、今後に向けて初心の気持ちをよみがえらせつつ、現在の路線は一旦ここで終わり。そして、変化を続けていくというINUWASIのルーツを改めてよみがえらせるという意味合いをこの作品に込めています。

INUWASI

INUWASI

──ハードな音楽性を生かしつつ、ポップなエレクトロサウンドを貪欲に取り込んでいくところなど、前作のフルアルバム「Tranxend」と今作でINUWASIの音楽的な路線が明確化したと感じていたので、「現在の路線は一旦終わり」という話には少しびっくりしました。

はのんまゆ 「Revive Your Faith」は今のINUWASIの集大成を表した作品になっていると思います。それでいて、スタッフさんが今までのワンマンを観て足りないと感じた要素を詰め込んでくれて。INUWASIのライブではフロアを盛り上げること、一体感を生み出すことを大事にしていますが、今回はシンプルにアッパーな曲だけじゃなく、よりいろいろなジャンルの曲に挑戦しているし、どの曲にもINUWASIならではのオリジナリティが詰め込まれているんです。

すずめ INUWASIの可能性が広がっていくことを予感させる作品だよね。

はのんまゆ うん。もっと違うジャンルの楽曲にも挑戦していけるんじゃないかなって。

──では、ミニアルバムの収録曲について詳しく聞かせてください。1曲目の「Hyper Nova」は、イヴさんが好きそうな音色や展開だなと思いました。

イヴ 好きですね(笑)。前作に入っている「Endless」をバージョンアップさせたような曲になっていて。途中でテンポアップしたり、サビから後半かけて畳みかけていく感じがとても好きです。テンションを上げたいときに聴いてもらえたらうれしいですね。ライブでも、今まで以上にパフォーマンスの切り替えを意識していて、魅せるところは魅せる、楽しませるところは楽しませるという感覚で披露しています。

──パフォーマンスの切り替えというのは、具体的には振付のことですか?

イヴ それもですけど、歌唱面だとわりと早口で歌うところや、高音で聴かせる部分があって、聴いていて面白い曲になっていると思います。

すずめ この曲は「TIF」で初披露したんですけど、そのときからお客さんが盛り上がってくれたんです。INUWASIはここからさらに強くなっていけるんだ、という感触がありました。

イヴ 「Hyper Nova」も「Endless」もボーカルにオートチューンをかけていて、そこも聴きどころだと思います。

──2曲目の「Strange Core」には、どのような印象を持っていますか?

カリヲリ これはライブをイメージして作っていただいた曲です。この曲も目まぐるしいほどにテンポチェンジがあって、予測不能なところが面白いです。1曲を通してまったく飽きがこない曲だと思います。最初から最後まで疾走感があるけど、落ちサビではなんだか壮大なイメージが湧いてくるという。

がるむ 本当にテンポチェンジがめちゃくちゃ多い曲で、1曲の中にいろいろな曲調があって盛りだくさんです。先行配信の音源を聴いたファンの方からも「テンポチェンジが好き」と言ってもらえたのが印象的でした。