音楽ナタリー Power Push - i☆Ris
そして武道館アーティストになった
11月25日、i☆Risのデビュー4周年記念ライブが東京・日本武道館で開催される。
i☆Risは、avexと声優プロダクション・81プロデュースが共催した「アニソン・ヴォーカリスト」オーディションで選ばれた6人からなる声優アイドルグループ。2012年11月にシングル「Color」でデビューを果たす傍ら、2014年からはメンバー全員がアニメ「プリパラ」シリーズのメインキャストに選ばれ、以来声優アイドルグループとして活動を展開している。またここ1、2年はソロ活動も活発に。舞台活動を精力的に繰り広げるメンバーもいれば、地上波のバラエティ番組に出演するメンバー、さらにはDJやモデルとして活躍するメンバーもいる。そしてこの11月にはグループ結成当時からの目標だった東京・日本武道館でのワンマンライブを実施することとなった。
今回音楽ナタリーではこの武道館公演を記念して、メンバーの個別インタビューを実施。声優アイドルグループの一員として、いち役者・タレントとして充実の日々を送る6人それぞれにこの4年間を振り返ってもらった。また特集の最後にはメンバーに“推し曲”を聞くアンケートも実施。来たる武道館ライブで披露されることを期待して、あわせてチェックしてみてほしい。
取材 / 成松哲 文 / 成松哲、丸澤嘉明 撮影 / 上山陽介
スタイリング / 津野真吾(impiger) ヘアメイク / KOTOMI、Takaco、蓼沼仁美
衣装協力 / お世話や、GRL、Cherry Ann、Realta
志望動機はニートからの卒業
──山北さんの目にはi☆Risの4年間ってどう映ってます?
順調とは言えないけど、ありがたいことに環境に恵まれてるなとは思ってます。2年前には「プリパラ」(2014年7月にスタートしたアニメシリーズ。i☆Risメンバーがメインキャストを務める)が始まって皆さんに注目してもらえるようになったし、メンバーを見てみても、みんなi☆Risとして成長することに意欲的ですし。だから4年間続けられているんでしょうね。
──その皆さんが出会うきっかけとなった、avexと81プロデュースが共催した「アニソン・ヴォーカルオーディション」はなぜ受けようと?
ニートを卒業するために(笑)。
──へっ!?
小学生の頃からグループアイドルが好きで「いつか私もアイドルに」って思っていたんですけど、高1のときに「涼宮ハルヒの憂鬱」で平野綾さんのファンになって、さらに水樹奈々さんのファンにもなって。「声優って歌も歌うんだ」「これ、私のやりたいことじゃん」ということで高校卒業後に地元・札幌の声優の専門学校に通い出したんですけど……。
──全然ニートじゃないじゃないですか。
その直後にカフェのバイトにハマって、学校に通わなくなりまして(笑)。
──あはははは(笑)。
で、2年生の冬に学校の先生から「卒業式には絶対来いよ」って電話があって出てみたら、同級生の目が「4月からは声優の卵としてがんばります!」ってキラキラしていて。それを見たら外には出られなくなるし、ごはんも食べたくなくなるしっていうくらい自己嫌悪に陥って……。
──晴れてニートに(笑)。
はい(笑)。「自分で自分の経歴をズタボロにしちゃったし、今さらなんの伝手もなしに夢は追いかけられないよなあ」って落ち込んでました。でもある日「アニソン・ヴォーカルオーディション」のことを知って、生まれて初めてオーディションというものを受けることにしたんです。
──あのー……声優の専門学校に通ってたんですよね?
なのにバイトにハマるあまり、学生時代にオーディションを受けたことがなくて(笑)。しかもそのときも「年齢制限22歳なのに、私はもう21歳だし、まあダメかな」って思っていたので、同時に某ブランドの就職面接を受けたりもしてました。
最年長と考える“オトナの仕事”
──それで見事にチャンスをモノにした。ただ皆さんの過去の発言によると当時グループを組まされるとは聞いてなかったんですよね?
あっ、私は薄々気付いてました。年齢制限ギリギリの私だけが選ばれるわけがないと思っていたので(笑)。
──そしてリーダーを任された。
集団の中で最年長ポジションになるのはイヤだったんですけどね。基本的に末っ子気質というか、ひとりっ子だから親の愛を一身に受けて育ってきましたし、2月生まれなので。
──早生まれだから学校でも末っ子ポジションだった。
そうなんです。でもメンバーと顔合わせをしてすぐにあだ名が「さきさま」に決まっちゃったんですよ。当時16歳……145cmで最年少のちびっこ(若井友希)に様付けで呼ばれちゃったらリーダーをやらざるを得ないじゃないですか。21歳としては(笑)。
──オトナは大変だ(笑)。
私もキャピキャピしたかったのに(笑)。ただ高校も女子校で、バイト先も女の子ばっかり。常に女子ネットワークの中で生きてきたので、女子とうまくやれる女子像はなんとなくわかってるつもりでもいて。「i☆Risはみんな押しが強いから、私は一歩引いてバランスをとったほうがいいな」とは思ってました。特に自己主張の強い(芹澤)優ちゃんやみゆたん(久保田未夢)に焦らされましたし(笑)。
──“女子ネットワークの人”だけに、その埒外で雄々しく生きていた2人にビビった、と。
「はわわわわ」ってなりました(笑)。でも2人共人間的にも好きだし、アイドルファンとしてはi☆Risみたいなグループのことも好きだし、何よりもう4年経ってますし。今はもう「このままずっと一緒にi☆Risをやっていきたいな」って思ってますね。
有言実行で「三十路までがんばります」
──i☆Risのリーダーとして活動する一方で声優、舞台俳優、ラジオパーソナリティとしても活動していますよね。
はい。
──ただ最初の言葉の通り、その道のりは順調ではなかった?
特に1年目は、それまでどん底みたいな生活を送っていたのに、いきなり憧れの環境が与えられたことに満足してしまっていて。本当はそこがスタートラインなのに「より上へ」っていう気力が湧かなくて、「私だけ出遅れてるなあ」って思ってたし、ちょっと悩んでた気もします。今もたまにその顔が出ちゃうのか「病み北」って呼ばれたりしますし(笑)。
──でも今のi☆Risは全員が成長に意欲的なんですよね?
私がそうなれたのは、キレイごとでもなんでもなくメンバーとファンの方のおかげですね。1~2年目は立ち止まりがちな私にメンバーが手を差し伸べてくれることが多かったし、それぞれ悩みはあったはずなのに、それでもi☆Risとして、個人としてがんばっているメンバーを見るのが励みになりましたし。
──一方ファンのおかげって?
去年1stツアーで地方を回って、首都圏のイベントでは見たことのないファンの方の顔を見たり、「初めて見る名前だ」っていう方からファンレターが届くようになったりしたことで「メジャーで活動するってこういうことか」って気付けた気がするんです。「私が(水樹)奈々さんからパワーをもらっていたように、実は私も誰かのパワーになれてるのかもしれない」「ならもっとがんばりたい」って。歌やダンスやお芝居さえできていればそれで幸せなタイプだし「私は地下アイドルみたいな活動でも満足できるんじゃないか?」って悩んだ時期もあるんですけど、今はメジャーで活動するアイドルとしてがんばることが生きがいになってますね。
──ニートだった人が、4年のうちに誰かのためにがんばることに喜びを見出した。すごくいい話だと思います。
ありがとうございます(笑)。「1stツアーみたいな“ここぞ”というときにそんな体験ができる私って運がいいな」って思ってます。
──運だけなんですかね? 生きがいを見付ける努力は?
いわゆる努力はしてない気がします。歌やダンスのレッスンは好きだからやっているだけですし。その“好き”が報われているのも運がいいし、そもそもオーディションに受かったのも運だと思ってますし。あと最近だと、8月に私のリミッターを外してくれる出来事があったりもしましたし。
──リミッターを外す出来事?
WUG(Wake Up, Girls!)のライブを観に行ったら、お客さんがすっごい幸せそうな顔をしていて。それで「WUGちゃんに向けてるのと同じ笑顔を私たちに向けてくれるみんなを裏切りたくない」「武道館も近いことだし、みんなが喜んでくれて、しかも自分のやりたいことでもある、歌やダンスをもっとまっすぐにやっていこう」って再確認することができたんですよね。単に仲のいい後輩のライブに行っただけなのに。
──“運良く”気付きがあった、と。では11月の武道館は、今のいい状態のまま迎えられそう?
そうですね。最近体力作りが楽しすぎて、身体が痛くなるくらい走りまくってますし(笑)。ほかのメンバーもめちゃめちゃいいモードに入っている感じがするから、この勢いのまま、観た人全員に「i☆Ris最高!」「これからも応援したい!」って思わせるライブにしたいですね。
──ちなみに4周年ライブのあと、5年目の目標ってあります?
やりたいことをもっと突き詰めたいですね。今年、声優アワードの歌唱賞をi☆Risでいただいたとき「三十路までがんばります」って言っちゃったので(笑)。有言実行でがんばろうと思ってます。
次のページ » 芹澤優インタビュー
i☆Ris 4th Anniversary Live
- 2016年11月25日(金)東京都 日本武道館
- OPEN 17:30 / START 18:30
- 最新シングル「Re:Call」 / 2016年8月3日発売 / DIVE II entertainment
- Type-A [CD+DVD] / 1944円 / EYCA-11059/B
- Type-B [CD] / 1296円 / EYCA-11060
Type-A CD収録曲
- Re:Call
- 鏡のLabyrinth
- Re:Call(Instrumental)
- 鏡のLabyrinth(Instrumental)
Type-A DVD収録内容
- Re:Call-MUSIC VIDEO-
- Re:Call-Off Shot Movie-
Type-B CD収録曲
- Re:Call
- 鏡のLabyrinth
- 真夏の花火と秘密基地
- Re:Call(Instrumental)
- 鏡のLabyrinth(Instrumental)
- 真夏の花火と秘密基地(Instrumental)
- ライブBlu-ray / DVD「i☆Ris 結成4周年Live~foooour~@i☆RisTELLARTHEATER」 / 2016年10月26日発売 / DIVE II entertainment
- [Blu-ray Disc] 6480円 / EYXA-11197
- [DVD2枚組] 4860円 / EYBA-11195~6
i☆Ris(アイリス)
山北早紀、芹澤優、茜屋日海夏、若井友希、久保田未夢、澁谷梓希からなる声優アイドルグループ。avexと81プロデュースが共催した「アニソン・ヴォーカリストオーディション」を機に2012年に結成され、同年11月にシングル「Color」でアーティストデビューを果たした。また2014年からは全メンバーがアニメ「プリパラ」シリーズのメインキャストを務めており、この「プリパラ」シリーズのテーマソングなど、現在までに13枚のシングルと2枚のオリジナルアルバム、1枚のカバー盤を発表。その一方で各メンバーとも声優、舞台俳優、ラジオパーソナリティ、DJなど、個人活動を積極的に展開し、2016年にはその実績が認められ「第十回 声優アワード」の歌唱賞を受賞した。そして2016年11月にはデビュー4周年記念公演として、初の東京・日本武道館ワンマンライブを実施する。