音楽ナタリー Power Push - 稲葉浩志

5年半ぶりシングル発表 ソロ活動の意義とは

フレーズ(歌詞)のためのメロディ

──4曲目の「水路」はピアノとアコギを中心としたサウンドが印象的なバラードナンバーです。

これも歌詞だけが先にあったのかな。「もともとは水路だった」という場所を歩いてたときにチラッと書いたんです。

──そこから「一寸先の光 それもすぐ思い出になる」という人生の歌になっていった、と。

その場では、そこまで書いてなかったんです。思いついたことを書いておいて、それをあとから読んで、続きを考えながら歌詞にしていくというか。それがある程度のボリュームになったところでメロディを付けていく感じですね。

──やはり稲葉さん自身の個人的な思いを音楽につなげることが、ソロ活動の主軸なんでしょうか。

あまり考えてないんですよね、そこは。今はそういう感じなんですけど、(ソロ活動の)最初は違う作り方をしてたので。まず曲が先にあって、そこに英語や「ラララ」みたいな感じで歌って、最後に歌詞を付けていくことが多かったんですよ。

──今は歌の比重が上がってるということですか?

フレーズ(歌詞)のためのメロディという考えになってるのかもしれないですね。

「B'zはこうだからソロではこうやる」という気負いはまったくない

──では、稲葉さんにとってソロ活動を続けることの意義とは?

うーん……。それもあんまり考えたことがないんですよね。B'zとは違う面で「まだまだいろんなことができる」というのは感じていますけど、「B'zはこうだから、ソロではこうやる」という気負いもまったくないし、自然に2WAYでやってる感じですね。

──ソロ活動を始めた当初は、B'zとソロを分けるという意識もあったんですか?

そうですね。ソロをやってると「早くB'zやれ」って言われることもあるし、ときには「B'zと変わらないじゃん」と言われることもあるし。最初はそれがめんどくさく感じたりもしてましたけど、続けていると慣れてきて、なんとも思わなくなるので。今は「やりたいことがある以上はずっとやろう」と思ってますね。

稲葉浩志

──しかも、ソロとB'zの違いも少しずつ明確になっている印象があるんですよね。

特に意識しなくても、出てくるものは違うでしょうからね。B'zはやってる年数が長いから、そこで積み重ねているものがあるじゃないですか。さっきの“型”の話じゃないですけど、そこからはみ出すことにも力が必要なんですよ。B'zを求めている人にしっかり見せなくちゃいけないっていうのもあるし、そういう意味では重みが違うというか、だいぶ種類が違うんですよね。ただ、それも普段は意識してないです。冷静に考えるとそういうことだなって思うけど、いざレコーディングに入ったり、コンサートをやったりすると、そんなことはまったく考えてないので。

ソロライブの手応え

──今回のシングルの初回限定盤には、昨年のソロライブ「Koshi Inaba LIVE 2014 ~en-ball~」で日替わりで演奏した6曲の映像が収録されています。今振り返ってみると、2014年のライブの手応えはどうでしたか?

同じ場所で計10日ライブをやるということだったので、その中でいろいろと音楽に変化を付けて。それがすごく楽しかったんですよね。バンドメンバーも初めての顔合わせだったんですけど、いい意味での緊張感もあり、10公演の中で親密さも育まれて。充実してたなって、今映像を観ても思いますね。

──FUZZY CONTROLのJUONさん(G)、SATOKOさん(Dr)など若いミュージシャンも参加していましたね。会場の大きさを含め、スタジアムやドームで行うB'zのライブとはまったく違う雰囲気になりますよね。

そうですね。しかもソロの場合は、B'zみたいに誰もが知ってる曲がないですから。コンサートを構成するときに“シングル、シングル、シングル”みたいなこともないので、それを逆手に取って日替わりの曲もやれる。そういう柔軟さはソロのほうがありますね。

──会場の大きさによって、歌に対する意識も変わりますか?

キャパが増えると、単純に気を持っていく範囲が広くなりますからね。ホントは「どこでも変わらないです」と言いたいところですけど、広い場所でやると「あっちの奥は大丈夫かな?」とか感じるようになりますね、実際は。

──シングルのリリース後は全国アリーナツアー「Koshi Inaba LIVE 2016 ~enIII~」がスタートします。

バンドのメンバーが前回と同じなんですよね。気分としては「1つの場所でやってたメンバーと一緒に外に出て、グルッと全国回ります」という感じです。前回が非常に感触がよかったので、そこからさらに進化しなくちゃいけないというハードルの高さはありますけど、いいツアーにしたいですね。

Koshi Inaba LIVE 2016 ~enIII~

2016年1月16日(土)山梨県 アイメッセ山梨
2016年1月17日(日)山梨県 アイメッセ山梨
2016年1月22日(金)宮城県 セキスイハイムスーパーアリーナ
2016年1月30日(土)福井県 サンドーム福井
2016年2月6日(土)広島県 広島グリーンアリーナ
2016年2月7日(日)広島県 広島グリーンアリーナ
2016年2月11日(木・祝)愛知県 日本ガイシホール
2016年2月12日(金)愛知県 日本ガイシホール
2016年2月17日(水)福岡県 マリンメッセ福岡
2016年2月22日(月)兵庫県 ワールド記念ホール
2016年2月23日(火)兵庫県 ワールド記念ホール
2016年2月27日(土)新潟県 朱鷺メッセ・新潟コンベンションセンター
2016年3月3日(木)東京都 日本武道館
2016年3月5日(土)東京都 日本武道館
2016年3月6日(日)東京都 日本武道館
ニューシングル「羽」 / 2016年1月13日発売 / VERMILLION RECORDS
ニューシングル「羽」
DVD付初回限定盤 [CD+DVD] / 2400円 / BMCV-4016
Blu-ray付初回限定盤 [CD+Blu-ray] / 2400円 / BMCV-4017
通常盤 [CD] / 1500円 / BMCV-4018
ニューシングル「羽」龍が如く盤
龍が如く盤 [CD+DVD+Blu-ray] / 3200円 / BMCV-4019
CD収録曲(全仕様共通)
  1. Symphony #9
  2. BLEED
  3. 水路
初回限定盤DVD / Blu-ray収録内容

「Koshi Inaba LIVE 2014 ~en-ball~」より

  1. CAGE FIGHT
  2. AKATSUKI
  3. そのswitchを押せ
  4. なにもないまち
  5. 絶対(的)
  6. Salvation
龍が如く盤DVD / Blu-ray収録内容
(※DVDとBlu-rayは同じ収録内容)
  • Receive You [Reborn] 「龍が如く 極」ver. MUSIC VIDEO
  • 稲葉浩志×名越稔洋「龍が如く」シリーズ総合監督 スペシャル対談
稲葉浩志(イナバコウシ)

B'zのボーカリストとして1988年にデビュー。1989年に「BAD COMMUNICATION」のヒットで注目され、翌1990年に発表した「太陽のKomachi Angel」が初のオリコン週間ランキング1位を記録する。その後現在まですべてのシングルが1位を獲得し、歴代シングル首位獲得数、アーティストトータルセールス数などで歴代1位の記録を更新中。2007年にはその功績が認められ、アメリカのHollywood's RockWalkの殿堂入りという快挙を成し遂げる。ソロとしては1997年に初のアルバム「マグマ」でミリオンセラーを記録。その後数年おきに新作を発表しており、2014年は4年ぶりのアルバム「Singing Bird」をリリースし、東京・ステラボールで10公演のライブを行った。2016年1月13日に約5年半ぶりのシングル「羽」を発売後、全国アリーナツアーを開催する。