ナタリー PowerPush - INORAN
デビュー25周年でなお続く「自分探しの旅」
INORANがソロとしては実に1年9カ月ぶりとなる新作ミニアルバム「Somewhere」を3月19日にリリースする。今作には過去のどの作品よりも生々しくてシンプルなロックナンバーが凝縮されており、現在のINORANがどのようなモードにあるのかをダイレクトに感じることができる。
LUNA SEAやMuddy Apesといったバンドでも活動するINORANも、今年5月にLUNA SEAのメジャーデビュー25周年を迎える。そんなベテランの域に達した彼が今、何を思ってロックンロールを続けるのか。そして40代に突入してから音楽活動がより活発化した理由は? 本人に話を聞いた。
取材・文 / 西廣智一 インタビュー撮影 / 佐藤類
シンプルな音楽の理由は「海外ライブと震災」
──今回のアルバム「Somewhere」をはじめ、INORANさんはここ何作かすごくストレートなロックを奏でていますよね。特に今作のサウンドは前作「Dive youth, Sonik dive」(2012年発売)、前々作「Teardrop」(2011年発売)よりも生々しく仕上がった印象がありますが、そのあたりは何か意図したものがあるんですか?
単純に言っちゃうと、音楽が持つ熱をみんなで共有するのにいい方法はないかなとこの数年思っていて、そう考えたときにたどり着いたのがこの音なんです。それはLUNA SEAでも自分のソロでも肌で感じたことで、まずは2011年に「Teardrop」っていうアルバムを作ったんですよ。でもその矢先に震災が起きて……あの震災をきっかけに「シンプルな音楽をもっとみんなと共有したい。音楽を通してもっと強くつながりたい」という思いがより強くなっていったというか。
──サウンドの装飾部分だけではなく、楽曲の構成自体もさらにシンプルな方向に向かっている気がします。
本当はもっとシンプルにしたいんですけど(笑)。いろいろ凝ったものにしちゃうのは昔からの癖で、今はかなり抑えてるほうなんです。最初に「Teardrop」を作ったときは自分の中にいろんな制約を設けて、意識的にシンプルなロックを作ろうとしたんです。そこからシングル「Hide and Seek」やアルバム「Dive youth, Sonik dive」と作品を重ねるごとに、直感でそういった曲が作れるようになった。それが今回の「Somewhere」でより自然にできるようになったのかな。
──なるほど。音像も「Teardrop」や「Dive youth, Sonik dive」と比べると、より太くなった印象があります。
そうですね。レコーディングには最近のソロツアーのバンドメンバーが参加していて、レコーディングスタッフもいつもと同じメンバーなので、作品を重ねるごとにシンプルな演奏でも太くて強い音が表現できるようになったんじゃないかな。より強く響き合えてるというか、そういう実感はありますよね。
僕やみんなが一緒に楽しめる場所
──ここ数枚のソロ作だけではなくMuddy Apesを聴いても感じることなんですが、最近INORANさんが作る曲や出す音から90年代初頭のUSインディロックのテイストが強く感じられて。特に今回はその色がより強まった印象があるんです。
うんうん。僕の音楽の原風景って、やっぱり80年代後半から90年代前半ですもん。だから絶対に影響が出るっていうか。90年代頭ぐらいのバンドが出してた、混沌としたサウンドが好きだしね。それが体に残っているっていうか。
──その時期って音楽的に変革のタイミングでしたよね。あの頃に肌で感じた衝撃を、今再びINORANさんのサウンドから感じられるというのも非常に感慨深いなと思うんです。
グランジなんてまさに「何かを壊したい」「恐れずに前へ進みたい」っていう音楽でしたし。今の活動において、その「恐れないで先に進むこと」と「太くてシンプルなサウンドのロック」が自分の中でイコールになってるんでしょうね。うん。
──「恐れないで先に進むこと」というのは、例えば震災も関係しているんでしょうか?
それはありますね。ちょっと大きな話になってしまうけど、あの震災を通じて感じたのは……やっぱり人として生きてる限り、それぞれ役割って絶対にあると思うんですよ。僕の役割は音楽を作る人、届ける人なのかなって。だからこそ、僕はどんどん前に進んで音楽を届けていかなくちゃいけないと思ってます。
──そしてINORANさんにはLUNA SEAという大きな存在があって、そこでの役割というものも1つある。LUNA SEAから自分が個に帰ったときに何ができるのか。その答えがこの「Somewhere」なわけですよね?
そうです。「Somewhere」を通じてINORANっていうもの自体を僕やバンドメンバーやスタッフ、そしてファンの方も一緒に楽しめる場所にしたいんです。
- ミニアルバム「Somewhere」/ 2014年3月19日発売 / KING RECORDS / KICS-93031
- 初回限定盤 [CD+DVD+写真集] 5775円 / KICS-93031
- 通常盤[CD] 1785円 / KICS-3031
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収録曲
- A Day Goes On By
- REDISCOVER ON ANOTHER
- Candy
- Song 3
- Sakura
DVD収録内容
- 「Sakura」Music Video
- ツアー情報
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INORAN TOUR 2014 -Somewhere-
- 2014年4月4日(金)
大阪府 BIGCAT - 2014年4月5日(土)
愛知県 THE BOTTOM LINE - 2014年4月12日(土)
東京都 LIQUIDROOM ebisu ※ソールドアウト - 2014年4月13日(日)
東京都 LIQUIDROOM ebisu ※追加公演
- 2014年4月4日(金)
INORAN(いのらん)
1970年生まれ、神奈川県出身のギタリスト / シンガー。5人組ロックバンドLUNA SEAのギタリストとして、1991年にメジャーデビュー。同バンドの活動と並行して、1997年にはソロアルバム「想」をリリースする。2000年のLUNA SEA終幕後からは本格的にソロ活動をスタートさせ、2002年にはロックユニット・FAKE?を、2005年にはRYUICHI(河村隆一)らとロックバンド・Tourbillonを結成。現在はソロ活動のほか、2010年に“REBOOT”と称して再始動したLUNA SEA、2012年にFEEDERのタカ・ヒロセ、8ottoのMAESON、FEEDERのサポートギタリストとしても活躍するディーン・テディと結成したフォーピースバンド・Muddy Apesと精力的な音楽活動を続けている。2014年3月、ソロとしては1年9カ月年ぶりとなる新作ミニアルバム「Somewhere」をリリース。