アイドルネッサンス×小出祐介(Base Ball Bear)「前髪がゆれる」対談|オリジナル曲で踏み出した未来への一歩

アイドルネッサンスの未来を見据えた「前髪」

──では最後の曲「前髪」について。

原田珠々華

原田 ちょうどさっきレッスンが終わったあと、ハイレゾで完成版を聴かせてもらったんですけど、みんな感動して大号泣しちゃって(笑)。「これがアイドルネッサンスだな」って思いました。この曲が一番私たちのことを表している曲なんじゃないかと思ったし、背中を押されたような気持ちになりました。歌詞に「文集に載せた将来の夢は」とありますけど、私、昨日の夜に卒業文集を読み返してみたら「歌で幸せにできる人になりたい」って書いてあって。

小出 すごい。俺、幼稚園のときの文集には「改造人間になりたい」って書いてありましたよ(笑)。

原田 「前髪」の歌詞は小出さんにしか書けなかったんじゃないかと思いますし、この曲をこれから歌っていけると思うとそれだけでうれしいです。私たちを支えてくれる曲になるんじゃないかと思います。

百岡 「前髪」は今までのアイドルネッサンスのすべてが詰まった曲だと思っていて。今まで私たちのことを見てくれていた皆さんにもわかってもらえると思うし、私たち自身もより感情が表に出せる曲になると思います。あと、歌詞に「歯の矯正つらかったけど やってよかったな」ってありますけど……。

新井 あの、あれって私たち(百岡と新井は歯列矯正中)のことを書いているんですか?

小出 あまりメタにしすぎたくなかったんですけど、ここは意識しています。アイドルネッサンスは現在進行形のグループで、2人の矯正みたいに、今はまだ結果が出てないけど、将来「あのときやっておいてよかったな」と思えることがきっとたくさんあると思うんです。アイドルネッサンスの活動そのものについてそう思えるのが、将来的に一番の幸せなんじゃないかなと。

アイドルネッサンス一同 はあーっ!

宮本茉凜

宮本 また泣きそう。

小出 今のアイドルという職業を見ていて、その刹那的な部分というのも、確かに魅力の1つとしてあるとは思うんです。でも一方で、例えば10代半ばから20代半ばぐらいまでアイドル活動をしたとして、それを“女の子のいちばん輝いている時期”みたいな括り方がされたり、自分で括ってしまったりするのは、わからなくはないけど、何かが違う気もしていて。だって、そのあとのほうが人生は長いじゃないですか。いちばん輝く時期が今かどうかはわからないのに。でも、ファンの方の「こうあって欲しい」という思いを叶えながら、いろんな制約を守りながら、生身の自分も削りながら、輝きのピークを信じて求めていくわけですよ。それに熱狂する気持ちは十分にわかりながらも、同時に儚い……と言えばカッコいいけど、残酷だと感じている自分もいて。どうしてそこまでするんだろうと考えたりしちゃうんですけど、今後悔したくないだろうなというのもすごくわかる……複雑なんですけど、だからアイドルを応援する立場として僕は、今も応援しつつ、僕らが目撃することができる今より将来、きっと幸せな人生を送っていてほしいと願ってるんですね。アイドルのように激しい輝きではなくても、人として穏やかな光を感じられていてほしいなと。例えば、結婚してお子さんが生まれたときに「お母さん、昔アイドルをやってたんだよ」と話せたら素敵だと思うんですよ。今を消耗戦にさせないというか、この時間が将来の自分の支えや応援になればいいなと。なので、「前髪」は今の皆さんのこともイメージしているけど、将来の皆さんのことも想像して書いた曲です。「今の私たちを歌った曲だ」と思ってくれるのも嬉しいし、将来的にもっと意味が出てくる曲になってくれたらいいなと思います。

──“魔法”を失ったと感じた頃に、また別の感慨が押し寄せてくるかもしれない。

小出 そうですね。アイドルネッサンスがどこまで続くかわからない、60歳になっても続けるのも超アリだと思ってるんですけど(笑)、いつまでも歌える曲があるといいなと思って。だから今回の作品には即時的な曲はあえて作らなかったんですね。ほかと横並びの見せ方をしても仕方ない。ただ、このあとはどんな曲が来てもいいと思うんですよ。次のシングルは超アッパーな曲でも全然いいと思う。ぶりっ子しまくる曲でも面白いと思うし。シングルを出してアルバムを出して……ある程度メンバーの年齢感が変わってきたとき、振り返るとこの「前髪がゆれる」というEPがアイドルネッサンスの下地になっている、いつでも帰って来られるようなオリジナル1枚目にしたかったんです。そして、ここから新たにアイドルネッサンスの物語が動いていくだろうということこそ、最初に話した、これまでのグループコンセプトをにじませてまでオリジナル曲を歌い始める意義なんじゃないかなと。「決まらない前髪を / また風が乱してゆく / いつまでも私たちきっと / 決まることなんてないんだろう」というフレーズには、そんな気持ちも重ねました。

新井 すーっ。すーっ。

石野 最後は息をつく暇もありませんでした(笑)。

前髪は命

──皆さんほかに何か、小出さんに聞いておきたいことはありますか?

原田 なんで「前髪」ってタイトルになったんですか?

小出 女の人って、すごく前髪を気にするじゃないですか。アイドルの方も「前髪が決まんないなあ」とか「ちょっと前髪がアレだから」ってよく言ってますよね。友達の女性が言ってた話で……今20代半ばくらいの子なんですけど、自分が小さい頃のホームビデオが出てきたんですって。どこかに家族旅行に行ったときの映像で、1歳ぐらいの自分がお母さんと映ってる。それを観たお母さんの第一声が「(自分の)前髪……」だったんですって。20数年前の映像を観て、最初の感想が「前髪が気に食わない」って、なんか面白いなと。「女の人は一生前髪で悩むんだな」と思ったのが、あのサビにつながりました。

原田 なるほどー。

石野理子

石野 でも前髪は命ですよ。

──ライブのときは前髪を気にしている暇もないですよね。

宮本 後ろを向いたときに急いで直したりしてます(笑)。

比嘉 MC中とかね。

原田 MCのとき気にしすぎてめっちゃ怒られたことがあります(笑)。

石野 曲を作るとき、私たちのYouTubeをめっちゃ観てくださったって聞いたんですけど、私たち3年でたくさん撮ってるので、どのぐらい観てくださったのかなって。

小出 くっそ観ましたよ。ブログもくっそ読みましたし。

アイドルネッサンス一同 えーっ!!

小出 みんな恥ずかしいこと書いてんなーと思って(笑)。

新井野本 うわー! 嫌だー!

小出 「将来恥ずかしくなるのかなー」って思いながら読んでましたよ。いや、僕も10代でバンドを始めてるから、超昔のブログの文章を拾ってきて読んでる人がいたりするわけですよ。それにめちゃくちゃ傷付いてるんだけど(笑)、皆さんはまだその最中にいるんだろうなあと思ったり。動画も3年撮られ続けてるわけでしょ? すごいよね。日常的にカメラが回ってるわけですもんね。

百岡 もう意識してないです。

南端まいな

小出 1500本以上あるんですよね。これを編集し続けている人がSMAのどこかにいると思うと恐ろしい。地下に幽閉でもされてんじゃないのかっていう(笑)。映像もだいぶさかのぼって観ましたよ。ライブ映像よりも、移動車の中とか、メンバーの素が見える映像をたくさん観ました。「石野さんが全然映らないな」とか「南端さん、カメラめっちゃ好きだなあ」とか。

南端以外全員 あー。

小出 「あー」なんだ(笑)。

新井 あざとい。

南端 恥ずかしい……。

小出 でもこうしてCDを作り終えて、皆さんのことをこんなに考える時間も終わりなのかと思うと、少しさみしいですね。

アイドルネッサンス「前髪がゆれる」
2017年8月8日発売 / T-Palette Records
アイドルネッサンス「前髪がゆれる」

[CD]
1500円 / TPRC-0165

TOWER RECORDS

Amazon.co.jp

収録曲
  1. 交感ノート
  2. Blue Love Letter
  3. 5センチメンタル
  4. 前髪
  5. 交感ノート(inst)
  6. Blue Love Letter(inst)
  7. 5センチメンタル(inst)
  8. 前髪(inst)

全曲[作詞・作曲:小出祐介 / 編曲:イイジマケン]

ライブ / イベント情報(※終了分は割愛)

アイドルネッサンス サマーツアー 2017「君と夏を交感するネッサンス!! ~Road to Brand New Dawn~」
  • 2017年8月10日(木)東京都 新宿BLAZE
  • 2017年8月12日(土)宮城県 darwin
  • 2017年8月13日(日)愛知県 伏見JAMMIN'
  • 2017年8月20日(日)大阪府 umeda TRAD
アイドルネッサンス「前髪がゆれる」リリースイベント
  • 2017年8月8日(火)東京都 タワーレコード錦糸町店
  • 2017年8月9日(水)東京都 新宿マルイメン 屋上
  • 2017年8月11日(金・祝)千葉県 イオンモール幕張新都心 グランモール1F 屋外グランドスクエア
  • 2017年8月14日(月)大阪府 タワーレコード梅田NU茶屋町店
  • 2017年8月14日(月)大阪府 あべのキューズモール3F スカイコート
  • 2017年8月19日(土)東京都 ららぽーと豊洲 シーサイドデッキ メインステージ

アイドルネッサンス×マンガ家西村ツチカ ナタリーストア オリジナルグッズ販売中

アイドルネッサンス
アイドルネッサンス
ソニー・ミュージックアーティスツ設立40周年を機に立ち上げた初のアイドルプロジェクトとして2014年1月に始動。候補生13名でスタートし、同年5月より宮本茉凜、百岡古宵、石野理子、南端まいな、比嘉奈菜子、新井乃亜、橋本佳奈の7名が正式メンバーとなった。古今の名曲を独自の歌とダンスで表現する“名曲ルネッサンス”をテーマに活動し、同年7月にはBase Ball Bearのカバー「17才」、11月には東京スカパラダイスオーケストラと村下孝蔵のカバー「太陽と心臓 / 初恋」を自主制作シングルとしてリリース。12月よりタワーレコードのアイドル専門レーベルT-Palette Recordsに所属し、2015年3月に初の全国流通盤となるシングル「YOU」を発表した。同年9月に橋本がグループを卒業し6人体制に。2016年3月に1stアルバム「アワー・ソングス」をリリースしたあと、6月には野本ゆめか、原田珠々華の2名が新メンバーとして加わった。2017年4月、レギュラー公演「アイドルネッサンスを届けるネッサンス!!」にて、小出祐介(Base Ball Bear)が手がけるグループ初のオリジナルソング「交感ノート」を初披露。8月にはオリジナル楽曲のみ4曲を収録したミニアルバム「前髪がゆれる」を発表した。
小出祐介(コイデユウスケ)
小出祐介
1984年12月9日、東京生まれのアーティスト。2001年にBase Ball Bearを結成し、高校在学中から東京都内のライブハウスを中心に活動を始める。2006年4月にミニアルバム「GIRL FRIEND」でメジャーデビューを果たし、2010年1月には初の東京・日本武道館単独公演を成功に収めた。バンドのみならず作詞・作曲家としても活動し、アップアップガールズ(仮)、東京女子流、チームしゃちほこ、南波志帆、山下智久、KinKi Kidsら多数のアーティストに楽曲を提供している。Base Ball Bearは2017年4月には最新オリジナルアルバム「光源」をリリース。8月に発売されたアイドルネッサンス初のオリジナルシングル「前髪がゆれる」では全4曲の作詞・作曲を手がけている。