音楽ナタリー Power Push - i☆Ris
そして武道館アーティストになった
人生の崖っぷちを救ってもらった
──若井さんはi☆Risの中でも最年少です。オーディションを受けたときっておいくつでした?
16歳でした。高校2年生になりたてですね。
──なら当時はいろんな可能性が広がっていたはずですよね。クラスメイトと遊び歩いてもいいし、部活動に打ち込んでもいいし、勉強に励んでもいいし。そういう“当たり前の青春”を捨ててまで音楽の世界を目指した理由って?
昔から歌うことが大好きで、中学2年のときにavexのキッズコンテストでグランプリをいただいたんですよ。それで中3のときから週4日くらい地元の岐阜から名古屋にある養成所に通っていたんです。だから友達と放課後に遊ぶこともそんなになかったし、歌手を目指すことは苦じゃなかったですね。
──中3からレッスンを始めて高2でデビューって早いものなんですか?
けっこう崖っぷちの状況でした(笑)。育成契約の更新会議っていうのが半年に一度あるんですけど、デビュー直前の頃は本当にギリギリ残れてる感じで。そのときスタッフさんに「声優って興味ある?」「オーディションがあるんだけど」って聞かれたので、正直、アニメを熱心に観てはいなかったんですけど「めっちゃ興味あります!」って即答して。
──あはは(笑)。でも仕方ないですよね。放課後、週4のペースで養成所通いをしてる子のどこにアニメを観る時間があるんだって話ですから。
そう言っていただけると助かります(笑)。
──ただ養成所時代は当然ソロ志望でしたよね?
シンガーソングライター志望でした。でも崖っぷちのところを救ってもらった身としては、まずはi☆Risとしてがんばってみようと思ってたし、グループデビューするとわかった瞬間もなんか面白くなっちゃったんですよね。オーディションに受かったときは、むしろ1人でうまくやれるのか、ちょっと不安だったので、グループのほうが安心できるとも思ってましたし。唯一声優のお仕事があることには引っかかってましたけど。
──アニメにハマる“当たり前の青春”を送ってない身としてはそうなりますよね。
最初の顔合わせのときに「どうやらほかのメンバーはみんなアニメが大好きでこの世界にきたらしい」ということに気付いちゃって(笑)。
──山北さんに至っては声優の専門学校にも通ってたらしいし。
(芹澤)優もそうですね。あとみゆたん(久保田未夢)はアニメにめっちゃ詳しかったし。なのに私だけ違っていたから「どうしようかなあ」って思ってました。「好きなアニメって『ポケモン』と『ワンピース』くらいだし」って。今は声優の仕事がすごく楽しいんですけど、当時はとにかくそこが不安でした。
──その“アニメが好きらしい”面々とは最初から良好な関係を?
私が鈍感なだけかもしれないんだけど、誰に対してもイヤだなっていうのはなかったですね。「優ってトンガってるなあ」みたいなことは思ってましたけど。
──ご本人もおっしゃってました(笑)。
打ち解けてみれば全然そんなことはなかったんですけど「この子、性格キツイのかな」って思ってました(笑)……あっ、これはイヤだった話ではないんですけど、メンバー間に温度差があったのはちょっと気になってました。特にみゆたんなんかは「別にテレビとかには出なくても」って言ってたんですよ。私は逆に表舞台に立ちたいから養成所にまで通っていたので、そこについては悩んでましたね。活動していくうちに、みんな「もっとみんなの目に触れる存在になりたい」って考えに変わってきたから「アイドルもやれば声優もやるi☆Risはきっとどこにもないグループになれるな」ってスッキリできたんですけど。
──その、マインドが変わったきっかけって?
やっぱり「プリパラ」の放送が始まったのが大きいですね。デビューしてすぐくらいの頃、秋葉原で定期ライブをやっていたんですけど、ライブが終わったあと、アニメファンとして私たちを観に来てくれている人と、アイドルファンとして観ている人がモメたことがあって。
──両者が共存するのはi☆Risの現場ならではなんだけど、確かにアニメファンとアイドルファンだと応援の仕方やマナーが違いそうですね。
アニメファンの方は静かにライブを観たいんだけど、アイドルファンの方は盛り上がり重視で。それでケンカになっちゃって、そのファンの方たちと私たちとスタッフさんで話し合いをしたことがあったんです。でもアイドルアニメである「プリパラ」に私たちが関わるようになったら、アニメファンの方がアイドルライブの楽しみ方を知ってくれるようになって、アイドルファンの方は「アニメって面白いじゃん」って思ってくれるようになって。デビュー当時から「i☆Risがアニメファンとアイドルファンをつなぐ虹の架け橋になれたら」って言い続けていたんですけど、「プリパラ」が始まってそれが本当に叶ったから、メンバーの中に「ちゃんと見てもらってるんだ」っていう意識が芽生えたんだと思います。
やらなきゃいけないことをやろう
──若井さんってホントにi☆Ris愛がありますよね。ソロ志望だったはずなのに、デビュー当時からグループのあるべき姿を探っていたわけだし。
スタッフさんにもホメられました(笑)。「もともと興味がなかった分野をしっかり楽しめてるのがエラい」って。グループを組むことが面白かったとはいえ、ソロじゃないことを割り切るにはけっこう時間がかかった気もするんですけど、今は「私はこういう人生を行くべきだったんだな」って本心から思えてますね。
──いつ頃、割り切れました?
i☆Risのデビューと同時にソロシングル(2012年11月の「Destiny Sky」)をリリースさせてもらっていたので、最初から全然納得できなかったわけじゃないんですけど、本心から割り切れたのは実はわりと最近で。今年に入るか入らないかくらいです。「プリパラ」が始まった頃から、みんなどんどん個人の仕事も増えてステップアップしていたんですけど、私は最初にソロデビューできちゃっていたこともあって、1人だけあまりステップアップできていないんじゃないかって焦ってたんです。
──去年末から今年の頭にその焦りを解決できた?
そうですね。スタッフさんのアドバイスもあって、今自分がやりたいことと、実現するためにやるべきことを整理をしてみたんです。やりたいことと、準備しなきゃいけないことをバーッと書き出して。そのメモを見ていたら冷静になれました。「いつか結果が出ることを信じて、今やらなきゃいけないことをしっかりやっていこう」って。
──その「今、準備していること」を教えてもらうことってできます?
詞と曲を書き貯めることですね。まだやりたいことを実現できていないということは、準備をする時間があるということだから、今のうちにやっておかなきゃって思っていて。時間を有効活用するようにはしています。
6人が集まったときは迷うことなくi☆Risに力を注ぐ
──今回の特集をソロインタビュー6本立てにしたのには、若井さんをはじめ皆さん、i☆Risの活動に軸足を置きつつほかの夢にも向かっているからっていう理由もあって。4年間を振り返る座談会を開いたら、きっと6人6様「シンガーソングライターだ!」「舞台だ!」「DJだ!」ってバラバラのことを言うだろうな、と思ったので(笑)。
間違いないですね(笑)。この間ひさびさにメンバー6人だけで集まって、みんながやりたいことについて話したんですけど、ホントに人それぞれでしたから。ただ唯一共通していたのが、個人としてやりたいことは踏まえつつも、6人が集まったら迷うことなくi☆Risに力を注ぐっていうことで。もちろん私もなんですけど、全員i☆Risのことはすごく大事にしたいなと思ってるんだと思います。
──じゃあ、すごくいい状態で武道館公演を迎えられそうですね。
はい。メモリアルな場所で私たちの4年間を披露できる機会だけに、私たちが今まで積み上げてきたものを見せることが大事だと思っています。「あれもやりたい!」「これもやりたい!」って感じで新しいことをやるというよりは、4年間の集大成にしたいですね。
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i☆Ris 4th Anniversary Live
- 2016年11月25日(金)東京都 日本武道館
- OPEN 17:30 / START 18:30
- 最新シングル「Re:Call」 / 2016年8月3日発売 / DIVE II entertainment
- Type-A [CD+DVD] / 1944円 / EYCA-11059/B
- Type-B [CD] / 1296円 / EYCA-11060
Type-A CD収録曲
- Re:Call
- 鏡のLabyrinth
- Re:Call(Instrumental)
- 鏡のLabyrinth(Instrumental)
Type-A DVD収録内容
- Re:Call-MUSIC VIDEO-
- Re:Call-Off Shot Movie-
Type-B CD収録曲
- Re:Call
- 鏡のLabyrinth
- 真夏の花火と秘密基地
- Re:Call(Instrumental)
- 鏡のLabyrinth(Instrumental)
- 真夏の花火と秘密基地(Instrumental)
- ライブBlu-ray / DVD「i☆Ris 結成4周年Live~foooour~@i☆RisTELLARTHEATER」 / 2016年10月26日発売 / DIVE II entertainment
- [Blu-ray Disc] 6480円 / EYXA-11197
- [DVD2枚組] 4860円 / EYBA-11195~6
i☆Ris(アイリス)
山北早紀、芹澤優、茜屋日海夏、若井友希、久保田未夢、澁谷梓希からなる声優アイドルグループ。avexと81プロデュースが共催した「アニソン・ヴォーカリストオーディション」を機に2012年に結成され、同年11月にシングル「Color」でアーティストデビューを果たした。また2014年からは全メンバーがアニメ「プリパラ」シリーズのメインキャストを務めており、この「プリパラ」シリーズのテーマソングなど、現在までに13枚のシングルと2枚のオリジナルアルバム、1枚のカバー盤を発表。その一方で各メンバーとも声優、舞台俳優、ラジオパーソナリティ、DJなど、個人活動を積極的に展開し、2016年にはその実績が認められ「第十回 声優アワード」の歌唱賞を受賞した。そして2016年11月にはデビュー4周年記念公演として、初の東京・日本武道館ワンマンライブを実施する。