ナタリー PowerPush - ジェームス・イハ×the telephones
ニューヨーク音楽談義
自分もいくつか切ない恋をした
──では、歌詞を書く上で何からインスピレーションを受けますか?
イハ やっぱり個人的な体験やフィーリングだね。自分が普段考えてることや思ったことを素直に歌詞にしていくパターンが多いかな。曲の雰囲気やムードに合わせて、映画を作るようにストーリーを考えることもあるよ。そういう場合でも自分の経験が生かされるんだけどね。
石毛 なるほどなあ。僕、「Sound of Love」(アルバム「Let It Come Down」に収録)の歌詞が大好きで。いつかああいう歌詞を書きたいと思ってるんです。
イハ ありがとう。あれは切ない恋の歌だね。
石毛 はい。自分もいくつか切ない恋をしました(笑)。
イハ 僕も自分の経験からあの曲を書いたんだよ。
──ジェームスさんは、いい曲を作ることで、伝統的なポップミュージックの歴史を受け継いでいきたいという思いはありますか?
イハ そうありたいとは思ってるけど、普段はあまり意識はしてないよ。結果的にそうなったらいいなとは思ってるけど、とにかく曲を作るのは簡単な作業ではないからね。曲を作る工程を1つ1つをこなしていくことで精一杯だから。
自分の音楽はニューヨークと関係してる
イハ the telephonesはオーディエンスを踊らせる音楽を作っているんだよね。どういうアーティストに影響を受けたの?
石毛 the telephonesの場合は70~80年代のニューウェイブやポストパンクとかですね。あとはDFAレコーズ周辺のバンドからも影響を受けていると思います。
イハ へえー。僕もLADYTRONとかアニーらが好きで、彼らのリミックスもときどきやっているんだ。僕は自分にいくつか"引き出し"があると自覚しててね。ソロ名義では弾き語りで聴かせるような曲を作っているし、THE SMASHING PUMPKINSやA PERFECT CIRCLEではハードでラウドなギターロックをぶちまけてる。かと思えば、打ち込みやサンプリングを使用した作品にもっとチャレンジしてみたいと思っているし。ボーカリストをほかに立てて、自分は裏方に回るようなプロジェクトも好きなんだ。
──なるほど。
イハ それはニューヨークという町の多様性にも多少なりとも関係しているとも思うんだよね。ニューヨークには本当にさまざまなバンドやアーティストがいるからね。ジャンルも多岐にわたってるし、その数も多い。僕が最近プロデュースしたHUNTERSってバンドは男女混合でTHE KILLSのような感じでね、ヘビーでダウンチューニングで聴かせるような連中なんだ。それに、さっき名前が出たDFA界隈のアーティストもニューヨークを拠点にしてるし、ANIMAL COLLECTIVEのようなバンドもブルックリンを面白くしているよね。でも、僕はそういう環境の中で、どこにも属さないで柔軟に自分の音楽を表現したいと思ってるんだ。
ジェームスの横で踊りたい!
石毛 ニューヨークにはいろんな音楽の情報が得られるレコードショップがいっぱいありますよね。ブルックリンの「Acandemy」とマンハッタンの「Other Music」は滞在中に何度も行きました。僕、ジャズの要素が入った音楽も好きなんですけど、ニューヨークにはそういうバンドが多い印象を受けましたね。例えば、僕らが好きなTHE RAPTUREも、ジャズのフィーリングを匂わせるノーウェイブアーティストのジェームス・チャンスからの影響を受けていそうだし。
イハ ああ、「No New York」(※1978年にリリースされたコンピレーションアルバム)の影響だね。
石毛 そうです! 芸術性が高いけど暴力的な側面もある、というのがニューヨークの音楽の魅力だと思うんです。それって僕にとっての理想の音楽なんですよね。
イハ とにかくニューヨークで音楽活動をしている連中は、なんらかの形で自分の主義主張をしているし、こだわりも強い。ただ、よほどの個性じゃないと注目されないと思う。
石毛 それはニューヨークでライブをしたときに実感しました。でも、ちゃんと個性を出せば、オーディエンスも返してくれる。そういうところがいいなって。
イハ わかるよ。僕もプロデューサーとしての立場で見たときに、ちゃんと自分の個性がちゃんと出せるバンドに魅力を感じるな。自分たちが伝えたいことをちゃんとわかっていて、それを表現できるバンドに関わってみたいね。
岡本 じゃあ、ぜひ僕らのプロデュースも……。
イハ いいよ(笑)。
岡本 ほんとですか!? あと僕、ジェームスの横で踊ってみたいんですよ。それが夢なんです(笑)。
イハ 「EMI ROCKS」のステージで君が着ていた金色のシャツを僕にくれたら踊ってもいいよ。
岡本 ええっ! あげちゃおうかなあ。
イハ それは冗談として(笑)、いつか何か一緒にやれたらいいね。
石毛 ぜひよろしくお願いします! ところで、今後はずっとソロでやっていくんですか?
イハ ソロもやるしバンドもやるし、プロデュースもやっていこうと思っているし……。調整が大変なんだけど、さっきも話したように、できる限りいろんなことに挑戦していきたいと思ってる。
石毛 最後に、僕らに何かアドバイスをもらえますか?
イハ 君たちはもうちゃんとやりたいことができてるよ! 僕からは特に言うことはないなあ。バンドとして正しい道を歩んでいると思うから、とにかく自分たちを信じてがんばっていけばいいよ。
CD収録曲
- Make Believe
- Summer Days
- To Who Knows Where
- Till Next Tuesday
- Dream Tonight
- Dark Star
- Appetite
- Gemini
- Waves
- Speed Of Love
- 4th Of July
- A String Of Words
- Diamond Eyes ※ボーナストラック
- Stay Lost ※ボーナストラック
CD収録曲
- D.E.N.W.A
- swim, swim, swim
- sick rocks ~Too Fast version~
- WoNDeR WoMaN ~WoNDeR Boy version~
- HABANERO ~Bitter Sweet MIX by Akira Ishige~
- White Elephant ~So, Come on!!! version~
ジェームス・イハ
1968年3月生まれ、アメリカ・シカゴ出身のアーティスト。1987年にTHE SMASHING PUMPKINSの結成メンバーとして音楽活動を始める。1998年に1stソロアルバム「Let It Come Down」を発表し、ソングライターとして高い評価を獲得。2000年にTHE SMASHING PUMPKINSを脱退してからは、A PERFECT CIRCLEやTINTED WINDOWSのメンバーとしても活躍。さらに、バンド活動と並行して、ほかのアーティストのプロデュースや、映画音楽の制作なども手がける。2012年3月に14年ぶりとなる2ndソロアルバム「LOOK TO THE SKY」を発表。
the telephones(てれふぉんず)
2005年に埼玉県浦和にて結成されたロックバンド。メンバーは石毛輝(Vo, G, Syn, Programming)、岡本伸明(Syn, Cowbell, Shriek)、長島涼平(B, Cho)、松本誠治(Dr)の4人。ポストパンク / ニューウェイブにも通じるダンスロックサウンドで各地のフェスを席巻し、2009年にEMIミュージック・ジャパンと契約。同年7月にアルバム「DANCE FLOOR MONSTERS」でメジャーデビュー。2010年8月にはメジャー2ndアルバム「We Love Telephones!!!」、2011年10月には3rdアルバム「Rock Kingdom」を発表している。さらに同年12月23日にはバンド史上最大規模となるさいたまスーパーアリーナでのワンマンライブ「SUPER DISCO Hits FINAL !!! ~そして伝説へ~」も開催。ハイテンションなライブパフォーマンスは、ロックファンの熱狂的な支持を集めている。