音楽ナタリー Power Push - i☆Ris

そして武道館アーティストになった

澁谷梓希インタビュー

最後の賭けだったオーディション

──今、澁谷さんはファッションブランド・KINGLYMASKのモデルやデザイナーをしたり、DJをしたりしていますよね(参照:SUPERBREAK番外編に飯田里穂、田所あずさ、遠藤ゆりか、i☆Ris澁谷)。

はい。

──そんな活動の基盤に声優アイドルグループ・i☆Risがあるのって面白いな、と思っていて。

確かに並べてみると面白いですね(笑)。でも全部好きなんですよね。

──じゃあまず声優やアイドルに興味を持ったきっかけは?

澁谷梓希

小学校のときに「テニスの王子様」の主人公の越前リョーマくんの声を演じているのが皆川純子さんだということを聞いて「女性がこんなカッコいい声を出せるのか」って衝撃を受けて。で、中学生の頃にAAAさんの音楽に出会って「歌って、こんなに楽しいんだ」ということを知って。それ以来「お芝居もしたいし歌も歌ってみたい」と思っていて、高3の2月、18歳のときに「アニソン・ヴォーカリストオーディション」に応募してみました。

──時期が時期だし、ある種の就活でもあった?

いや、実は高3のときに入院しちゃって受験も就活もできなかったので。むしろ最後の賭けっていう感じでオーディションを受けてました。

──病気というネガティブなできごとをきっかけに声優でアイドルになり、11月には武道館のステージを踏むことになった、と。

自分でもすごくストーリーのある人生だなって思ってます(笑)。今年「アニサマ」で松本梨香さんと「めざせポケモンマスター」を歌わせていただいたんですけど(参照:デーモン閣下からデレマスまで、名うて&若手がたまアリ揺らしたアニサマ初日)、実はこの曲ってオーディションの最終審査で歌った曲だったりもしますし。

自分で自分のストーリーを動かせた

──すごく順調にストーリーがつながってますね。

いやあ、いい感じになったのはここ1、2年ですね。デビューして1年ちょっとしてからも普通に「辞めたい」って言ってましたし。

──それはなぜ?

「プリパラ」が始まる頃まではあんまり仕事もなくて、考える時間だけはあるって状態だったんですけど、そのときにいろいろ考え込むうちになんで自分はi☆Risとして活動しているのかわからなくなっちゃって。

──いつ頃解決しました?

辞めたくなってた頃、スタッフさんが相談に乗ってくれた上で喝を入れてくれたことと、あと去年、1stツアーを回ったことで意識が変わった感じですね。ツアーっていう長い時間メンバーと一緒にいたことでより深くお互いを知ることができたし、あるライブで誰かが調子が悪かったりしたら、また別の誰かがフォローするみたいな関係もできあがって。2、3年の活動の中でそれぞれが身に付けたものを持ち寄ってお互いを助け合える関係ができあがって、私もその助け合える1人になれてることに気付けたら「よし! 悩んでないで次のステップに進もう」って思えるようになってました。で、ツアー最終日の次の日に髪を切ることにして……。

──当時ツインテールでしたよね。

澁谷梓希

それをまず胸のあたりまでの長さに切って、そのあと週1くらいのペースで美容院に行っては「このくらいまでならバレないんじゃないか」って感じでだんだん短くしていって、1年越しで今の長さにしてみました(笑)。でもメンバーからもスタッフさんからも特に怒られることはなくて。「ショートの金髪が好き」っていう私の個性を大事にしてくれていることにはホントに感謝してますね。

──そしてうまくしたもので、本人の意識が変わると、モデルやDJという新しい仕事も舞い込んでくるんですよね。

ホントにそうですね。デビュー当時からブログとかで「いつか洋服に関わる仕事をしてみたい」っていう話をしてはいたんですけど、髪を切ったらそれが現実になったわけですから。

──モデルやデザイナーの仕事はどういう経緯で?

もともとKINGLYMASKは好きなブランドで、ショップに行ったときに店員さんと「洋服に関わる仕事をしたいんですよね」って話をしていたら、ブランドのオーナーさんが直接「コラボしたいんだけど」って声をかけてくださって。そのお話を私からマネージャーさんに伝えて実現した感じですね。

──自ら営業をかけましたか!

営業っていうほど立派なものじゃなくて、ホントに雑談しただけではあったんですけど、自分で発信してはいます。DJも、昔からDTMをやってたこともあって「いつかDJをやってみたい」って話をしていたら、ご縁があって「イベントで回してみる?」って誘っていただいて始めてますし。髪を切り始めてからだから「遅いよ!」って思う人もいるかもしれないけど、ここ1年くらいは確かに自分で自分のストーリーを動かせるようになっている気がします。

武道館すべてのお客さんに寄り添いたい

──で、最初の話に戻っちゃうんですけど、やりたかったことの1つにデザインがあるのがやっぱり面白くて。アイドルと違って裏方仕事だし。

昔から制作には興味があったので。人とおしゃべりするのがすごく好きで、誰かとやり取りしながらデザインをしたり、曲を作ったりするのも大好きなので、いろんな方とコミュニケーションしながら何かを作り上げるのってすごく楽しいんです。

──その一方でi☆Risの活動も楽しい、と。

はい。なんだかんだ言って一番好きな仕事ってライブなんですよ。それもおしゃべりが好きっていうのと通じてるんですけど、ファンの方の反応が返ってくるのがすごくよくて。ライブ中はもちろんハードにパフォーマンスしてるんだけど、どこかリラックスしてます(笑)。それになんでDJやモデルやデザイナーのお仕事をさせていただけるかっていったら、やっぱりi☆Risの一員だからですから。ブランドのスタッフさんもDJイベントの主催者の方も「i☆Risの澁谷が興味持ってるらしいよ」っていうことで面白がってくれてる面はあると思いますし、モデルやDJを通じて「こういう洋服が好きだ」「こういう曲を聴いてるんだ」って発信したとき、一番に反応してくれるのはi☆Risでの澁谷梓希のファンの方ですし。

──ホントにこの1、2年は澁谷梓希のストーリーがつながりまくってますね。

だからホントに仕事が楽しいんですよね。休みになると不安でしょうがなくなるから、なんなら寝る時間もいらないとすら思っていて。実際、普段3時間くらいしか寝ないですし。あとの21時間は仕事のことを考えていたいんです。

──とてもデビュー1年経っても「辞めたい」ってボヤいてた人とは思えない(笑)。

澁谷梓希

あっ、それもあるのかも。考える時間があるとストレスが溜めちゃうから働きたいのかも(笑)。

──なるほど(笑)。その数あるお仕事の中でも特にライブがお好きなわけだし、武道館は楽しみですね。

ですね。私、目がいいんですよ。両目とも視力が2.0あって、Zepp Tokyoみたいな縦に長いライブハウスでもうしろのお客さんの顔が見えるくらい。

──じゃあキャパシティの割に奥行きはあまりない武道館なら……。

3階席のお客さんの顔も見えると思うので、ファン全員の近くに寄り添っているような感覚で歌いたいな、と思ってるし、ファンの方にも私たちを近くに感じてもらえるようなステージを作りたいですね。

武道館前にこれを聴け! 6人のイチオシ曲

「幻想曲WONDERLAND」

──個人的i☆Risの推し曲は?

2013年11月リリースの4thシングル「WONDERLAND」のジャケット。「幻想曲WONDERLAND」はこのシングルのリードトラック。

6人にこんな質問を投げかけてみたら満場一致で「幻想曲WONDERLAND」との回答が。タンポポ「乙女 パスタに感動」やアニメ「美少女戦士セーラームーン」のエンディングテーマ「乙女のポリシー」などの作家として知られる永井ルイによるこの曲について山北と澁谷は「i☆Risのすべてが詰め込まれた曲」とひと言。「ノンタイアップ、つまりi☆Risのためだけに作ってもらった歌ですし、ハモも聴いてもらいたいし、クルクル変わるリズムに合わせてダンスする、そのパフォーマンスも観てもらいたい」と声をそろえた。茜屋もそのダンスに注目。「もともとバキバキ系のダンスが得意だったから、この曲のバレエみたいな繊細な動きがホントにできなくて……。泣きながら1人で練習した、私にとっては壁を乗り越えるきっかけを与えてくれた曲なんです」というエピソードを披露してくれた。

またこの曲の冒頭の「あれ? ここどこだろう」というセリフを担当する久保田は「ライブであのセリフを言うとファンの方が当日の会場名をコールしてくれるんですよ。もし武道館でこの曲をやって、みんなが『日本武道館!』って叫んでくれたら、私、泣いちゃうと思います」と笑顔を見せた。

「§Rainbow」

2013年8月リリースの3rdシングル「§Rainbow」のジャケット。

そして「推し曲は?」の質問に「みんな『幻想曲WONDERLAND』って言ってますよね? 私ももちろんそうなんだけど、みんながそういうなら別のを選びます」と笑ったのは芹澤だ。

そんな彼女がセレクトした1曲は2013年8月のシングル曲「§Rainbow」。「幻想曲WONDERLAND」と同じく永井ルイの手によるモータウンビートが印象的な1曲だ。

「あの曲って原曲はルンルンって感じですごくかわいいんだけど、ライブでやると熱が入っちゃうんですよね。まだ『プリパラ』も始まってなくて、ライブにお客さんも入らない。本当にしんどかった最初の年に一番歌っていた曲だから、自然と私たちのパフォーマンスにも当時の思いが乗っかっちゃうというか。今ではその熱がお客さんにも伝わって、すごく盛り上がるから、なんか曲と一緒に成長できている気がするんです」

i☆Ris 4th Anniversary Live

2016年11月25日(金)東京都 日本武道館
OPEN 17:30 / START 18:30
最新シングル「Re:Call」 / 2016年8月3日発売 / DIVE II entertainment
Type-A [CD+DVD] / 1944円 / EYCA-11059/B
Type-B [CD] / 1296円 / EYCA-11060
Type-A CD収録曲
  1. Re:Call
  2. 鏡のLabyrinth
  3. Re:Call(Instrumental)
  4. 鏡のLabyrinth(Instrumental)
Type-A DVD収録内容
  • Re:Call-MUSIC VIDEO-
  • Re:Call-Off Shot Movie-
Type-B CD収録曲
  1. Re:Call
  2. 鏡のLabyrinth
  3. 真夏の花火と秘密基地
  4. Re:Call(Instrumental)
  5. 鏡のLabyrinth(Instrumental)
  6. 真夏の花火と秘密基地(Instrumental)
ライブBlu-ray / DVD「i☆Ris 結成4周年Live~foooour~@i☆RisTELLARTHEATER」 / 2016年10月26日発売 / DIVE II entertainment
[Blu-ray Disc] 6480円 / EYXA-11197
[DVD2枚組] 4860円 / EYBA-11195~6
i☆Ris(アイリス)
i☆Ris

山北早紀、芹澤優、茜屋日海夏、若井友希、久保田未夢、澁谷梓希からなる声優アイドルグループ。avexと81プロデュースが共催した「アニソン・ヴォーカリストオーディション」を機に2012年に結成され、同年11月にシングル「Color」でアーティストデビューを果たした。また2014年からは全メンバーがアニメ「プリパラ」シリーズのメインキャストを務めており、この「プリパラ」シリーズのテーマソングなど、現在までに13枚のシングルと2枚のオリジナルアルバム、1枚のカバー盤を発表。その一方で各メンバーとも声優、舞台俳優、ラジオパーソナリティ、DJなど、個人活動を積極的に展開し、2016年にはその実績が認められ「第十回 声優アワード」の歌唱賞を受賞した。そして2016年11月にはデビュー4周年記念公演として、初の東京・日本武道館ワンマンライブを実施する。