ナタリー PowerPush - 家入レオ
こだわりを脱ぎ捨て、大人になる
自分で作ることにこだわらない
──今も話を聞いていて思うのは、ホントに視点がニュートラルになりましたよね。
そう思います。1stアルバムのときは自分の中で叫びたい言葉やなんとも言えない気持ちが渦巻いていて、曲も自分で作ったものじゃないとヤだったんです。でも、ライブをしてるときに、自分が作ったかどうかじゃなくて、いい作品をリリースしていくことが大事なんだなと思って。今回のアルバムは西尾(芳彦)プロデューサーの作曲だけのものも何曲か入ってるんですけど。
──そう、それは僕も聞きたかったことで。先ほどの「a boy」しかり、クレジット上では前作より西尾さんの割合が増えましたよね。
そうなんです。1stアルバムのときも西尾さんから「これ歌ってみる?」って言われた曲もあったんですけど、「やっぱり私は今の自分が叫びたい思いがあるし、気持ちを込めて歌えないなら西尾さんにも失礼だからやめておきます」って断っていたんですよね。でも、今はたとえ西尾さんのみで作曲した曲でも私が感じたことを歌詞にすればいいし、それを歌う時点で自分の思いは込められるなと思っていて。これは自分の思いが表現できないなと思ったら歌わなければいいだけで。自分で作ることにこだわりすぎて船を沈めたくないなって。そこもすごく自由になりましたね。
──2ndアルバムでそう思うってかなり早熟だと思いますけどね。
でも、西尾さんとは13歳から一緒に曲を作ってますから。
──ヘビーなロックサウンドで自由を描く「Free」やセクシュアルな描写が印象的な「Kiss Me」には驚くリスナーも多いでしょうね。
この2曲は特にライブを意識しましたね。ホントは「Free」や「Kiss Me」を今回のアルバムを入れるのは待ってほしいってスタッフに言われたんですよ。
──まだ早いって?
そう。私のイメージを考えてのことだと思うんですけど。でも大人になることを決意するうえで、こういう曲も絶対に必要だと思って。大人になるってきれいなことだけじゃないと思うから。今まで知らなくていいよって大人が守ってくれていた部分を自ら知っていこうとすること。大人になるということは、今度は私が守る側になるかもしれない。そのときに自分が知っておかないといけないことってたくさんあると思うんですよ。だとすると、きれいな歌ばかり歌っていられないなと思うし。普通の感覚からするとそんなにとんでもないことを歌ってるわけではないと思うんですけど、これまでの家入レオを考えると「Free」や「Kiss Me」は、「こんなことまで言っちゃうのか?」という驚きがあると思います。でも「絶対に入れさせてください!」とお願いして。
──戦った。
最後まで戦いましたね。特に「Kiss Me」はかなり直接的な表現をしているので。「ここを変えてもらえない?」って言われた部分もあったんですけど、「いや、これはこのままでいきます」って。
自分のルーツをたどった「カーニバル」
──「カーニバル」もすごくいいですね。
「カーニバル」! この曲は私もすっごく気に入ってる1曲で。
──バロックポップっぽいサウンドしかり、世代を問わない音楽的な豊かさがある曲だなと。
ありがとうございます。うれしいです。
──この曲の歌詞もセクシュアルなニュアンスを帯びてますよね。
え、ホントですか?
──深読みした僕がスケベなだけですかね?(笑)
わからないですけど(笑)、私的にはそういう意味で書いたんじゃなくて。自分のルーツをたどれた1曲になったなと思うんです。私、無宗教なんですけど、カトリック系の幼稚園と中高に通っていたので、毎朝礼拝するときに賛美歌を歌ったり、聖書を読んでたりしていたんです。そうするとエデンの園や原罪に対する思いが無意識に備わっていって。上京してからちゃんとニュースをチェックするようになって、すごく悲しいけど子供が親を殺してしまったり、親が子供を殺してしまったというニュースがたくさんあって。そのときに愛ってナイフと一緒なんだなと思ったんです。人を優しい気持ちにもできるし、殺めてしまう理由にもなる。ナイフもおいしいごはんを作れる道具にもなるけど、人を殺す道具にもなるじゃないですか。人間が理性を失ってしまったときに、その道具を使い分けることができなくなる切なさをどう表現しようか考えたときに、最初はもっとエレキギターを強調したヘビーなサウンドにしようかなとも思ったんですけど、カーニバルという祝祭の中で男女が駆け落ちする物語を描くことで、華やかさの中にある切なさが際立つようなサウンドのほうがいいなと思ってこういうアレンジになったんですね。
精神力はまだ4歳
──本作が10代最後のアルバムになると思うんですけど、20代で追い求めたいことはなんですか?
精神力、ですね。まだ4歳くらいの精神力なので。
──こうして話していると、ホントにしっかりしてるなと思うんだけどな。
デビュー前からそばにいてくれたマネージャーさんに「あなたは30歳と4歳が一緒にいるのよ」って言われたことがあって。そう言われるまでは、そのことを自覚していなくて、さっきまで笑っていたのにいきなり泣いたり、感情の起伏が激しかったんですけど、「30歳と4歳が一緒にいる」って言ってもらってからすごく楽になって。でも、それってすごくアンバランスだと思うから、もっと精神力を鍛えて、いい意味でテキトーになりたいですね。全部自分でしようとしちゃダメだなって。すべてのことを100%自分でできたらいいけど、現実的には不可能ですから。人に任せるところは任せて、私がやるべきことは曲を作って歌うこと。音楽にもっと集中できるように精神力が欲しいです。
──ツアーも楽しみですね。
すっごく楽しみです。早く暴れたいなって。ツアーは約2カ月間あるんですけど、常にその日の私が最先端なので、その間にだいぶ私自身が変わると思うんですよね。今を作らずに未来の自分は描けないので、一歩ずつ今の自分と音楽を大切にすることで、家入レオの未来像を作っていきたいです。
- ニューアルバム「a boy」2014年2月19日発売 / Victor Entertainment
- 初回限定盤 [CD+DVD] 3570円 / VIZL-641
- 通常盤 [CD] 3045円 / VICL-64121
iTunes Storeにて配信中!
CD収録曲
- Lay it down
- 太陽の女神
- a boy
- Too many
- Message
- Time after Time
- チョコレート(Album ver.)
- Free
- イジワルな神様
- Kiss Me
- カーニバル
- 希望の地球
- Papa & Mama
- 君に届け
初回限定盤DVD収録内容
- 君に届け(Music Video)
- a boy(Music Video)
- SELECTIONS from 2ndワンマンTour~Kimi ni Todoke~」(Second Dream / 太陽の女神 / サブリナ / ミスター / Message / キミだけ)
特典映像
- 君に届け (Music Video マルチアングル)
家入レオ(いえいりれお)
1994年生まれ、福岡県出身の女性シンガーソングライター。幼少時代にピアノを習い始め、小学校時代は合唱部に所属するなど幼い頃から音楽に親しむ。13歳のときに自ら音楽塾ヴォイス福岡校の門を叩き、同塾の主宰者である西尾芳彦に師事する。圧倒的な存在感を放つ透明感あふれる歌声、強い意志を感じさせる詞世界が魅力。2012年2月にシングル「サブリナ」でメジャーデビューを果たし、同年10月に1stアルバム「LEO」を発表した。「第54回 輝く!日本レコード大賞」で最優秀新人賞を受賞する。2013年11月発売のシングル「太陽の女神」の表題曲はドラマ「海の上の診療所」主題歌に使用された。2014年1月にシングル「チョコレート」を、2月に2ndアルバム「a boy」を発表。