音楽ナタリー Power Push - ヒステリックパニック×ダイノジ
新種ラウドバンドがメジャー進出する意味
受け入れられるスピードが速い
──「ライジングさん」以外に大谷さんがアルバムの中で好きな曲はありますか?
大谷 「スイーツダンス」「サイコロジック」あたりも好きですね。でもやっぱり「うそつき。」は思い入れが強いから特別だな。「ビクターロック祭り2015」の会場でサンプルCDをもらって、その5秒後にはDJでかけてましたからね。振付もその場で作ったんだよ。
とも その日が音源初解禁だったんですよ。まだミュージックビデオもどこにも出してないし、ラジオとかでもかかってない状態で、最初に表に出たのがダイノジさんのDJ。
大谷 かけたときの感触すごくよかったですよ。当日はビクター所属かつイベントに出てないアーティストの曲を中心にかけてて。サカナクションとかサザンオールスターズとかかけてたら人がいっぱい集まってきて、そこに「うそつき。」を織り交ぜて。でもみんな突然知らない曲が流れたのに……。
大地 盛り上がってたよね。
大谷 体感すると、この曲の殺傷能力のすごさがわかります。ヒステリックパニックの曲は受け入れられ方のスピードがすごいんです。人懐っこいですよね。
おかっち 初めて言われました。
大谷 すぐ受け入れられるっていうのは人懐っこさだと思うよ。
とも 最初にも大衆性があるって言っていただきましたけど、シャウトが入ってたり、サウンドが重かったりするから受け入れられない時代ってとっくに終わってて。(マキシマム ザ )ホルモンとかFACT、PTP(Pay money To my Pain)とか、こういうジャンルの道を切り開いてきた先輩方がいて、そこを踏襲しつつ、より大衆的にしたいっていう気持ちがあるんですよね。僕、もともと大衆向けじゃなかったヒップホップが大衆向けになっていく様を見てた世代なんですよ。
大谷 あーそうか。
大地 RIP SLYMEとか?
とも はい。僕、一番好きなアーティストはRIP SLYMEなんですけど、スチャダラパーとかEAST ENDとかが切り開いた道を、より現代化して広げていったのがあの世代。それまでヒップホップに興味なかった人たちがヒップホップを面白いって言うようになって、今や大衆音楽でもラップが取り入れられるのがオーソドックスになって……っていうのを見てるから。だから僕らはアイドルの曲にシャウトが入るくらいにしたいんですよ。今、女の子のアイドルの曲だとちょっとずつシャウトが入ってる曲が増えてきていますが。
大谷 なるほど。Ken Yokoyamaさんもね、こないだ「Mステ」出てて。セルアウトしてるって誤解されることも覚悟の上で、自分を使ってパンクロックを知ってもらうっていう使命感を背負っていて。それって役割じゃないですか。ピースの又吉(直樹)も純文学で賞を獲ったけど、それをきっかけに本を読むようになった人を、さらにお笑いとかいろんな世界へ広げてあげる役割を背負って。この使命を引き受ける人ってたぶん選ばれた人なんだと思う。ヒスパニはその役割を担ってるんじゃないかな。
とも 自分で言うのもなんですけど、僕らみたいなバンドがメジャーからこういう音源を出せるっていうのが面白い時代だなって思ってて。昔だったら絶対ありえないことだと思うんですけど、今はメジャーの間口が広がってるから。いろんな音楽がある中で、アホみたいなことを、声を大にして言わせてもらえる、好きにやらせてもらえてるなら、とことんやってやろうみたいなところはあります。
オリコン1位を獲りたい
──今後の野望は?
Tack朗 1曲目「メジャーデビューしました」でも歌ってますけど、「Mステ」出たいです。あと個人的になんですけど、僕オリコンランキング見るのがすごい好きなんですよ。
大谷 「オトナとオモチャ」もけっこう売れたんでしょ?
とも 発売日当日のデイリーランキングが11位です。
Tack朗 なので、オリコンランキングでいつか1位獲りたいなと。ホルモンさんは4週連続1位獲ってたりするんですけど、僕らの世代でもそれを達成して次につなげていかないと、ラウド系って終わっちゃう気がしてて。その意味も込めて1位獲りたいですね。
とも ダイノジさんは昔から知ってたので、子供の頃にブラウン管で観てた人と今一緒にお仕事してるっていうのがすごい不思議な感覚で。以前インタビューでそういうことを言ったら、インタビュアーさんに「それは君たちがそのフィールドまでたどり着いたからで、がんばった証なんだよ」みたいなことを言われたんですよ。だからそういう証をもっと増やしていきたいし、自分たちもそのフィールドから落ちないように前進して、もっと上の人たちに追い付けるようにしていきたいです。
──ダイノジが今後のヒスパニに期待することは?
大地 「Mステ」に出てほしい!
大谷 それで「ダイノジさんに捧ぐ」って言ってほしいよね(笑)。でも今日話聞いてて、すげー頼もしいなと思った。ラウドバンドとか名古屋のシーンの未来を考えて、そうやって与えられた使命みたいなのを持ってるんだから、その使命を達成していってほしいな。「俺ら、ヒスパニはインディーズ時代から知ってるよ」って早く言いたいよね。どんどん有名な人と絡んで、これからもいろんな夢を見せてほしいですね。
- 1stフルアルバム「オトナとオモチャ」2015年7月15日発売 / 2376円 / BLACK SHEEP RECORDS / Victor Entertainment / VICL-64366 / Amazon.co.jp
- 「オトナとオモチャ」
収録曲
- メジャーデビューしました
- うそつき。
- スイーツダンス
- ラウド日本昔ばなし
- MISSION 5
- えす☆け~ぷ(オトナとオモチャ Ver.)
- ファッキンホット (オトナとオモチャ Ver.)
- ~raison d'etre~
- あいのかち
- サイコロジック
- オトナのオモチャ
- ライジングさん
ヒステリックパニック
2012年に名古屋で結成されたラウドバンド。現在はとも(Vo)、Tack朗(G, Vo)、$EIGO(G, Cho)、おかっち(B)、やっち(Dr)の5人で活動している。2013年7月にタワーレコード限定でリリースした4曲入りCD「4U」がヒット。ANGRY FROG REBIRTH、HER NAME IN BLOODといったバンドのツアーにゲスト出演し、各地で知名度を上げる。2015年4月にシングル「うそつき。」でメジャーデビュー。7月にフルアルバム「オトナとオモチャ」をリリースした。キャッチーさを兼ね備えたラウドサウンドと傍若無人なステージングで人気を集めている。
ダイノジ
1994年に結成された大谷ノブ彦と大地洋輔によるお笑いコンビ。よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。DJダイノジとしてイベントやフェスにも多数出演しているほか、DJイベントも企画する。