優勝を勝ち取れた要因
──では優勝を勝ち取れた要因はなんだと思いますか?
当然ですが、一番大きいのは投票してくださったファンの方々のおかげですね。皆さんの熱意がなかったら絶対に優勝できなかったと思うし、それは本当に言葉にならないくらい感謝しています。それから、シブヤの物語の展開もあると思います。彼らの物語や心情の動きが、僕も含めて本当に応援したくなるような魅力があると思うし、それがファンの方にシブヤの3人を優勝させてあげたい、王座につかせてあげたいっていう熱気を生み出して、今回の結果になったんじゃないかなって。
──確かに、シブヤは物語のスタートから考えると、本当に印象が変わりましたね。
それによって、シブヤの曲自体にもすごく深みが生まれたと思うんですよね。シブヤの曲はもともとエモいテーマの曲が多かったんですけど、物語が進むことによって、さらに深みや意味合いが増していったんじゃないかなって。だから過去の曲であっても、その時点で聴いたのと、今さまざまな物語を知ったうえで聴くのとでは、まったく違った捉え方ができるようになっているのもシブヤならではなのかなって。そういう“深化”は、ほかのディビジョンの曲にももちろんあるんですが、「感情」とか「エモ」の部分の深まりは、シブヤが特に強い気がする。それによって、僕たちのステージ上でのパフォーマンスや、歌入れのときの感情の込め方はより強さを増していった。そういう相乗効果がありつつ、3人が調和することによって、今のシブヤがあるんだと思います。
──白井さん自身も乱数に対する印象は大きく変わりましたか?
乱数は本当に自分中心というか、「利用」するために夢野幻太郎と有栖川帝統と手を組んでいたと思うんですね。そしてそういう打算的な部分は、幻太郎にも帝統にもあったと思う。だけどそんな3人の関係性が物語の中でどんどん深まっていって、乱数が窮地に陥ったときに幻太郎と帝統がなんのためらいもなく手を差し伸べて乱数を助ける、乱数もその手を素直に握れる関係性になったのが本当に素晴らしいと思うし、まさしくいろんな経験の先に「絆」が生まれて、1つのディビションになっていったのかなって。だから優勝曲の「キズアトがキズナとなる」というタイトルは、シブヤが歩んできた道程や軌跡、今の関係性をひと言で表してくれていると思いますね。
ヒップホップシーンの王者KREVAから授かった宝物
──そのシブヤの優勝曲「キズアトがキズナとなる」は作詞作曲、プロデュースをKREVAさんが手がけられました。
お名前を聞いた瞬間ぶち上がりましたね(笑)。これまで「ヒプマイ」は本当にさまざまなアーティストさんに楽曲を提供していただいていて、すごく楽曲に恵まれているんですけど、その中にまた最高の1曲が生まれたなって。ほかのディビジョンでもそうだったと思うんですけど、シブヤの3人でも優勝する前から「もし優勝したら誰に曲を書いてほしい?」みたいな話をしてたんですね。そこで「もしかしたらKREVAさんとかあるんじゃない?」みたいに、勝手ながらお名前を出したりもしていて。そうしたら本当に優勝曲をKREVAさんに書いていただけることになって「マジか!」みたいな(笑)。僕自身、KREVAさんの楽曲は、KICK THE CAN CREWも含めて数々のヒット曲を聴いてもいるし、フェイバリットな曲も多くて。それもあって喜びもひとしおでしたね。そして山田一郎役の木村昴くんはとにかく悔しがってました(笑)。
──デモを聴く前はどんな楽曲を想像されていましたか?
どんな曲になるんだろうか、どういうアプローチで楽曲を作ってくれるのかっていう期待と、シブヤとすごくマッチする曲を書いてくださるだろうなっていう予感がありましたね。そして実際、デモを聴いて本当に感動しました。内容を通して、シブヤの「エモさ」みたいな部分を、丁寧に曲の中に詰め込んで下さって、本当にシブヤ・ディビジョンのためにイチから作ってくれたっていうのを感じたし、その愛情とプロフェッショナルさに感銘を受けました。KREVAさんも「みんなのファンになって書きました」とおっしゃってくれて、本当に光栄でしたね。ずっと聴いていたくなる、歌っていたくなる曲です。しかも、KREVAさんのデモを聴けるのは僕らだけなわけですよ。もう宝物です(笑)。
──どんなデモだったんですか?
乱数、幻太郎、帝統のキャラクターに合わせて、ラップも歌い分けてくださってたんですよね。だから、乱数だったら乱数らしくかわいらしく跳ねるような歌い方をデモの段階でKREVAさんがしてくださってて。とにかく耳が幸せでしたね。一方でラップが難しいパートもあって、これは練習しないとなと。しかもレコーディングにKREVAさんが立ち会ってくださることがわかって、「なおさら練習に練習を重ねないと!」って、仮歌を聴き込みました(笑)。
──実際のレコーディングはいかがでしたか?
正直、KREVAさんが立ち会ってくださることで緊張してたんですけど、スタジオでのKREVAさんはその緊張をほぐすようにとにかく気さくにお話やアドバイスをしてくださって。「いいですね!」「この部分もうちょっとこうしましょうか」とか、わかりやすく丁寧に、具体的なアドバイスで楽しく成長させてもらえたという、手応えを感じたレコーディングでした。シブヤの3人は別々にレコーディングしたんですけど、僕がレコーディングのトップバッターで、終わった瞬間シブヤのグループLINEに「KREVAさん、めっちゃいい人だった!」って送って。そうしたらほかの2人からもRECが終わったあとに「KREVAさん、めっちゃいい人だった!」ってLINEが来ました(笑)。個人的な話をすると、その日、僕はリヴァプールFC(イングランドプロサッカーリーグのチーム)のキャップを被っていたんですね。そうしたら「あ、リヴァプールのファンですか?」ってところからKREVAさんと2人でサッカー談義が始まって、サッカーの話でも盛り上がりました(笑)。
「ヒプマイ」の今後の展開
──カップリングのDivision Leaders「UNITED EMCEEZ -Enter the HEXAGON-」は、各ディビジョンのフロントマンである山田一郎(CV:木村昴)、碧棺左馬刻(CV:浅沼晋太郎)、乱数、神宮寺寂雷(CV:速水奨)、白膠木簓(CV:岩崎諒太)、波羅夷空却(CV:葉山翔太)が集結した1曲ですね。
この曲もめちゃくちゃカッコいい曲になりましたね。この6人そろって歌うのは初めてで、それぞれの方向性もキャラクター性も違うんですが、そのバラバラだった6人がどうつながっていくのかっていう、次の段階の「ヒプマイ」が見えるんじゃないかなと思いますね。同じようにドラマトラックもかなり重要な物語の進展があるので、ドラマトラックを聴いた前と後では、全体的な印象や受け取り方が変わってくるような、一度で何度もおいしい曲になっていると思います。本当にこのCDで、6人の関係性や今までの過去のつながりや衝突も含めて、全体的に大きく話が進展するので、いろんな答え合わせも含めて、自分としてもこれからの動きがすごく楽しみになっているし、それを盛り上げてくれる楽曲になってると思いますね。
──最後に、これからの「ヒプマイ」についてはどういった期待を持たれていますか?
乱数のいろんな真相がわかっていく中で、彼がいったいどんな存在になっていくのかは、個人的にすごく気になるところではありますね。そしてシブヤの3人に幸せになってほしいという気持ちも、今回の優勝を通してさらに強くなりました。今回のドラマトラックでシブヤの明るい旅路というか、これからの展開や関係性も垣間見えたりもしたので、この関係性は壊れないでほしいなと思いつつ、またひと波乱あったりするのかな……とも思ったり。個人的にはまたアニメが制作されればなって。オオサカ・ディビジョン“どついたれ本舗”とナゴヤ・ディビジョン“Bad Ass Temple”はまだアニメには登場していないので、今の「ヒプマイ」の構成を組み込んだ新しいアニメシリーズを通して、物語がまた進むとうれしいです。それにオオサカもナゴヤもどんどんファンが増えていってるから、次のバトルがあるとすればどこが勝ってもおかしくないと思うし、シブヤもそれに備えてもっと強くなっていきたいと思いますね。そしてライブ。「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 7th LIVE 《SUMMIT OF DIVISIONS》」でひさびさにお客さんと対面して、一緒に盛り上がることができたのは本当にうれしかったし、一緒にコールアンドレスポンスができる日を待ち望んでいます。
プロフィール
白井悠介(シライユウスケ)
声優。2015年に出演した「美男高校地球防衛部LOVE!」で話題を集め、以降、「アイドルマスター SideM」「アイドリッシュセブン」など話題作に数多く出演。「理想の緑」をブランドアイコンとする、オリジナルアパレルブランド・MIDORIを立ち上げたほか、YouTuberとしての活動も行っている。
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KREVAインタビュー