踊るのも歌うのも大好きだった
──井口さんは今回音楽ナタリー初登場となるので、アーティスト活動を始める前のことも教えてください。ちなみに小さい頃、「オトッペ」のような子供向け番組をよく観る子供でしたか?
子供向け番組はいっぱい観ていましたね。ごっこ遊びとかも好きだったし、「おかあさんといっしょ」に出て踊るのが夢だったんですけど、夢叶わずで。家でひたすら踊っていました。
──踊るのが好きだったんですね。
踊るのも好きだったし、歌うのも好きでしたね。でもいつだったかお姉ちゃんと一緒にテレビを観ながら大声で歌ってたら、お父さんに「ヘッタクソだなあ」って言われて口を閉ざす時期もありました。まさか身内に打ちのめされて(笑)。
──そのあと音楽にはあまり触れてこなかったんですか?
家で音楽を聴くよりも外で走り回るのが好きだったので、学生時代は陸上部とかサッカー部に入っていて。でもまったく触れていなかったわけではなく、お姉ちゃんたちの好きな音楽を教えてもらっていましたね。私は三姉妹の末っ子なんですけど、長女は洋楽、次女は邦楽のロックが大好きだったんです。
──なるほど。そこから声優を志したきっかけは?
昔からアニメがすごく好きで、小学校中学年くらいからこういう仕事に関われたらって思っていました。声優さんの雑誌をお小遣いで買ってみて、こういう仕事があるんだって興味を持って。
──目覚めが早かったんですね。
そうですね。昔から目立つことも好きで、新聞の下に掲載されている子役募集の広告を切り抜いて集めて親に出してみたり。「やってみたいなー」と親に言っても聞き流されて、気付いたらその新聞も捨てられてたんですけど、そういうことを重ねているうちに「そんなに言うならチャレンジしてみるのがいいんじゃない?」と言ってくれて。親は「どうせ落ちるだろう」と思っていたらしいんですけど(笑)、中学生のときに声優の見習いを募集するオーディションに応募したのがきっかけで今の仕事を始めました。
──自分でつかみ取ったという感じですね。
たまたま運がよかっただけなんですけどね。でも誰かに言われて始めることと自分が興味を持って始めることってすごく大きな違いだと思うので、いろんなことに興味のある子供でよかったなと振り返って思います。
ファンの人たちと1対1の関係でありたい
──今年で声優15周年、アーティスト5周年を迎えられましたが、それぞれ活動当初と変わったことはありますか?
自分の物差しだけで見れば成長したなと思うことはあるんですけど、声優にしろアーティスト活動にしろ、私よりも大先輩がずっと活躍しているお仕事なので、意識の上で大きく変わったと感じることはあまりないんです。でも演じる役もちょっとずつ変わってきたり、幅が増えたりっていう変化を感じることはあります。あとは出会いが一番大きいです。お仕事でいろんな方と出会って、その縁がその場限りにならずに輪がどんどん広がっていって今があるなと思っていて。今日だけの付き合いみたいに思わずに、感謝の気持ちで接していると、何気ない出会いが10年後につながったり。自分自身が変化したというより、いろんな方との出会いで周囲の環境が変化したなと思います。
──井口さんにとって、声優活動とアーティスト活動はだいぶ違ったものなんでしょうか?
アーティスト活動ではキャラクターを演じて歌うのでなく、自分を表現して歌うので、最初はすごく戸惑いました。キャラクターソングだとその世界観がすでにあるけど、アーティスト活動となるとゼロから構築していく形になるので、自分がしっかりしていないと表現できない。アーティスト活動を始めたことが、改めて自分を見つめ直すきっかけにもなりました。
──5年経って、アーティストとして歌うことには慣れてきましたか?
やっと自分がすべきことをつかめてきたような気がします。これまでは提供された楽曲を歌うことに必死だったんですけど、今は「こうやって歌いたい」という気持ちが生まれてきているのが大きな違いであり、成長かなと思います。餅屋は餅屋と言うか、作詞家が作る歌詞が美しいし、作曲家が作るメロディが一番みんなが好きなものだと思っていたんですけど、つたなくても自分の中から生まれる言葉も自信を持って表現していっていいんじゃないかと思えるようになりました。そして表現したい自分があるからこそ、それをどうやって表現していくかがこれからの課題なんだろうなと思っています。
──具体的にはどういった自分を表現したいと思いますか?
“歌姫”とか“ザ・アーティスト”っていう存在になりたいわけじゃなくて、もっと身近な、近所のお姉さんとかクラスメイトみたいな感じで、みんなのそばにいられたらと思っています。そういうスタンスはずっと変わらないんですが、声優としていろんな役もやらせてもらってるし、歌も歌わせてもらってるし、今年で30歳だし、これからは近くにいるだけじゃなくて、もっと一緒に歩んでいったり、背中を押したりできるようになりたいです。
──7月8日には東京・片柳アリーナ、16日には大阪・Zepp Osaka Baysideでのアニバーサリーライブを控えていますが、今後の活動での目標はありますか。
基本的には大きいステージで、派手な演出でライブをやりたいというタイプではないので、やっぱり身近な存在であり続けたいです。どんなに人が多かろうが少なかろうが、1対1でしゃべっているような感覚で歌が歌えたらいいなと思います。自分がパーソナリティを務めているラジオでも、聴いてくれる人は各地にいるけど、“1対みんな”でしゃべっているというよりは1対1でしゃべっているように感じてもらいたいです。具体的な目標としては、昨年から今年にかけて行っていたツアー(2017年11月~2018年2月開催の「井口裕香 Fan Meeting Tour 2017 “Love”」)で全国7カ所を回らせてもらってすごく楽しかったので、今度は47都道府県を回れたらいいですね。
──ソロライブで「OH!OH!オトッペ」を披露することは考えていないのでしょうか? ファン全員を感染させて歌わせたり、踊らせたり。
あははは(笑)。いいかもしれないですね、検討します(笑)。ウィンディは着ぐるみショーでいろんなところへお邪魔させてもらっているので、まずそういうところでやれたらいいですよね。
──最後にお聞きしたいのですが、今後の「オトッペ」の展開で井口さんが期待していることはありますか?
今日の撮影でご一緒した人形とかグッズが増えてほしいです。お子さんだけでなく、誰が持っていてもかわいいと思うので。
──番組の内容についてはどうでしょう。
先日も声優として西島秀俊さんが参加することが発表されましたし、キャストも驚くような展開があるんですが、これからも新キャラや歌が増えて、新しい風が吹いたらいいなと思います(参照:Eテレ「オトッペ」に西島秀俊がゲスト声優で出演「ファンだったので嬉しい」)。番組の尺も増えたらいいですね。5分だからこそのよさもあるのですが、ゆくゆくは劇場版公開も目指したいです。「劇場版オトッペ 幻の音を探して」とか「劇場版オトッペ シーナ死す!」みたいなタイトルで(笑)。
- ウィンディ(CV:井口裕香)
「OH!OH!オトッペ」 - 2018年6月21日配信開始
- 収録曲
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- 「OH!OH!オトッペ」
- NHK Eテレ「オトッペ」
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- 放送情報
- 毎週月~金曜日 8:40~8:45
再放送:
毎週月~金曜日 17:55~18:00 / 日曜日 7:40~7:45
※放送日時は予告なく変更になる場合あり。 - ストーリー
- 世界一のDJを目指す主人公シーナはある日、不思議な扉をくぐって別の世界に迷い込んでしまう。そこは音から生まれた不思議な生き物・オトッペたちが暮らす「オトッペタウン」。シーナはこの世界で風の音から生まれたウィンディをはじめ、さまざまな音から生まれたオトッペたちと出会っていく。
- キャスト
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- シーナ:久野美咲
- ウィンディ:井口裕香
- メタルク / グラストン:千葉進歩
- ウッドウッド / フレイミー:木内秀信
- モータロン:渡辺明乃
- ペッペラーノ / ポトレイン / ナレーター:桐井大介
- ウォッタ:小原好美
- ドアモリソン / ウィンディパパ:大山鎬則
- カットン:浅野まゆみ
- エレキー:飯島肇
- 井口裕香(イグチユカ)
- 1988年7月11日生まれ。2003年にテレビアニメ「デ・ジ・キャラットにょ」のうさだあかり役で声優としてデビューし、2013年2月に「劇場版 とある魔術の禁書目録 -エンデュミオンの奇蹟-」のイメージソング「Shining Star-☆-LOVE Letter」でソロアーティストデビューを果たした。その後も「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」や「Lostorage incited WIXOSS」などさまざまなテレビアニメのテーマ曲を担当し、これまでにシングル9枚、アルバム2枚をリリース。ライブ活動も積極的に行っており、2017年1月には東京・中野サンプラザホールでの単独公演を成功に収める。2018年7月にはアーティストデビュー5周年を記念したワンマンライブを東京・片柳アリーナ、大阪・Zepp Osaka Baysideで開催する。