2024年も止まりません! オーケストラ公演直前のH ZETT M、ギネス達成直後のH ZETTRIO (3/4)

[後編]H ZETTRIO インタビュー

2023年12月に発表した新曲「Dynamics」で配信シングル連続60作リリースを達成したH ZETTRIO。この本数は「単一音楽ユニットによるデジタルシングル連続リリース月最多数」としてギネス世界記録に認定され、同月に実施されたブルーノート東京でのワンマンライブでは認定証の贈呈式が行われた。今回のインタビューでは配信シングル数の記録達成後の心境、2022年から2023年にかけての活動について語ってもらった。

ついに本格復帰!こどもの日ライブ

──前回の特集(参照:こんなに活動してました!年表&インタビューでわかるコロナ禍のH ZETTRIO)以降の活動を振り返っていきたいのですが、まず2022年の5月はおよそ3年ぶりに有観客で「こどもの日ライブ」が実施されました。

H ZETT KOU(Dr) 喜びもひとしおって感じでしたね。会場となった立川ステージガーデンの近くにあるGREEN SPRINGSが大好きで、以前からよく遊びに行っていたんです。ずっと「ここのホールでできたらいいな」と考えていたので、ことさらうれしかったですよ。

H ZETT NIRE(B) でっかい会場だったよね。施設には車で行ったんですけど、「駐車場どこだ?」ってなっちゃうぐらい広くて。

H ZETT KOU そうそう。なだらかな階段があって、その横で水が流れていたり、素敵な空間でね。

H ZETTRIO

H ZETTRIO

H ZETT NIRE 施設のことばっかり言ってますね(笑)。話を戻すと、2021年の「こどもの日ライブ」は当初有観客で実施できる予定だったんですが、直前に緊急事態宣言が発令されたので、結局配信のみになってしまって。すごく残念だった分、2022年はお子さんの声が聞こえる中でライブができて、「ようやく戻ってきた」という気持ちでした。

H ZETT KOU ゼトさん(H ZETT M)はそのへん、どうです?

H ZETT M(Piano) 立川周辺は大学時代よく通っていたので、「懐かしい場所」という印象がありまして。「ここらへんよくいたな」とかいろいろ思い出しつつ、子どもたちがたくさんいる中でライブをやったので、いろんな世代や時間やらの感情がミックスされて……感慨深かったです。

──6月にはオーディオメーカー・JBLのバックアップのもと、「世界音楽の日」とレギュラー番組「SPEED MUSIC ソクドノオンガク」のコラボイベントが実施されましたが、菊地成孔さんがゲストで参加されたり、同日の昼にはクイーンズスクエア横浜でフリーライブが行われたりと充実した1日でした。

H ZETT NIRE さらに朝は番組収録もあったんですよね。朝は収録、昼はフリーライブ、夜はBillboard公演……というすごい日でした。

H ZETT KOU 盛りだくさん。

H ZETT NIRE フリーライブは何度かやってきましたが、たまたま通りかかった年配の方たちも観てくれたりして、普段のライブとはまた違った雰囲気で面白いですね。このときはショッピングモールの吹き抜けみたいな場所で演奏したので人通りも多かったし、客層もかなり幅広かったです。

H ZETT M ストリートでのライブには何かしら懐かしさを感じますね。私たちとそっくりな人たちが組んでいたバンドもよく路上ライブをやってたようですし。

──皆さんの前身ジャズバンド……という噂のPE'Zですね。

H ZETT NIRE ちゃんと許可を取っていれば安心して演奏できるけど、突発的に行うと「何曲目までできるんだろう」とか考えたりしながらですから、大変ですよね。

H ZETT KOU その場からすぐ去る用意をしておいたり。

──皆さん妙に詳しいですね(笑)。

H ZETT NIRE 僕らもいろいろありましたので(笑)。

H ZETT NIRE(B)

H ZETT NIRE(B)

仕込みが大変、演奏曲山盛りの「Blue Note of 3」

──少し変わったものだと、餃子のチェーン店「肉汁餃子のダンダダン」のオリジナルソング「DAN DA DAN ~Nikujiru Juicy~」を制作したのもこの年でした。「DAN DA DAN ~Nikujiru Juicy~」は配信シングルとしてリリースされたほか、店内BGMとしても使われて。

H ZETT KOU 「ダンダダン」は個人的によく通っていたのでうれしかったです。オリジナルソングを発表したあともお店に足を運んで、「おっ、『DAN DA DAN』かかってるね」って確認しました(笑)。

H ZETT M 以前から「『ダンダダン』で私たちとそっくりな人たちが組んでいたバンドの曲が店内BGMとして使われているぞ」という噂を聞いていて、私もお店に行ってみたらちょうど流れていたんですよね。そのご縁があって曲を書き下ろそうという話になって。

H ZETT M(Piano)

H ZETT M(Piano)

H ZETT KOU 「DAN DA DAN ~Nikujiru Juicy~」は焼き上がったときのシュワーっていう湯気をシンバルで表現してみました! 餃子をイメージした曲になっているのでお店だけでなく、おうちでも餃子を食べながら聴いてみてくださいね。

──このほか年末にはブルーノート東京にて「Blue Note of 3」と銘打った3DAYSワンマンが行われました。この公演は各日ごとに違うテーマを掲げ、まったく異なるセトリで演奏が披露されました。

H ZETT M これは意外と挑戦でしたね。その日ごとにセトリを変えるということはよくあるのですが、演奏曲数が多くなればなるほど仕込みの時間が必要になってきます。しかしやり甲斐はありました。

H ZETT NIRE この時期、ライブが立て込んでいたものですから、もう時間がなくて大変でしたね(笑)。だんだん「この曲どの日に演奏するんだっけ?」みたいな感じで混乱しちゃったり。毎年12月はわりと忙しいことが多いですね。

──ちなみに仕込みにはどのぐらいの日数を使ったんでしょうか?

H ZETT NIRE 1カ月くらい前からですかね。本番前週のリハで一気に仕上げました。

H ZETT KOU 一気にね(笑)。

H ZETT M あと、「Blue Note of 3」ではジャズのスタンダード曲もラインナップに含まれたんですが、セロニアス・モンクなんかの曲をH ZETTRIOで演奏するのは珍しくて。

H ZETT NIRE 新鮮でしたね。

H ZETT M その他のジャズの選曲も楽しかったです。コウさんがハービー・ハンコックの「Rockit」を持ってきて、リハでやってみたらいい感じだったので「やろう!」となったりして。で「Watermelon Man」とか「Chameleon」とか、気付いたらハービー・ハンコックの曲ばっかりになって……(笑)。「『Actual Proof』」もやろう」という話もあったけど、それもハービー・ハンコックでした(笑)。

H ZETT M(Piano)

H ZETT M(Piano)

H ZETTRIOの2023年はジャズ色強め

──年が明けて2023年、3月にはLINE CUBE SHIBUYAにて「おとなの日ライブ」が実施されました。ある意味「こどもの日ライブ」とは真逆の公演です。

H ZETT M この日は普段のライブよりも渋い雰囲気の曲をメインに演奏しましたね。あとは東京の渋谷の公園通りにある会場で行われたので、「渋谷系と言えば」ということでピチカート・ファイヴの「東京は夜の七時」をカバーしました。

H ZETT KOU 今回はお子さんも来て楽しめる内容のライブでしたが、今後は「おとなの日ライブ」ならではの施策もできたらいいかもね。お酒を出したり、子供が来たら「絶対まずいぞ」とか思われちゃいそうな雰囲気になってるかも(笑)。

──もちろんこの年も「こどもの日ライブ」が行われました。

H ZETT KOU 会場になった相模女子大学グリーンホールは何度かライブをしたことがあるホールで、ステージが広くて演奏しやすいんです。この時期に新型コロナウイルスが5類扱いになったので、ひさしぶりに大入りになった客席が印象的でした。

H ZETT KOU(Dr)

H ZETT KOU(Dr)

──さらに6月から8月にかけて、4都市のジャズクラブを巡る「Jazz Club Tour 2023 ~トリオが目に沁みるぜ Vol.1~」が開催されましたが、一部会場では3DAYS、各日異なる内容のライブが行われました。

H ZETT NIRE さっき話題に挙がった「Blue Note of 3」が好評で、ありがたいことに「またやってほしい」という要望をいただいたんです。そして何より、コロナ禍でなかなかキャパの小さい会場でライブができなかったので、僕たちもジャズクラブでやりたかったのが本音です。ブルーノート東京の方も「毎年やってください」とお話ししてくれたのを覚えています。

──3DAYSライブだけでなく、12月の2DAYSワンマンもブルーノート東京が舞台になりましたよね。特殊なライブが多い。

H ZETT NIRE 実はH ZETTRIO結成直後もブルーノートでライブをやったんですよ。当時はまだアルバム「★★★」1枚しか発表していなかったので、カバー曲をたくさんやった記憶があります。それ以来ずいぶん間が空いてしまいましたが、またこうやってできるのはありがたいです。

──そのあと9月に出演した神戸市のジャズ100周年記念公演「H ZETTRIO Live 2023 in KOBE ~planetarium&hall~」では、プラネタリウムで演奏が行われました。

H ZETT KOU 今どきのプラネタリウムの迫力はすごいですよね!

H ZETT M 演奏に集中していましたが、映像もかなり気になりました(笑)。

H ZETT NIRE プラネタリウムのスタッフの方がこのライブのために映像を作ってくれたんですが、後半に差しかかるにつれて夜が明けてくる構成になっていて。音楽と同期していて素敵な演出でした。

H ZETT NIRE(B)

H ZETT NIRE(B)

──2023年は先ほどお話しした「Jazz Club Tour 2023」「H ZETTRIO Live 2023 in KOBE ~planetarium&hall~」のほか、福岡の「NAKASU JAZZ 2023」、東京・墨田区の「すみだストリートジャズフェスティバル」、北海道の「SAPPORO CITY JAZZ 2023 THEATER JAZZ LIVE」とジャズ系のイベントへの出演が多い1年でした。このあたりは意識的にスケジュールを組んだのでしょうか?

H ZETT NIRE あえて積極的に出演しましたね。来年も参加したいです。

H ZETT KOU ジャズフェスは町興しも兼ねている場合が多いので、我々の演奏で少しでも貢献できるのであればうれしいですね。

──客層や演奏の感触など、普段のホール公演と比べて異なる部分はありましたか?

H ZETT NIRE ブルーノートなどのジャズクラブは本当の音楽好きと思われる方や、ご年配の方とかも見受けられましたね。ほかの公演ではあまり見ない雰囲気のお客さんが多いです。演奏の感触も全然違って、ホールは空間が広いから音の響き方が別物なんですよね。ジャズクラブはもうちょっと空間が狭いし、ロック系のライブハウスとは違って、音の圧をお客さんにぶつける感じではなくて。音の響き方をいかに駆使するか、ですね。

H ZETT M 会場がコンパクトだと響きもぎゅっとしますから、細かいニュアンスは伝わりやすい気がしますね。ジャズ箱ならではのよさがありますし、その面白さを堪能できた1年だったのかなと。音のニュアンスでも気付いたことがあったし、やればやるだけ発見がある気がします。

H ZETT KOU ジャズ箱を攻めた年だったんですね。

2024年1月9日更新