音楽ナタリー Power Push - いい音で音楽を

special interview小西康陽 わたくしの“いい音”体験

小西康陽が選ぶ“いい音”のレコード10枚

キティ・ホワイト「Kitty White」

キティ・ホワイト
「Kitty White」

キティ・ホワイトはいわゆるナイトクラブで歌うようなジャズ歌手なんだけど、一時期フォーク的な音楽に寄っていたことがあって。このレコードはハープ奏者のコーキー・ヘイルという人と作ったアルバムで、「わたくしの二十世紀」でハープを弾いてくださっている斎藤葉さんもご存知で、同じ先生だとおっしゃってました。これはとってもいいレコードです。

Tilsley Orchestral「More Favorite Classical Themes Styled '67」

Tilsley Orchestral
「More Favorite Classical Themes Styled '67」

これはクラシックの有名な曲をモダンで聴きやすいアレンジにした、イージーリスニングのレコードです。録音はおそらくコンサートホールですね。雨の日にセックスをしながら聴くと最高(笑)。なーんつって。

バーバラ・ディクソン「Do Right Woman」

バーバラ・ディクソン
「Do Right Woman」

イギリスのフォークシンガーなんですけど、いくつかジェームス・テイラーの曲を取り上げていて、それがとてもいいんです。これはどこか、アメリカとは違う音質というか。雨の日感があるんですよ。湿度が高い。雨の日にセックスをしたくなるレコードですね。嘘です(笑)。

The George Shearing Quintet With String Choir「Here & Now!」

The George Shearing Quintet With String Choir
「Here & Now!」

これはまさに「いい音」の音楽。キャピトルのレコードはどれもオーディオ的に優れていて、ジョージ・シアリングは、ナット・キング・コールと並んで作品数が多いんですけど、中でもこれはハイファイで素晴らしい音ですね。2本のマイクを立てて録っていた、多重録音ではない時代の最高峰のレコードだと思います。

ジミー・レイニー「Strings & Swings」

ジミー・レイニー
「Strings & Swings」

これは誰も知らない最高のレコード。ジャズコンボで録ったものと、弦楽のカルテットで録ったものが半分ずつ入っていて、どちらもお蔵入りになっていたそうなんですよ。ストリングスのほうは先鋭的な現代音楽で、一方はすごくなめらかなイージーリスニングジャズ。A面とB面には12年の差があって、この人の人生を垣間見るようなレコードです。

ジェイク・サックレー「Jake's Progress」

ジェイク・サックレー
「Jake's Progress」

イギリスのロンドンではない田舎のほう出身の、素晴らしいソングライターです。僕ももし自分で歌うなら、こういうレコードが作りたい。彼の作品は向こうでは人気なんだけど、日本には全然入ってこなくて。なぜかと言うと、歌詞がひどいらしいんです。みなみらんぼうがつボイノリオの曲を歌っているような(笑)、そんな感じ。

メロディ・ガルドー「Worrisome Heart」

メロディ・ガルドー
「Worrisome Heart」

これはちょっと面白くて。LPで10曲入ってるんですけど、どっちも45回転なんですよ。2、3分の短い曲も多いとはいえ、入れようと思えば入るんですね。CDで作られた曲をアナログにするとキラキラ感が若干失われるんですけど、45回転にするとその部分が少し残るのかもしれない。その効果を狙っているのかな。

マテオ・ストーンマン「Mateo」

マテオ・ストーンマン
「Mateo」

前に神戸にあって、今は代官山にあるディスク・デシネさんがつい何年か前に作ったレコードなんですけど、これ、素晴らしい録音なんです。これを聴いて、どういうマイクの立て方で録るとこの音になるのか、自分のレコーディングでも試してみたんですよ。そしたらなんのことはない、ほんの5cmマイクを離しただけで、この音になるんです。マイクと楽器の間にある空気がどんなに大切かを教わったレコードです。

カレン・ダルトン「In My Own Time」

カレン・ダルトン
「In My Own Time」

僕がレコードをコレクションするようになったきっかけは1970年代のシンガーソングライターブームで、これはその頃から最高峰と言われていたレコードですね。昔、渋谷にブラック・ホークというロック喫茶の草分けみたいなお店があったんですけど、そのお店をやっていた音楽評論家の松平維秋さんが推していた100枚のうちの1枚で。松平さんはもう亡くなっているんですけど、PIZZICATO ONEで出した2枚のレコードは、松平さんに認めてもらいたいと思って作った音楽ですね。

PIZZICATO ONE「11のとても悲しい歌」

PIZZICATO ONE
「11のとても悲しい歌」

このジャケット、歌ってもらった人に1人ずつサインをもらっている途中なんです。日本に来てくれたときにもらいに行ってるんですけど、ロジャー(・ニコルズ)とか、The Peddlersのロイ・フィリップスとか、もらうチャンスはあるのかな。全部埋めることができるのか、それが楽しみです。

プロフィール

小西康陽(コニシヤスハル)

1959年、北海道札幌生まれ。1985年にピチカート・ファイヴでデビュー。豊富な知識と独特の美学から作り出される作品群は世界各国で高い評価を集め、1990年代のムーブメント“渋谷系”を代表する1人となった。2001年3月31日のピチカート・ファイヴ解散後は、作詞・作曲家、アレンジャー、プロデューサー、DJとして多方面で活躍。2009年にはアメリカ・ニューヨークのオフ・ブロードウェイで上演されたミュージカル「TALK LIKE SINGING」の作曲および音楽監督を務めた。2011年5月に「PIZZICATO ONE」名義による初のソロプロジェクトとして、アルバム「11のとても悲しい歌」を発表。2015年6月には2ndアルバム「わたくしの二十世紀」をリリースした。2016年8月にはピチカート・ファイヴの初期作品「couples」と「Bellissima!」のリマスター盤を、CD、アナログ、配信の3パターンで復刻リリース。また9月には、音楽を担当したHuluオリジナルドラマ「でぶせん」のサウンドトラックが発売された。

PIZZICATO ONE「わたくしの二十世紀」
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PIZZICATO ONE「11のとても悲しい歌」
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ピチカート・ファイヴ「カップルズ」
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ピチカート・ファイヴ「ベリッシマ」
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2016年12月21日更新