I Don't Like Mondays.|失われた週末に鳴らされるバンドの新境地

一緒にやりたいプロデューサー第1位

──そして9月に配信された「MR.CLEVER」は、STYさん(三代目 J SOUL BROTHERS from EXILE TRIBE、三浦大知、宮野真守などの楽曲を手がけるクリエイター)がプロデュースを担当。洗練されたダンスチューンに仕上がっていますが、STYさんとタッグを組んだ経緯は?

YU プロデューサーの方に入ってもらって、僕ら以外の要素を持ち込んでもらうことで、今までにない化学反応が見たくて。メンバー、スタッフと一緒に候補を挙げていく中で、ぜひ一緒にやりたいと思ったのがSTYさんだったんですよ。たまたま僕がInstagramでつながっていたから、「一緒にやりたいプロデューサーさん第1位です。ぜひお願いしたいです」とダイレクトメッセージを送って(笑)。すごく喜んでくれたし、実は僕らも知らなかったんですけど、STYさんは僕らのライブに来てくれていたみたいで。彼自身もバンドの楽曲プロデュースはやったことがなくて、「ぜひ!」と言ってくれて、トントン拍子に進みました。まず自分たちから曲の原案となるものを送って、好きなように料理してもらいました。1年前だったらできなかったでしょうね、こういうやり方は。

KENJI そうだね。

YU 過去にもプロデューサーの方を入れたことがあったんですが、うまくいかなかったんですよ。僕らのこだわりが強すぎて、うまく進めることができなくて。「だったら、全部自分たちでやったほうがいい」と思うことが多かったんです。今はバンドとしてのクリエイションも成熟してきたし、ある程度自信がついてきたからこそ、むしろそれを「壊してみたい」と思うようになったというか。

──音楽的なスタイルが固まってきたからこそ、外部のプロデューサーを入れる意味があると。

YU そうですね。自分たちが作ったものにこだわらない、というこだわりが生まれたというか(笑)。

CHOJI(G)

KENJI STYさんのアレンジ、めちゃくちゃよかったしね。デモの段階ですでに「この音、めっちゃタイプです」っていう(笑)。当たり前ですけど、打ち込みがめちゃくちゃうまいんですよ。

YU テンション上がったよね、聴いた瞬間。

KENJI そうそう(笑)。STYさんが普段手がけられているアーティストの場合、もっと音を重ねることが多いんですけど、僕らはもともと、音数を抑えて、1つひとつの音をよいものにしたいという考え方で。それもしっかり理解してくれて、「ここから削っていきましょう」と言ってくれて。

YU 理解し合えた状態で、お互いに一番カッコいいと思うものをぶつけ合うというか。ライブに足を運んでくれてたこともあって、僕らのことをわかってくれていたのが大きいですね。

──理想的なコラボレーションですね。

CHOJI そうだと思います。最初のアレンジがとにかくよかったから、削ぎ落していく作業もなんの心配もなかったし、しっかりバンドの色に落とし込んでくれて。

SHUKI 7月に出した「Sunflower」の経験も大きかったですね。ニューヨークのGreat Good Fine Okにプロデュースしてもらったんですが、そのときも丸投げに近い状態で。それがうまくいったことで、「このやり方もいいな」と思えたので。

性格が悪いんですよ、僕は(笑)

──「MR.CLEVER」の歌詞もインパクトがありますね。「胸にあるアンサー 誤魔化してステップアップ スマートに生きてくよ」もそうですが、すごく率直でリアルな言葉が並んでいて。

YU 僕という人間が一番出ている歌詞だと思います。「モンスター」と同じ流れで、きれいな言い回しではなくて、あまり人に言いたくないことを歌っていて。人間の美しくない部分にフォーカスしてるんですよね。

KENJI 最初にこの歌詞を読んだとき、「YUっぽいな」と思いました。今まで一番YUが出てるし、ちゃんと刺さる歌詞になっていて。

YU ひねくれてて、性格が悪いんですよ、僕は(笑)。

──そんなことはないと思いますが(笑)、“クレバー”にはいろんなニュアンスがありますからね。“スマート”だったり、“ずる賢い”だったり。

YU ホントにそういうふうに生きてるんですよ(笑)。ただ、社会に出ていろんな人間関係を経験している人だったら、同じようなことを感じてると思うんです。むしろ、この曲に共感できない人とは仲良くできない気がする(笑)。

CHOJI (笑)。しかもメロディと歌詞がバチっと合っていて、すごくキャッチ―なんですよね。料理していると、ふと頭に歌詞が浮かんだり。

SHUKI(Dr)

SHUKI 僕もすごく好きですね、この歌詞。そもそも「MR.CLEVER」は、「2020年の自分たちの代表曲になる曲を作ろう」というところから始まったんです。そのためにはどういうビジュアルがいいか?ということも話したし……その結果がスーツだったんですけど、自分たちのキャラクターを全面に出せる曲にしたくて。そういう曲に乗ってる歌詞としてピッタリだなと。きれいすぎないし、ちょっとひねくれてるけど、すごくポップで。いい意味でバンドらしくないのもいいですね。「大事なこと リスクのヘッジ」とか。

──「リスクを恐れず、正面突破だ!」みたいなのがロックバンドの王道のイメージですからね。

YU そういう感じに憧れもあるんですけど、僕にはそんな勇気がないし、強くもないので。でも、僕みたいな人は世の中にいっぱいいるはずで、そういう人たちと共鳴できたらいいかなって。歌詞の中で「君もそう? 同じかい?」と書いてるんですが、「このバンドは自分と同じようなことを感じてるんだな」って、少しでも救われたらいいなと。

──ただ、皆さんにも「ここは譲れない」という強い思いもありますよね。サウンドは絶対にカッコよくないとダメだ、とか。

YU 確かにサウンドはカッコよくないと嫌ですね(笑)。ただ、最近は「俺ってダサいな」と思っていて。

KENJI (笑)。

YU それをそのまま歌詞にすればいいと思えるようになったんですよ。それを隠してカッコ付けると、さらにダサくなっちゃうなって(笑)。ダサい自分、弱い自分をカッコいい音に乗せたいし、それが今やりたいことなんですよね。

音楽を枠にはめたくない

──プロデューサーとの関わり、歌詞を含めて、大きな変化の時期を迎えているのかも。

KENJI そうですね。ここまでガラッと変わるとは思ってなかった(笑)。

YU でも、結成した頃とデビュー後でも全然違うからね。僕らの音楽を枠にはめたくないし、自分たちで縛りたくないんですよ。The Rolling Stonesみたいなバンドもすごくカッコいいし、憧れもあるんですけど、自分たちはかなり飽き性だし、好奇心も旺盛なので。どんどん新しいことにトライして、違うなと思ったら、また変えればいいんじゃないかなって。僕だけじゃなくて、みんなもそういうタイプだと思うんですよね。……女の子に対してもそうなんですよ、俺。

KENJI 何の話だよ(笑)。

──(笑)。付き合っている女の子にもどんどん変化してほしい?

YU そうそう(笑)。サウンドも歌詞も、どんどん新しいことにトライしたいですね、このあとも。

──期待してます! ちなみに最近はどんな音楽に興味があるんですか?

YU 以前よりもJ-POPをよく聴くようになりましたね。米津玄師さんや星野源さんのサウンドはすごいなと思うし、改めてMr.Childrenを聴き直して「やっぱりいい歌詞だな」と思ったり。

SHUKI そういえば「モンスター」の歌入れのとき、「桑田佳祐さんみたいな雰囲気で歌ってみて」って言ってたよね。

YU 今までなら絶対出てこなかった話だよね。

KENJI 若い世代にもすごい人たちが出てきていて。藤井風さんを聴いたときは「マジで天才だ」と思いました。

YU Vaundyもカッコいいよね。……こうやって素直に言えるようになったのも、自分としては成長ですね(笑)。

──(笑)。CHOJIさんはどうですか?

CHOJI ネリー・ファータドのアルバムを聴き直してますね、最近は。自分の発想にはないサウンドの組み合わせがあると、聴きたくなるので。

YU クラシックの譜面は?

CHOJI やってる。好きなクラシックの曲の譜面を取り寄せて、オーボエやトランペットの楽譜を確認してるんですよ。

KENJI すごいよね(笑)。

SHUKI 僕は海外のプロデューサーのスタジオワークをYouTubeでチェックしてますね。ミックスの勉強にもなるし。

YU 常にアップデートしないとね。10月、11月、12月にリリースする新曲も、シングルの表題曲にぴったりの自信作ばかりなので、反応が楽しみです。ツアーはしばらくできそうにないから、家でじっくり聴きながら楽しんでほしいなと。

──オンラインライブの予定は?

KENJI 今考えてますけど、普通のライブではできない面白いことをやりたくて。

YU ライブハウスで演奏している映像だけでは、リアルのライブに劣るじゃないですか。オンラインならではの楽しみ方をしてもらわないと、配信をやる意味がないので。自分たちも意義を感じられて、観ている人にも楽しんでもらえる配信ライブに向けて、最大限トライしたいですね。

I Don't Like Mondays.