音楽ナタリー Power Push - 家入レオ
10代の葛藤を超えてたどり着いた“2度目の1stアルバム”
家入レオが4枚目のアルバム「WE」をリリースした。10代最後の年に制作された前作「20」からおよそ1年4カ月ぶりとなる本作では、全12曲中11曲でサウンドプロデューサーとして多保孝一が参加。これまで以上に解放感のあるポップサウンドが特徴の楽曲群からは、20代を迎えた家入の成長と新たな一面が感じ取れる。音楽ナタリーでは、本作が完成した経緯や多保とのコラボレーションについて、家入にじっくりと語ってもらった。
取材・文 / 内田正樹 撮影 / 押尾健太郎 スタイリング / 小松嘉章 ヘアメイク / KUMI
パンケーキを食べただけで驚かれた
──アルバム聴きました。なんかむちゃくちゃ開けていて驚きました。
そうですね。自分でもそう思います。
──まずパーンと開けた感じが何よりも正解だと感じたのですが、この方向性は自分から意識して持っていったのですか? それとも自然にこうなった?
特に努めて明るい部分を出そうとか、開けたことをしようとはあまり思ってはいなかったんだけど、いろんな要因が混ざって自然とそうなった、というのが合っているのかな。まず1つには、このアルバムにも収録されている「君がくれた夏」を、去年シングルリリースしたときの反響がすごく大きかったことがありました。本当に、自分でもびっくりするぐらいの反響をリスナーの皆さんからいただくことができて……。
──それが自信になった?
なりましたね。すごくうれしくて。ちょうどその頃って、私に関わるスタッフさんやマネージャーさんがチームごとガラッと入れ替わった時期だったんですね。それで「君がくれた夏」の勢いを受けて、「これからレオはどうしていきたい?」とスタッフさんに聞かれて、話し合う時間をかなり重ねました。新しいチームの人たちは本当に親身になってくれる人たちで「どうしたい?」とか「もっと新しいことに挑戦してみては?」とか遠慮なくぶつかってきてくれて。でも最初のうちは私のほうがなじめなくて「なんで出会ったばかりでそこまで言われなきゃならないんだろ?」とか思ってケンカ腰になっちゃって(笑)。
──出た、家入レオのお家芸とも言える“上から目線”(笑)。確かデビューのきっかけとなった「音楽塾ヴォイス」の門を叩いたときも、先生に向かって「あなたは私に何を教えてくれるんですか?」と聞いてしまったんですよね。
もう、よくないですよね(笑)。自分としては素で不思議だから言っちゃっているんですけど。でもそうした話し合いの中で、スタッフの皆さんから「アーティストとしての顔もいいけど、こうして普段から接しているプライベートに近い家入レオも魅力的だと思うよ?」と言われたとき、なんかフッと肩の力が抜けたんですよ。私は17歳でデビューして、しかもそのデビュー曲が「サブリナ」だったこともあって、どうしても悩める思春期というか鬱屈とした部分ばかりにスポットが当てられがちになってしまって。それこそ「友人と一緒にパンケーキ食べに行って……」と言うだけで、ファンの中には「えっ!?」と驚きの声を上げる人がいて(笑)。
──パンケーキを食べただけでびっくりされる(笑)。
「やだ、これちょっとヤバい!」と私のほうが驚いちゃって(笑)。だからこれまでの歌の世界はそれとして別にウソでもなんでもないんですけど、「いや、家入も明るくハジけることぐらいあるんですよ?」という面は、もっと出していきたいなと思って。だから明るくなったというよりも、明るい面もそうじゃない面もようやく全部見せるタイミングがやって来たんだと思います。
発見だらけだった多保孝一コラボ
──そんな家入さんの新たなモードに大きく貢献しているのが多保孝一さんですね。
はい。いろんなプロデューサーの人と曲作りにトライをしてみた中で、多保さんとは一番フィーリングが合ったので、アルバムまでご一緒していただきました。私にはデビューから一貫して「スタイリッシュな音楽がやりたい」というのがテーマの1つにあるんですね。その“スタイリッシュな音楽”にはいつの時代も輝きを失わずに古びないというスタンダード性というのが重要だと思っていて、だからThe Beatlesやシェリル・クロウといった音楽も好きで聴いてきたんですが。
──はい。
でもデビューして福岡から上京してみると、いろんなカルチャーが私の中に入ってくるし、ライブハウスに足を運んでインディーズのバンドを観ればたくさんの刺激も受けるんです。そうすると、アウトプットしたいことがどんどん増えてきて。そんなときに多保さんと出会えて、すぐにビビビっときたんです。「あ、これだ。今私がやりたい音楽は」って。
──多保さんとのコラボレーションの中での発見は?
発見だらけでした。自分が作るメロディラインも、多保さんと一緒にやってみたことで変わりました。そうすると自然と歌い方も変わってきたし、レコーディングしてミックスを終えたトラックを聴くと「うわーっ」と思いましたからね。あと多保さんはすごく実績のある方なのに、絶対に自分を押し付けない。私がまずどうしたいかをすごく尊重してくれるんです。「そこまで丁寧に扱ってくれなくても……」と思うぐらい。だから普段なら「ん?」と思う提案も、多保さんからだったら「まずは聞いてみようかな」と思えるぐらい信頼しています。
──多保さんと最初に作った曲は「Hello To The World」だったそうですね。
はい。この曲はスタジオに入って1日で原型ができて、レーベルや事務所のスタッフさんに「シングルを切りたい」と自分からお願いしました。
──僕は2月にZepp Diver Cityで行われた家入さんのライブ(「家入レオ LIVE at Zepp 2016 ~two colours~」)を観たんですが、アンコールで「Hello To The World」を初解禁しましたよね? 正直に言うと、あのとき「ん、これはいいんだけど、ちょっと多保さん色に寄っているのでは?」と感じたんですよ。
ああ、なるほど。
──でも今回アルバムのほかの曲を聴いたら、その感想が自分の中で一掃された。コラボレーションの相手として、すごく相性がいいんだなあと。
うれしいです。「Hello To The World」は一緒に作った最初の曲だったし、私もやや多保さん寄りという感触はちょっとだけありました。多保さんのカラーってメロディからものすごく強く出ますからね。でも家入レオにはこういう曲があっていいと思ったし、何よりこの曲を作ったことで、多保さんからも「もっと家入レオを理解して曲を作りたい」と言っていただいて、一緒に飲みに行ったり、たわいもない日常の会話を重ねることができました。すると互いの距離がどんどん縮まっていって、次に「僕たちの未来」という曲ができたんです。
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- ニューアルバム「WE」2016年7月6日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3672円 / VIZL-986
- 通常盤 [CD] 3132円 / VICL-64588
CD収録曲
- 僕たちの未来
- Brand New Tomorrow
- 君がくれた夏
- 恍惚
- Party Girl
- I Wish
- we
- Hello To The World
- シティボーイなアイツ
- さよなら Summer Breeze
- そばにいて、ラジオ
- Every Single Day
-Bonus Track-
- オバケのなみだ
初回限定盤DVD収録内容
Live at Zepp DiverCity 2016.2.2 ~two colours~
- サブリナ(Acoustic)
- miss you
- Still
- Lady Mary
- Last Stage
- Silly
- 君がくれた夏
- 希望の地球
- サブリナ
- Hello To The World
Music Video
- 「僕たちの未来」 Music Video -Another version-
- 「Hello To The World」 Music Video -Another version-
ツアー情報
家入レオ 5th LIVE Tour 2016 ~WE|ME~
- 2016年9月17日(土)埼玉県 三郷市文化会館 大ホール
- 2016年9月21日(水)新潟県 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館
- 2016年9月24日(土)兵庫県 たつの市総合文化会館赤とんぼ文化ホール 大ホール
- 2016年9月25日(日)広島県 JMSアステールプラザ
- 2016年9月30日(金)北海道 幕別町百年記念ホール
- 2016年10月1日(土)北海道 札幌市教育文化会館 大ホール
- 2016年10月8日(土)宮城県 イズミティ21 大ホール
- 2016年10月10日(月・祝)神奈川県 秦野市文化会館 大ホール
- 2016年10月16日(日)千葉県 君津市民文化ホール
- 2016年10月18日(火)長野県 駒ヶ根市文化会館
- 2016年10月22日(土)島根県 出雲市民会館
- 2016年10月29日(土)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
- 2016年10月30日(日)静岡県 焼津文化会館 大ホール
- 2016年11月3日(木・祝)和歌山県 紀南文化会館
- 2016年11月4日(金)滋賀県 守山市民ホール
- 2016年11月6日(日)大阪府 大阪国際会議場 メインホール
- 2016年11月12日(土)岡山県 倉敷市芸文館
- 2016年11月13日(日)山口県 周南市文化会館
- 2016年11月19日(土)福岡県 福岡サンパレスホテル&ホール
- 2016年12月10日(土)東京都 東京国際フォーラム ホールA
家入レオ(イエイリレオ)
1994年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。幼い頃から音楽に親しみ、13歳のときに自ら音楽塾ヴォイス福岡校の門を叩き、同塾の主宰者である西尾芳彦に師事する。2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャーデビューを果たし、同年「第54回 輝く!日本レコード大賞」で最優秀新人賞を受賞する。以降もコンスタントにリリースを重ね、2016年7月に4thアルバム「WE」を発表した。