ナタリー PowerPush - THEイナズマ戦隊

超自信作「愛とファイター」堂々完成

ステージ前でワチャワチャしてくれてるやつらを忘れてた

──でも素朴な疑問なんですが、15年やってて、今までそういうファンの思いを感じる場面がなかったわけじゃないですよね?

上中 そうですね。でも、この歳になってやっと愛を語れるようになってきたんかなって。例えば、痛みを知ってわかることってあるでしょ? 本当にそれで。

写真左から久保裕行(Dr)、上中丈弥(Vo)

──その痛みとは?

上中 聞いたら引くで?(笑)

──一応お願いします。

上中 僕、バツ16やねん。

中田 いやいやいや(笑)。

上中 まあ、いろいろあるじゃないですか。これだけ音楽業界におったらレコード会社が変わることもあるし、友達のバンドが解散していくとか。闘い続けてるバンドマンにとっては、それはもうザクッ、ザクッって心が切り裂かれるようなもんなんですよ。でもね、そこで僕らがワーッてなりながらでも立ってこられたのは、支えてくれたお客さんのおかげやったなって思うし。そういうところですよね。

山田 今までは必死すぎて気付けなかったのかも。でも30代になってちょっと肩の力が抜けてきて。見渡してみたら、めっちゃ愛されてるやん!みたいな。じゃあ俺らは、カッコいいと思うものを思い切りやれたらそれが恩返しじゃないかっていう。

上中 そうやな。その「必死過ぎて気付けなかった」っていう感覚はある。期待されてメジャーデビューするからにはCDを広めなあかんっていうことに必死すぎて。ライブやってても、ステージ前でワーッて暴れてくれてるやつらのこと忘れて、後ろのほうで黙って観てる人らを動かさなあかんってことばっか考えるようになるんですよ。もう、本当にしょーもない!

──今振り返ると。

上中 うん。そりゃビジネスとしてやらなあかんことではあるけど、一番近くでワチャワチャしてくれてるやつらがおってこそ。結局はそのワチャワチャが一番強いんですよ。ナチュラルな感じがね。それを飛び越えて……っていうのはもう馬鹿げたことで。

山田 本末転倒ですね。

上中 そう、それやねん!

久保 ずっと観に来てくれてる人らが、「やっぱイナ戦に付いてきて良かった」と思ってくれるライブを続けていかないとって思うんで。今回はそういうのを実感して作れたアルバムですね。

愛でなんでも許されるんじゃないかって

──今作のリード曲「愛じゃないか」は、アルバムタイトルにも直結するナンバーですね。

上中 これは、さっき言ったような愛についてのことを歌詞にしたらこうなった、という曲です。

──すべてがサビなんじゃないかっていうくらい、心にズシンと沁みました。どんな環境や状況にいる人にも、必ず当てはまるような部分があるのかなって。

上中 そうですね。言葉だけでも全然成立するもんってあるじゃないですか。小説読んでても鳥肌立つことがあるし。だけど僕らはロックバンドやから。淡々としたメロディが続くんやけど、そこに言葉がバンってハマるだけでサビがさらに大サビになる……みたいな。

──聴いてると「愛じゃないか」っていう一節が魔法の言葉みたいに思えてきて。いい意味で「愛じゃないか」って言ってしまえば世の中すべてピースに過ごせるんじゃないかって。

上中 そう、そういうことなんですよ。「それ、愛やん!?」って。今日最悪やったなっていう日があっても、なんとなく仕事から帰っておにぎり食べると……これって自分に対する愛やん?みたいな(笑)。そう考えると悪いことなんか何もないっていう。

中田 「愛でなんでも許されるんちゃうか」っていうのは、僕も思うところがあって。中学高校時代とか、清志郎さんの歌を聴いてたら「わ、もう俺このままでいいんやー」って思わせてくれる曲とかがあって。そういう経験を、THEイナズマ戦隊が出してる音楽や丈弥の歌詞で誰かがしてくれるのはうれしいです。

久保裕行(Dr)

久保 THEイナズマ戦隊が始まるときの代表曲「応援歌」からいろんな経験を重ねて、この歳になって。どこかで、こういう本当にストレートな曲をやりたいと思ってたので、今回やれてうれしいです。この曲は、お客さんに届けられる自信がめちゃめちゃありますね。

──PVもすごく素敵で。浜辺で上中さんが1人渋みのある表情で歌っています。

上中 なかなかいいでしょう! これ、九十九里浜に深夜1時集合で。

山田 一応みんな行ってたんですけど、僕らは出番なしになりました。

上中 もう、俺ひとりのあれ一発でいいやってなっちゃったんです。

──最初から最後までワンカットで撮ってますよね? 上中さんの大人な佇まいはもちろん、目に力があって、すごくイケメンでした。

上中 そうでしょー(笑)。てことは、今日実際リアルで見るとそうでもないって?

写真左から山田武郎(G)、中田俊哉(B)

──いえいえいえ!

上中 3Dはこんなもんか、みたいな(笑)。

全員 (爆笑)。

上中 でもね、あの日の俺、妙に渋かったんですよ。

中田 寝てなかったからちゃう!?

上中 そう、目がイッてしもてんねん。

山田 スタッフさんの狙いかもしれへんぞ、それ。

上中 ほんまやな。あいつ寝かすな!って(笑)。

ニューアルバム「愛とファイター」

  • [CD] / 2011年9月28日発売 / SMALLER RECORDINGS / 2800円(税込) / SLRL-10003 / Amazon.co.jpへ
CD収録曲
  1. チケット!!
  2. ラッタッタ
  3. 涙のファイター
  4. 愛じゃないか
  5. 人情ビート
  6. 俺一代
  7. サンダーマン
  8. 愛しい日々さ
  9. 武蔵野ラプソディー
  10. スイートソウル
  11. 終りなき道
  12. 時代
THEイナズマ戦隊ニューアルバム
「愛とファイター」先行試聴会

配信日時:
2011年9月27日(火)19:00~20:00

再配信日時:
2011年9月28日(水)12:00~13:00

配信URL:
http://www.ustream.tv/channel/tesaguri-sma

ハッシュタグ:
#tesaguri / #愛じゃないか

THEイナズマ戦隊(ざいなずませんたい)

歌心あふれるメロディと力強いバンドサウンドが魅力の4人組ロックバンド。1997年に札幌で結成され、2002年8月にインディーズからミニアルバム「THEイナズマ戦隊」を発表。2003年2月にシングル「月に吠えろ」でメジャーデビュー。リリースに連動して年間100本を超えるライブツアーを敢行し話題を集める。また福岡の「HIGHER GROUND」などの大型フェスにも出演し、毎回好評を博す。2010年にSony Music Artistsが新たに立ち上げたSMALLER RECORDINGSに移籍。2011年9月に、通算8枚目となるアルバム「愛とファイター」を発表する。