すれ違いざまに肩を当てられただけで1曲書ける
──ちなみに将来的に楽曲提供などへの興味は?
最近はかなりありますね。
──それこそ「TOKYO」みたいな曲をアイドルが歌うのとか、聴いてみたい気が。
やってみたい! 「TOKYO」は例の“十代の呪縛”があったからこそできた曲で。そのキツさをどうまぎらわそうかと思った頃から、自分を取り巻く苦しみを幽体離脱のように俯瞰するようなクセが付いちゃっていて(笑)。だから今も苦しいことがあると逆にドキドキしたり、何かめっちゃ面白いことが起きるんじゃないかと期待してしまう自分がいるんです。
──「無残な東京 東京賭博場だ」とか「そんでもって2020年 東京オリンピックは誰といて」といった歌詞からは、家入さんの持つボキャブラリーのユニークさが感じられます。
妄想好きなんですよ。例えば渋谷ですれ違いざまでガンと肩を当てられたら、「何? ひと言も謝らないの?」という感情から曲が作れちゃうぐらいに。「TOKYO」はまさに「マジで東京湾に沈んじゃえばいいのに」といった感情から書いた曲でしたね。
──あと、気付いたんですが、今回のアルバムで家入さんが書いた詞は、ざっくり言うと「ずっと」「もっと」「ギュッと」「グッと」みたいなニュアンスを含んだものが多い気がして……。
うわ、そうかも!……でもそれ、なんかすっごい“欲しがりさん”みたいでイヤだなあ!(笑)
“ビクター3人娘”の出会いと関係性
──「恋のはじまり」は家入レオ×大原櫻子×藤原さくら名義でリリースした楽曲のソロバージョンですね。
スタッフからソロバージョンを提案されたときはかなり抵抗があったんです。あの曲はやっぱりあの2人を主人公にして書いた曲だったから、それを私が1人で歌うのはどうなんだろうって。でも「ソロバージョンも聴いてみたい」というファンの方々からのメールやお手紙が多かったのも事実なので、喜んでもらえるのならばと思い直して歌ってみました。
──“ビクター3人娘”は公私共に仲良しで知られていますが、家入さんから見た3人の関係性とは?
3人だからこそこんなに仲がいいんだろうなあと思いますね。もちろんそれぞれに仲良しなんですけど、3人じゃなかったらここまで深い間柄にはなっていなかったかもしれない。さくらと櫻子は同い年で、私も1歳違うだけでほぼ同世代ですが、例えば2人共早々にドラマや映画で主演を経験しているし、歩んできた道が私とは少し違うんですよね。で、あの2人は2人で互いに正反対の性格で、そこにまた違った性格や活動をしてきた私がいることで、なんとも言えないバランスが成立しているような気がするんです。
──そもそも3人の関係性はどのように始まったんでしたっけ?
私がたまたまさくらのインディーズ時代のアルバムを聴く機会に恵まれて、「この子才能あるな」と直感したんです。その頃はもちろんまだ「Soup」も歌っていなくて、デビューして間もない時期だったと記憶してます。それでディレクターさんを通じて「一緒にご飯に行きたい」と伝えて、2人でリンガーハットに行ってちゃんぽんを食べたんです(笑)。
──なぜにちゃんぽん?(笑) で、櫻子さんとは?
らこちゃんとは「FNS歌謡祭」で一緒に「君がくれた夏」を歌う機会があって、そのとき、楽屋が一緒だったんです。で、「明日も」を大音量で流したら「聴いてくれてるんですか!?」って話しかけてくれて。
──家入さん、ナンパ師みたいですねえ(笑)。
あはははは!(笑) でもらこちゃんはもっとすごいですよ。本番が終わったあと楽屋で待っていてくれて、手紙をくれたんです! らこちゃんは天然の天使なんですよ。さくらとらこちゃんはコンベンションで一緒になって、3人がつながって、カフェでご飯したのが始まりでした。2人共本当に尊敬しているし、出会えてよかったし、3人でいられてよかったなって心から思っています。「恋のはじまり」は私がプライベートなところで2人をイメージして書き始めた曲で。正直、最初からレコード会社や事務所が絡んでいたら、ここまでリスナーの皆さんに向けてナチュラルに届かなかったと思うし、ここまで愛される曲にはならなかったと思います。あと何より私自身、こんなにスイートな歌詞は書けなかったと思う。2人が本当に大切な友達で、まず3人ありきで発信した曲だったからこそよかったんだと思いますね。
大いに打ちひしがれたり幸せになったりしながら、いろんな曲を作っていくべき
──2度目の2ndアルバムと言える「TIME」は、より多くの人に愛される可能性を秘めたアルバムだと思います。
ありがとうございます。ともかく自分としてはこれまでのファンはもちろんですけど、今まで家入レオにあまり興味がなかったリスナーにこそ、ぜひ聴いてもらいたいアルバムになりました。届いてほしいです。ただ売れる、売れないとは別の部分で、胸を張っていいと思えるアルバムができたと思っているので、例えすぐにパッと売れなくても、じっくりと多くの人へ行き渡って、長く聴いてもらえることができたらうれしいですね。これは「TIME」に限らず、これからの私の活動についても同じ思いです。早々と消耗してパッと散ってしまうのはイヤだなって。長く歌っていきたいんです。
──「TIME」を経た家入さんが、今後さらにどう楽曲のクオリティを追求して、どう自身の作家性を研ぎ澄ませていくのかが楽しみです。
それは私自身も興味があります。自分ではどうなっていくのか予想がつかないし。ただ、自分でこう言っちゃうのもなんですけど、今の私って、ちょっとしたきっかけがあったら一気にグンとステップアップできる時期にいると思う。今年で24歳だし、1人の人間としても、女性としても、いろんな経験をしているわけですよ。人知れず恋をして、それがうまくいったりいかなかったり、いろんなことがあるんですよ。でもそういう経験こそが自分をどんどん大きくしてくれるんだと思う。だから大いに打ちひしがれたり幸せになったりしながら、いろんな曲を作っていくべきなんだと思っています。
──そういう意味でも、二十代をどう駆け抜けていくかは重要ですね。
今は表現することで駆け抜けたい気分です。もしかしたら歌だけじゃないのかもしれないし。ベースはあくまでも音楽ですけど、いつかエッセイだって書いてみたいし。今はまだ結婚願望なんて一切ないけれど、男女の考え方の違いにも興味があるし。私自身は無宗教ですけど、思想や宗教についても興味があるし、お芝居や映像表現についても勉強してみたい。海外留学もしたいのですが、今はあまり日本を長く離れるわけにもいかないので、とにかく目の前のことからどんどんやっていこうかなと。やりたいことは無限大に広がっていますね。
──ちなみにもし留学するならば、どこへ行きたいですか?
今はアメリカのニューヨークかアフリカかな。ゴスペルに興味があるんです。技術云々ではなく、もっと心から歌える人になりたくて。やっぱりドリカムの吉田美和さんって改めてすごいなって思うんです。技術もさることながら、魂が震えるような歌じゃないですか。あと先日読んだあるアフリカについての本の中に、「あなたは白人のことを恨んだりしないの?」と聞かれたアフリカの人が「アフリカ人は許す民族なんだ」と答えるくだりがあって。その言葉が今でも心に残っているんです。そういうさまざまな思いに、いつの日か直に触れてみたい。そうすることで、きっと自分の歌もより深みを増していくはずなので。
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クリエイターからのメッセージ
- 家入レオ「TIME」
- 2018年2月21日発売 / Victor Entertainment
-
初回限定盤A [CD+DVD]
5292円 / VIZL-1311 -
初回限定盤B [CD+DVD]
3780円 / VIZL-1312 -
通常盤 [CD]
3240円 / VICL-64927
- CD収録曲
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- ずっと、ふたりで
[作詞・作曲・編曲:杉山勝彦] - 春風
[作詞:河田総一郎(Soulife) / 作曲・編曲:Soulife] - Relax
[作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴] - 恋のはじまり
[作詞・作曲:家入レオ / 編曲:山口隆志] - TOKYO
[作詞・作曲:家入レオ / 編曲:大西省吾] - アフターダーク
[作詞:家入レオ / 作曲・編曲:須藤優] - ファンタジー
[作詞:家入レオ / 作曲:本間昭光 / 編曲:nishi-ken] - ありきたりですが
[作詞・作曲:杉山勝彦 / 編曲:坂本昌之] - だってネコだから
[作詞・作曲:家入レオ / 編曲:山口隆志] - パパの時計
[作詞・作曲・編曲:尾崎雄貴] - 微熱
[作詞:家入レオ / 作曲・編曲:本間昭光] - 祈りのメロディ
[作詞:家入レオ / 作曲:須藤優 / 編曲:須藤優、佐々木望(Soulife)] - 大事なものすべて
[作詞:尾崎雄貴 / 作曲:尾崎雄貴、クリストファー・チュウ / 編曲:尾崎雄貴、Pop Etc]
- ずっと、ふたりで
- 初回限定盤A DVD収録内容
-
家入レオ 5th Anniversary Live at Zepp 2017.9.7 at Zepp DiverCity映像
- サブリナ
- lost in the dream
- Kiss Me
- Silly
- Party Girl
- 恍惚
- Lay it down
- 君がくれた夏
- love & hate
- イジワルな神様
- ひと夏の経験
- 少女A
- だってネコだから
- 純情
- Bless You
- Hello To The World
- 僕たちの未来
- Shine
- ずっと、ふたりで
- サブリナ
- 初回限定盤B DVD収録内容
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- Relax (Music Video)
- Relax (Making Movie)
- 春風 (Short Film)
- 春風 (Music Video)
- 恋のはじまり (Recording Document)
- 家入レオ 6th Live Tour 2018 ~TIME~
-
- 2018年5月3日(木・祝)東京都 オリンパスホール八王子
- 2018年5月12日(土)大阪府 大阪国際会議場 メインホール
- 2018年5月13日(日)大阪府 大阪国際会議場 メインホール
- 2018年5月19日(土)広島県 上野学園ホール
- 2018年5月20日(日)香川県 サンポートホール高松 大ホール
- 2018年5月26日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール
- 2018年6月1日(金)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
- 2018年6月2日(土)北海道 音更町文化センター
- 2018年6月9日(土)神奈川県 パシフィコ横浜 国立大ホール
- 2018年6月16日(土)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
- 2018年6月22日(金)三重県 三重県文化会館 大ホール
- 2018年7月1日(日)東京都 東京国際フォーラム ホールA
- 家入レオ(イエイリレオ)
- 1994年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。幼い頃から音楽に親しみ、13歳のときに自ら音楽塾ヴォイス福岡校の門を叩き、同塾の主宰者である西尾芳彦に師事する。2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャーデビューを果たし、同年「第54回 輝く!日本レコード大賞」で最優秀新人賞を受賞。以降もコンスタントにリリースを重ね、2016年7月に4thアルバム「WE」を発表した。デビュー5周年を迎えた2017年4月に初の東京・日本武道館公演を開催し、2018年2月にはニューアルバム「TIME」をリリースする。