音楽ナタリー PowerPush - 家入レオ

ハタチの実像

家入レオが3rdアルバム「20」を2月25日にリリースする。今作はシンガーソングライターとして、1人の女性として成長した彼女の姿を感じられるアルバムになっている。ナタリー3度目の登場となる今回のインタビューでは、アルバムに込めた思いを語ってもらうとともに、ハタチになった心境や音楽に捧げた半生を振り返ってもらった。

取材・文 / 三宅正一(ONBU) 撮影 / 田附勝

マシュマロみたいなアルバム

──「20」は家入さんの確かな成長を感じさせるアルバムだと感じました。ご自身でもこれまでの2枚と違う感触がありますか?

家入レオ

ありますね。私の中で何が一番違うかと言うと、伝え方が変わったんですね。17歳で1stアルバム「LEO」をリリースしたときに「レオちゃんの曲を聴くときは心の準備をしないとすごく傷付く」って言われたことがあって。それが自分のカラーなんだろうなと思っていたんですけど、今回のアルバムを作ってるときにふとその言葉を思い出して、今の私が歌いたいことは「LEO」のときみたいに誰かに対して敵対心を剥き出しにすることじゃないなって思ったんですよね。今までは「コンコン」って私の心の扉をノックしてくれた人に対して、もう、番犬みたいな勢いで「ワンワン!」って吠えてたんです。そういうファイティングポーズを取っていた。でも、今はノックしてくれる人に対して、「中に入ってお茶でもどうですか?」って言える余裕を持てるようになったというか、音楽的にももっと気軽に聴いてもらえるものにしたいと思うようになって。

──意識的に心を開放しようとした。

そう。だからこのアルバムって見た目が柔らかそうなマシュマロみたいだなって思うんです。でも、口にしたらすっごく硬い石みたいなものが中に入ってるんですけど(笑)。例えば、握手しようと差し伸べられた手をバシッて叩く人なんていなくて、「家入レオが手を差し出してくれたから握手してみようかな」と思うのかなって。今回は相手と握手した瞬間、一緒に私の空間に連れていくような……そういうアルバムです(笑)。そうしようと思ったのは、ライブの影響が特に大きくて。やっぱりライブは鏡なんですよね。私が楽しそうにしていればオーディエンスのみんなも楽しそうにしてくれる。だからこそ、もっと自分から手を差し出してみようと思ったんです。

──本作でレオさんは作詞と歌唱に専念してますね。作曲をすべて人に任せようと思った理由はなんだったんですか?

1年に1枚のスパンでアルバムをリリースしていると、だんだん作り溜めていた曲もなくなってきて。でも、言葉を大事にしたいということだけは絶対に譲れないと思って歌詞は書いていきました。13歳のときから西尾(芳彦)プロデューサーと曲作りしてきて、2ndアルバム「a boy」まではみんなに認めてもらいたいという気持ちで作曲をしていたんです。でも、自分が求められていることにもっと応えたいという気持ちが強くなってきて、西尾プロデューサーをはじめ曲を提供してくれる方たちの力を素直に借りたほうがいいなと思ったんです。私の音楽を届けたいという思いはみんな一致してるわけだから。

──もっとチームを信頼するというか。

そうです。絶対に自分で作曲もしなきゃいけないという感覚でリリースしてると、私自身がすり減ってしまって音楽活動が早いうちに終わってしまうなとも思ったから。もちろん、今後も作曲は続けていこうと思ってます。

グレーゾーンを認められるようになった

──アルバムの中でも、初めてシングルでバラードに挑戦した「Silly」の存在は大きいと思うんですが、いかがですか?

そうなんですよ! この曲で私は自分のグレーゾーンを認められるようになったんです。その前のシングル「純情」までは、がんばったらがんばった分だけ結果が付いてくるものだと思ってたし、答えが出るものだと思ってたんですよ。だから、私は他人の曖昧な態度や答えに対して当たりが強かったんですね。それは私がまだ子供だったからというのもあるんですけど。「Silly」の歌詞を書いていく中で、「なんで人は失敗したり間違えてしまうんだろう?」って考えたんです。それで、もし人が完璧であるなら誰かを傷付けたり傷付くこともないけど、笑うこともないなって思ったんですね。でも人は完璧じゃないから、がんばっても叶わないこともあるし、傷付きもする。その傷に愛が染み込んでやっと人の優しさがわかるのかなって。そう思ったときに、「私は“グレーゾーンの歌”を書いてもいいんだ」と思えたんですよね。

──喜怒哀楽では表せない感情がそこにあって。

そう。今までの私の歌詞は「はい、これは怒り、はい、これは哀しみ」っていう感じで、喜怒哀楽で分けることができていたと思うんですね。でも、今作の1曲目の「miss you」は「Silly」を作ったあとに書いたんですけど、この曲にある「笑ってもない 泣いてもない 静かに僕を見つめる君が」という歌詞は、言ってしまえば空っぽの状態なんです。どの感情にも属していない。この歌詞を書けたときに自分の歌のグレーゾーンを確実に見つけられたと思えたんです。そこに私自身の成長を感じることができて。

──表現の多面性につながった。

家入レオ

そう思います。ホントは「Silly」を書いた前の私に戻りたいという気持ちもあるんです。あの頃は愛が全部解決してくれると思っていたけど、今は愛だけじゃ足りないのかもしれないって思うようになったから。今はすごく渇いてるんだけど、どうやってその渇きを潤せばいいのか全然わからなくて。それは今も探してます。ただ、今の自分が不幸になったというわけではなくて。13歳のときの私は音楽があれば生きていけるって信じていて、あのときは無邪気に音楽で満たされてたんですよね。でも、今はこうして自分がいろんな人に支えてもらいながら音楽と生きている現実に満足できてない。それは私のアーティストとしての欲だと思うし。この欲をどう満たしたらいいかわからないけど、少なくともグレーゾーンを歌えばいいと思うようになったことは成長したのかなって。

──それがハタチの家入レオの実像であると。

そうですね。このアルバムを制作していたのは19歳のときでしたけど、当時はハタチになった今以上にハタチを意識していた気がするんですよ。「ハタチになったら」って毎日言ってましたし(笑)。だから、アルバムタイトルが「20」になったのも必然なんですよね。

ニューアルバム「20」2015年2月25日発売 / Victor Entertainment
初回限定盤 [CD+DVD] 3672円 / VIZL-780 / Amazon.co.jp
通常盤 [CD] 3132円 / VICL-64300 / Amazon.co.jp
CD収録曲
  1. miss you
  2. little blue
  3. Silly
  4. lost in the dream
  5. 心のカ・タ・チ ~Another Story~
  6. TWO HEARTS
  7. For you
  8. 純情
  9. Still
  10. love & hate
  11. 勇気のしるし
  12. Last Song
  13. Silly -Another Version-(※通常盤ボーナストラック)
初回限定盤DVD収録内容
  • 「miss you」Music Video(Another ver.)
  • SELECTIONS from "LEO IEIRI LIVE 12/13 ~thanks 2014~ @新木場STUDIO COAST.
    1. 純情
    2. Silly
    3. 勇気のしるし
    4. miss you
    5. Message
  • Photo Session & Music Video Making Movies
家入レオ 4th ワンマン Tour ~20 twenty~
  • 2015年5月4日(月・祝)東京都 日比谷野外大音楽堂
  • 2015年5月9日(土)北海道 サッポロファクトリーホール
  • 2015年5月16日(土)宮城県 Rensa
  • 2015年5月23日(土)広島県 BLUE LIVE HIROSHIMA
  • 2015年5月24日(日)香川県 高松オリーブホール
  • 2015年5月30日(土)福岡県 福岡市民会館
  • 2015年5月31日(日)鹿児島県 CAPARVO HALL
  • 2015年6月4日(木)石川県 金沢EIGHT HALL
  • 2015年6月12日(金)栃木県 エニスホール
  • 2015年6月14日(日)愛知県 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール
  • 2015年6月21日(日)静岡県 三島市民文化会館ゆぅゆぅホール
  • 2015年6月24日(水)茨城県 鹿嶋勤労文化会館
  • 2015年6月27日(土)兵庫県 三田市総合文化センター 郷の音ホール
  • 2015年6月28日(日)大阪府 大阪国際会議場 グランキューブ大阪
  • 2015年7月4日(土)東京都 渋谷公会堂
uP!!! presents MUSIC SHOWER チュートリアルの徳ダネ福キタル♪SPECIAL LIVE
  • 2015年3月8日(日)東京都 豊洲PIT
    <出演者>
    家入レオ / 鴬谷フィルハーモニー / KEYTALK / NICO Touches the Walls / UNISON SQUARE GARDEN / RIP SLYME
    MC:チュートリアル / ニコル
家入レオ(イエイリレオ)

家入レオ1994年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。幼少時代にピアノを習い始め、小学校時代は合唱部に所属するなど幼い頃から音楽に親しむ。13歳のときに自ら音楽塾ヴォイス福岡校の門を叩き、同塾の主宰者である西尾芳彦に師事する。圧倒的な存在感を放つ透明感あふれる歌声、強い意志を感じさせる詞世界が魅力。2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャーデビューを果たし、10月に1stアルバム「LEO」を発表した。同年「第54回 輝く!日本レコード大賞」で最優秀新人賞を受賞する。2014年2月に2ndアルバム「a boy」を、11月にはTBS系ドラマ「Nのために」主題歌に採用されたシングル「Silly」を発表。2015年2月に3rdアルバム「20」をリリースし、5月4日の東京・日比谷野外大音楽堂を皮切りに全国15カ所を回るワンマンツアーを実施する。