音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」に登場する6つのディビジョンが、楽曲とライブパフォーマンスを通してしのぎを削った2回目のバトルシーズン「2nd D.R.B」。2021年の「ヒプマイ」の中心軸となり、新たな楽曲群やライブ「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 7th LIVE 《SUMMIT OF DIVISIONS》」を通して熱狂を生み出した今回のバトルは、シブヤ・ディビジョン“Fling Posse”の優勝を持って幕を閉じた。
音楽ナタリーでは、念願の優勝を果たしたFling Posseのフロントマンである飴村乱数を演じる白井悠介と、優勝を記念して制作されたFling Posseの新曲「キズアトがキズナとなる」の作詞作曲およびプロデュースを手がけたKREVAにそれぞれインタビュー。白井には「現在進行系のヒプマイとFling Posse」について多角的に話を伺い、KREVAには「キズアトがキズナとなる」の制作経緯を詳しく聞いた。
取材・文 / 高木“JET”晋一郎撮影 / 西村満
白井悠介インタビュー
乱数の変化
──まずはシブヤ・ディビジョン“Fling Posse”の「2nd D.R.B.」優勝おめでとうございます。
ありがとうございます。前回大会となる2018年の「第一回韻踏闘技大會」では、初戦でシンジュク・ディビジョン“麻天狼”に敗退していたということもあって、今回は「まずは勝ちたい」という気持ちがすごく強かったですね。
──今回はどのディビジョンも勝利に向けての気合いの入り方が「第一回韻踏闘技大會」よりも非常に高く感じました。
前回大会のときは「初めてのバトル」ということもあって、いろんな部分が手探りだったと思うし、どういう気持ちで臨むべきなのかも正直フワッとしてる部分があったと思うんです。でもいざバトルが始まり、ライブでバチバチにバトル曲を披露し、実際に勝敗が決まっていく中で、シンジュクが優勝する姿を見たときにすごくうらやましく感じたし、悔しい気持ちが生まれたんですよね。そういった流れや、「ヒプマイ」自体の人気、物語の進行、そしてキャラクターやディビジョンに対する愛着がこの3年の間でより高まってきていたので、今回は僕としても、そしてシブヤ・ディビジョンとしても、本当に優勝したいという気持ちが強くなっていました。
──やはり、どのディビジョンもそうですが「キャラクターの解像度」はこの3年間で大きく上がりましたね。
「第一回韻踏闘技大會」の段階では見えていなかったバックグラウンドが「2nd D.R.B.」に至るまでの楽曲やドラマトラックはもちろん、アニメやコミックなどを通してより明らかになっていったと思うんですよね。特にシブヤは「第一回韻踏闘技大會」の段階ではシリアスな部分や必死さは見せていなかったと思うんです。でも「ヒプマイ」の世界が進んで行くことによって、シブヤの奥底の部分だったりキャラクターの内面が見えてきたし、僕としてもその部分に気付くことができるようになったんですよね。だから、乱数に対する意識が演じていても変わってきたし、感情移入の度合いも格段に深くなっていった。気持ちがリンクするというか。
──特に乱数は「第一回韻踏闘技大會」のときは飄々として底の見えにくいキャラクターだったし、ディビジョン自体の関係性も今よりももっとドライでしたね。
言い方は難しいけど、フワフワしてたと思うんですよね。もちろん、それは乱数の持ち味だし魅力だと思うんです。でも、それ以外の乱数の持つ人間くさい部分だったり、隠されていた部分がどんどん明らかになって、単にフワフワした存在ではないことがわかるようになったことで、より親近感が湧いたし、そうやって理解度が上がることがすごくうれしかったですよね。「ヒプマイ」のキャラクターの中でも乱数は一番つかみどころがない存在だったから、その彼が一番人間臭く、情熱や感情を出してくれるようになったのが本当に感慨深かった。キャラクター自体が成長したり物語が深まったりしていって、自分自身と乱数との関係性がより濃くなったからこそ、今回は「Fling Posseの飴村乱数を勝たせたい」っていう気持ちがとにかく強かったですね。
ヨコハマ、シンジュク、イケブクロとのバトル
──そして「2nd D.R.B.」の初戦はヨコハマ・ディビジョン“MAD TRIGGER CREW”との戦いになりました。
ヨコハマは「第一回韻踏闘技大會」で決勝に進出しながらもシンジュクに敗れて、優勝に一歩届かなかったという悔しさが強かったと思うし、今度こそ優勝したいという思いがあふれ出ていましたね。でも、シブヤも今回は絶対に1回戦では終われないと思っていたし、そういう思いが交錯して、本当に熱いバトルになったと思います。
──どのディビジョンもそうでしたが、ヨコハマの気合は尋常ではなかったですね。
シブヤを殺しにきてましたね(笑)。それぐらい勝利への気持ちが全面に出ていたと思うし、それはシブヤも同じで。だから本当にどちらが勝ってもおかしくなかったバトルだと思う。そしてヨコハマがそれぐらい本気でぶつかってきたからこそ、シブヤも全力でそれに応えることができたと思うし、そのバトルを通して、今まで話したようなシブヤの今まで見えなかった部分がより明らかになったんじゃないかなって。シブヤが実は持っていた熱さとかキャラクターの関係性の強さ、勝ち上がりたいっていう強い感情を引き出してくれたのはヨコハマだったと思います。そして、そこを勝ち抜けたからこそ、自信を持って決勝を戦うことができたんじゃないかなって。
──今回のバトルの1次は「LIVE投票」となりました。つまり、ライブでのパフォーマンスも勝利への条件となりましたね。
勝つために自分たちができるのは、ライブで言えばクオリティを上げることだったんですよね。心構えや戦略よりも、まずはいいパフォーマンスをするしかないなって。だから「ここでは3人でそろって正面を向こう」「ここでポーズを決めよう」というようなパフォーマンスの細部を3人で詰めていって。そして、ステージ上でも「乱数を演じてる白井」ではなくて、乱数としてステージ上で歌っていたと思います。それぐらい乱数と自分がシンクロしていたと思いますね。
──決勝戦はシブヤと前回優勝者のシンジュク、そしてイケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”による、初の三つ巴での決戦となりました。
「ヒプマイ」のセンターディビジョンっていう言い方が正しいかは分からないけど、やっぱりイケブクロは「ヒプマイ」の顔役だと思うんですね。そしてシンジュクはディフェンディングチャンピオンとしての王者の風格がある。その2組に比べると、シブヤはちょっと異質な存在なのかなと。でも、だからこそ「ここで勝ったらカッコいいよな!」って思いました(笑)。それにヨコハマとのバトルよりも、落ち着いて戦いに挑めたんじゃないかな。やっぱりヨコハマ戦はライブでもそうだったんですけど、負けたくないっていう気持ちが先に出ちゃって、そのときのことをあまり覚えてないぐらい無我夢中だったんですね。でも決勝は、もっと落ち着いて、応援してくださる皆さんのためにも勝ちたいっていう冷静な気持ちで挑むことができました。
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優勝を勝ち取れた要因