音楽ナタリー Power Push - いきものがかり
国民的グループが届ける“普通”というファンタジー
いきものがかりが、メジャーデビュー10周年を記念して「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」を3月15日にリリースする。この作品は、彼らの10年間の軌跡を詰め込んだCD3枚組(初回生産限定盤は4枚組)のベストアルバムだ。
老若男女からの幅広い支持を受け、J-POPシーンの最前線を長きにわたって走り続ける彼らは、今いったい何を考え、どこへ向かおうとしているのか。吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(G)、山下穂尊(G, Harmonica)の3名にじっくりと話を聞いた。
取材・文 / 大山卓也 撮影 / 笹森健一
「歌うまいね」がすべてになるのは違う
──「超いきものばかり」発売おめでとうございます。さっそくですが、いきものがかりにとってベストアルバムというのはどういうアイテムなんでしょうか。アーティストによっては過去の仕事をまとめることに乗り気じゃない方もいると思うんですが。
水野良樹 たぶん3人とも、ベストアルバムに対してはすごくポジティブですね(笑)。やっぱり聴いてもらってなんぼというか、今も名前は知ってるけどアルバムまでは手に取ったことがないっていう方が大多数だと思うので。とにかく1人でも多くの方に聴いてもらいたいってことばかり考えてるグループからすると、ベストアルバムはすごく大事な作品ですね。
──メジャーデビュー10周年を迎えて、昔を振り返る機会も多いと思いますが、自分たちが成長してきたという実感はあります?
水野 成長してるかどうかはちょっとわかんないです、ホントに。それぞれにたぶん進歩はしてると思うんですけど、それが果たして楽曲や歌に対してプラスになってるかどうかって、実は判断が難しいところで。
──というと?
水野 例えば吉岡とかは声のことなんでわかりやすくて、年月を経れば変わっていくし、技術も身に付いていくし。でもその変化が必ずしもプラスだけかっていうとね。
吉岡聖恵 そうですね。練習して歌い込んでいくことはできるけど、でもそれがいいことなのかどうかはわかんない。そこはすごく難しいところですね。
──「歌がうまいですね」って言われることが、必ずしも正解じゃないということ?
吉岡 そう、ホントそうなんですよ。聴いてる人の意識が「歌うまいなあ」ってところにいっちゃうのは違うと思うから。やっぱり「歌うまいね」って言われたら、そりゃあ人間だもの、うれしいですよ(笑)。でもそれがすべてになるのは違うんです。例えばすごく素朴な曲だったら、そういう曲として歌いたいし、大事なのは曲の物語や世界観を伝えることなので。
──メンバーは吉岡さんのそういう意識は共有してるんですか?
水野 横で見てて「大変だろうな」って思うときはありますね。吉岡は、自分を評価してもらうことを脇に置いてきてるんですよ。普通はボーカリストなんだから、歌ってる自分にすべての視線を集めることだってできるだろうし、それは別に悪いことじゃないんです。でも吉岡はそうじゃなくて、やっぱ曲が一番にある。まあ、いきものがかり3人ともそうかもしれないですけどね。
路上ライブで得た感覚
──デビューからの10年間で大きく変化したのはどんなところですか?
水野 自分たちの軸に対して自覚的にはなったんじゃないですかね。
──軸というのは?
水野 「自分たちのメッセージを曲に込め過ぎない」とか「聴いてくれる人が入ってこれる余地を作る」だとか。今はこうやって言葉で説明できるようになったけど、最初は自分たちのそういう特徴をよくわかってなかったから、そこを意識して曲を作るようになったことは、変化と言えるかもしれないですね。
──確かにいきものがかりは押しつけがましさが薄いですよね。
山下穂尊 僕ら、もともと路上ではなるべく引いてやるようにしてたんですよ。こっちがはっちゃけて演奏しててもお客さんは集まんないから。できるだけ引いたスタンスで。
──普通はもっとアピールして目立ったほうがいい気もしますが。
山下 自分たちの周りにはけっこうガツガツやってるグループもいたんですけど、通行人としての自分はそれを見てると引いちゃうんですよね。だから引き気味でやったほうが人は足を止めてくれるかな?みたいなことは考えてました。今みたいなちゃんとした会場でやるライブだと全然違いますけど。
吉岡 路上ではMCもほとんどなかったんですよ。曲タイトルを言って演奏するだけ。
水野 しゃべんなかったね。
吉岡 「チラシもらってください」ぐらい。
山下 チラシすら基本的には地面に置いといて、勝手に取っていってもらうっていう。
水野 渡しにいくと引かれちゃうんで。
吉岡 チラシの入れ物よく蹴られたよね。通行人の人にパーンとか蹴られて、ホントは路上に置いちゃいけないから当然なんですけど、それがちょっと切なかったりとかして。
──でもそのガツガツしてないところは、路上ライブだけじゃなく、いきものがかりの活動全般に通じるスタンスかもしれませんね。
水野 そうですね。路上ライブで得た、場の空気を読む感覚というか、聴いてる人の立場に立って考える姿勢っていうのは僕の中でずっと続いてて。曲作りもそうだし、ライブもそう。中学や高校のときを思い出すと、1人のアーティストのCDを全部集めてずっと追いかけてるような子がいる一方で、「そこまでファンじゃないけど、曲は好きだし聴いてるよ」っていう子もたくさんいた気がするんです。その感覚は自分の中にずっと残ってますね。
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- ベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」 / 2016年3月15日発売 / EPICレコードジャパン
- ベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」
- 初回生産限定盤 [CD4枚組] / 4800円 / ESCL-5555~8
- 初回仕様限定盤 [CD3枚組] / 3600円 / ESCL-5560~2
DISC 1
- SAKURA
- キミがいる
- 気まぐれロマンティック
- 茜色の約束
- あなた
- キラリ
- 帰りたくなったよ
- ふたり
- コイスルオトメ -激情編-
- 涙がきえるなら
- いこう
- なくもんか
- 心の花を咲かせよう
- 地球
DISC 2
- ありがとう
- じょいふる
- ブルーバード
- いつだって僕らは
- 翼
- 歩いていこう
- YELL
- GOLDEN GIRL
- Good Morning
- Sweet! Sweet! Music!
- 1 2 3 ~恋がはじまる~
- 東京
- 恋詩
- 熱情のスペクトラム
- マイステージ
- 会いにいくよ
DISC 3
- 風が吹いている
- 笑ってたいんだ
- ラブソングはとまらないよ
- NEW WORLD MUSIC
- うるわしきひと
- 夏空グラフィティ
- KISS KISS BANG BANG
- 花は桜 君は美し
- プラネタリウム
- LIFE
- ラブとピース!
- 真夏のエレジー
- 笑顔
- 夢題~遠くへ~
-No Fade Out ver.- - ぼくらのゆめ
DISC 4 ※初回生産限定盤付属
- ホットミルク
- 甘い苦い時間
- 二輪花
- 蒼い舟
- 月夜恋風
- 最後の放課後
- 夏色惑星
- おもいでのすきま
- オリオン
- my rain
- 赤いかさ
- ホントウノヒビ
- ハジマリノウタ~遠い空澄んで~
- 白いダイアリー
- ノスタルジア -Original Lyrics ver.-
いきものがかり「超いきものまつり2016 地元でSHOW!! ~海老名でしょー!!!~」
- 2016年8月27日(土)
- 神奈川県 海老名運動公園
- 2016年8月28日(日)
- 神奈川県 海老名運動公園
いきものがかり「超いきものまつり2016 地元でSHOW!! ~厚木でしょー!!!~」
- 2016年9月10日(土)
- 神奈川県 厚木市荻野運動公園
- 2016年9月11日(日)
- 神奈川県 厚木市荻野運動公園
いきものがかり
吉岡聖恵(Vo)、水野良樹(G)、山下穂尊(G, Harmonica)の3人組ユニット。1999年結成。当初は地元・神奈川での路上ライブを中心に活動し、2003年にインディーズで初CDをリリース。2006年に発売したメジャー1stシングル「SAKURA」がスマッシュヒットを記録し全国区の人気を獲得する。2007年3月には1stフルアルバム「桜咲く街物語」を発表。切なくて温かい等身大のポップチューンが老若男女問わず幅広い層から強い支持を集めている。2010年には初のベストアルバム「いきものばかり~メンバーズBESTセレクション~」をリリースし、ミリオンセラーを記録した。2012年にはNHKロンドンオリンピック放送のテーマソング「風が吹いている」でグループ史上最長となる7分40秒の大作に挑戦する。2014年12月に7thアルバム「FUN! FUN! FANFARE!」を発表し、2015年には2年ぶりの全国ツアー「いきものがかりの みなさん、こんにつあー!! 2015 ~FUN! FUN! FANFARE!~」を開催、25万人を動員する。同年11月に31枚目のシングル「ラブとピース! / 夢題~遠くへ~」をリリース。2016年3月15日にはメジャーデビュー10周年を記念するベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」を発表する。