音楽原作キャラクターラッププロジェクト「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle-」の新作CD「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 2nd Division Rap Battle 『Buster Bros!!! VS 麻天狼 VS Fling Posse』」が9月8日にリリースされた。
このCDはトーナメント方式のバトル「2nd D.R.B」でFinal Battleへ進出することが決定したイケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”、シンジュク・ディビジョン“麻天狼”、シブヤ・ディビジョン“Fling Posse”が参加。Final Battleでは8月に神奈川・ぴあアリーナMMで行われた、約2年ぶりの有観客ライブ「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 7th LIVE ≪SUMMIT OF DIVISIONS≫」による1次投票、新作CDによる2次投票、10月16日から行われる“VR BATTLE”での3次投票という3つの要素によって優勝チームが決まる。
1次投票の「7th LIVE」には、全6ディビジョンや中王区“言の葉党”の声優キャストのほか、言の葉党に「Femme Fatale」を提供したReol、Division All Starsの楽曲「SUMMIT OF DIVISIONS」を制作したスチャダラパー、そして「2nd D.R.B」のファイナルバトル曲「SHOWDOWN」を手がけたDragon Ashがゲストで登場。Dragon Ashの生演奏による「SHOWDOWN」のパフォーマンスなども話題となった。
音楽ナタリーではBuster Bros!!!・山田一郎役の木村昴、麻天狼・神宮寺寂雷役の速水奨、Fling Posse・飴村乱数役の白井悠介の鼎談を実施。「7th LIVE」の所感や「SHOWDOWN」のエピソード、Final Battleへの思いについて語ってもらった。また特集の後半には「SHOWDOWN」を手がけたDragon AshのKj(Vo, G)へのインタビューも掲載。「7th LIVE」に出演した感想や「SHOWDOWN」の制作エピソードについて聞いた。
取材・文 / 高木“JET”晋一郎撮影 / KOBA
何にも代えがたい有観客ライブ
──8月7、8日に開催された「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 7th LIVE ≪SUMMIT OF DIVISIONS≫」は、待望の有観客ライブとなりました(参照:「ヒプマイ」熾烈なラップバトル繰り広げた7th LIVE初日、DAの生演奏でFinal Battle曲初披露も / まだまだ成長を続ける「ヒプマイ」、全ディビジョンが火花散らした7th LIVEの2日目)。
速水奨 お客様が入ったことで、僕ら出演陣もアグレッシブに自分たちのスタイルが出せたと思いますね。まさに“ユウカン”な気持ちでステージに立てたよね。
白井悠介 ……あ、「勇敢な気持ち」ってことですね。いきなり振られると驚きますよ(笑)。
速水 ごめんごめん(笑)。でも本当に感触が違ったよね。
木村昴 全然違いました。もちろん無観客だった「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 5th LIVE@AbemaTV《SIX SHOTS UNTIL THE DOME》」、「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 6th LIVE ≪2nd D.R.B≫」が物足りないわけではなくて。2公演とも配信を通して超ハイクオリティなライブを観せられたという自負はあります。そういった経験を経たうえで、お客様を前にしてライブをすると、「……こんなにテンション上がるかね!」と思いましたね。
速水 プラスアルファどころじゃなかったね。
木村 想像を絶してました。
白井 「ヒプマイ」としては「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- 4th LIVE@オオサカ《Welcome to our Hood》」以来、約2年ぶりの有観客ライブだったので、お客様を前にしたライブがどんな感覚だったかをちょっと忘れかけるくらい時間が空いていて。でも「そうだ、こんなに心地よかったんだ!」と思わされるような、「ヒプマイ」ならではの独特の盛り上がりがあったし、僕らのテンションもそれに併せて上がっていきました。
速水 自分の肉体の制約を忘れるような感覚になったよね。
白井 そうですね。本当にただただ楽しい気持ちに包まれて。もちろん「2nd D.R.B」の楽曲を中心にしたバトルパートは、キャラクターや物語の中に没入しているし、目の前の相手やディビジョンを叩きのめすという気持ちではあったのですが、終盤の全ディビジョンがそろい踏みしたパートは、とにかく楽しさしかなくて。お客様も盛り上がってくれるから、さらに気持ちも上がっていきましたね。
木村 ライブの構成としては、バトルパートがテンションのピークになるような流れで、特にイケブクロ・ディビジョン“Buster Bros!!!”、シンジュク・ディビジョン“麻天狼”、シブヤ・ディビジョン“Fling Posse”での「2nd D.R.B」のファイナルバトル曲「SHOWDOWN」の初披露が最高潮になるような展開でした。そして、そのパフォーマンスが終わったあとの、全ディビジョンがそろったラストスパートの3曲は、両日ともバトルやディビジョンのことを一旦忘れて、とにかくみんなで盛り上がろうぜ!というモードだったから、全員が素直にパフォーマンスすることができたと思うんですよね。
速水 もう最後はディビジョンのくくりも度外視で。
白井 立ち位置もシャッフルして。楽しくなっちゃって立ち位置どころじゃなかった(笑)。
木村 ナゴヤ・ディビジョン“Bad Ass Temple”とオオサカ・ディビジョン“どついたれ本舗”は有観客でしっかりライブするのは今回が初めてだったし、現在のフルメンバーがそろったこともうれしかった。
速水 みんなが満を持してという感じでしたね。それは僕らもそうだし、お客様ももちろんそうだと思う。
木村 お客様の熱気があってこその盛り上がりだったのは間違いない。
白井 その熱気は幕が開いた瞬間に感じましたね。
木村 そう! 初日の幕が開いた瞬間は、本当に感動しましたね。無観客ライブのときも、素晴らしいセットとカメラワークで無観客ならではのアプローチができたと思うから、その充実感はあった。だけど今回、幕が上がって、目の前にお客様がいるということのうれしさは何にも代えがたいし、その喜びはライブビューイングや、ABEMAでの配信でも伝わったんじゃないかなって。初日の1曲目「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- +」は、本当に感動しすぎて声が震えちゃって、うまく歌えていなかったと思います。でもそれでもいいやって思うぐらい、情熱を込められたし、イケブクロがトップを歌って、次のナゴヤにマイクが渡った瞬間に、イケブクロの3人はイヤモニ外して「めっちゃ楽しいね!」「すげー!」「やばいね!」って報告しあってました(笑)。それぐらい幸せでしたね。
白井 お客様がマスクをしていても、目や仕草、リングライトの光を通して、いろんな感情がダイレクトに伝わってきましたよね。それが本当に心強かった。速水さんのおっしゃる通り、勇敢な気持ちになれたし、支えられていることを改めて実感しました。本当に「やっぱりこれだよ!」という気持ちで楽しませていただきましたね。
速水 初日のオープニングでは、シンジュクはステージの一番後方の高い場所にいたんですよね。だからほかのディビジョンやダンサーの姿を後ろから見ることができて。そこから見たときに、みんな武者震いをしてるような感じがして、自分自身も奮い立ちました。そして「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- +」が始まった瞬間、自分が会場の空気の中に一気に溶け込んだような、我を忘れるような感覚になって、涙が出そうになりましたね。僕はあまり感動するようなタイプじゃないんだけど、声援がないのに、これだけ人のエネルギーやオーラは伝わってくることに「これは途轍もないものが始まるんだな」と胸が震えました。
木村 確かに声援がないのを忘れるぐらいのパワーが伝わってきましたね。声を出せなくてもこれだけ感動するんだから、出せるようになったらどうなっちゃうんだろう?
白井 僕らもお客様もおかしくなっちゃうんじゃないかな(笑)。それぐらいエネルギーが解放される気がしますね。
今までで一番気持ちよく歌えた「IKEBUKURO WEST GAME PARK」
木村 特に声が出せなくてもパワーを感じたのは、2日目に披露したイケブクロの「IKEBUKURO WEST GAME PARK」。この曲はお客さんのコール&レスポンスを前提にしたパートがあるんですね。今回はコール&レスポンスができないはずなのに、不思議とお客様の声が聴こえてくるような感覚があって。それはすごく印象に残る体験になりました。今まで何度も披露してきた「IKEBUKURO WEST GAME PARK」の中でも、一番気持ちよく歌えたと思います。あと今回の会場に合わせたフォーメーションもメンバーで考えて、本番前も確認して「さあ、練習通りいこう!」とステージに出たんですけど、冒頭のアカペラからビートに乗った瞬間に、気持ちよすぎて3人とも解き放たれちゃって、結局誰も練習通りの動きをできなかった(笑)。特に僕がそうで、完全にフリーに動き始めちゃったんですけど、サブちゃん(山田三郎役の天﨑滉平)はそれを察して「え~、そう動くの!? じゃあ俺も!」ってフリーに動き始めて、二郎(山田二郎役の石谷春貴)も2人の動きを見て、さらに自由に動くという(笑)。でも、それがライブならではのアクションだと思うし、フリーに動いてもそれがバッチリハマったということに、イケブクロの結束を感じましたね。曲自体も、歌詞が決まったラップなんだけど、本当に普段の会話のように全員が自然に言葉をつなげていけたと思うし、歌ってて本当に気持ちがよかった。
──フリーな動きで言うと、木村さんは1日目の「おはようイケブクロ」では、曲中のセリフを「領収書は碧棺で」と変えられていましたね。
木村 今回はヨコハマ・ディビジョン“MAD TRIGGER CREW”とあまり絡む機会がなかったんですよね。でもやっぱりイケブクロとヨコハマ、(山田)一郎と(碧棺)左馬刻は因縁の間柄なので、一杯食わせられないかなと思って、あのセリフを入れたんですよね。
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心を照らしたシンジュク、感情が爆発したシブヤ