「ヒプノシスマイク-Division Rap Battle- 2nd D.R.B Fling Posse VS MAD TRIGGER CREW」特集 白井悠介×浅沼晋太郎×ALI-KICK×TeddyLoid|負けられない理由持つ者同士の神聖なバトル

エンタテインメントとしてのギリギリのラインまで攻めた

──白井さん、浅沼さんのお二人は、この曲を実際にステージで歌ってみていかがでしたか?

白井 最初に浅沼さんがおっしゃっていましたけど、リハではあんなにチョケていたのに、本番ではとてもそんな気分になれなかったです(笑)。とにかく「本気で勝ちたい」という気持ちが前面に出てしまったのは、この曲がそうさせていたんじゃないかと思っていますね。

浅沼 あまりにも熱が入りすぎて「仲間だからな」のところは音源以上に叫んじゃいましたし、歌っているときはまったく冷静ではいられなかった。これまでヨコハマは、決して馴れ合わないし、個々の目標があって、その利害関係がうまい具合に一致しているからこそお互いにリスペクトして協力し合うみたいな、「仲間」とは少し違う関係性だと感じていたんですけど、それが今回はっきりと「仲間だからな」と言い切っているのがめちゃくちゃ熱く感じて。

白井悠介

白井 いやあ、あそこはエモいっすよ。3人が目標に向かって一丸となって進んでいる様子を、ひと言で見事に表している。

浅沼 僕らヨコハマが「覚悟の強度が違うのだよ」とラップしたのを受けて、シブヤが「絆の強さが違うんだよ」と返すところもすごく好きですね。

白井 やり合ってる感が出てますよね。

浅沼 ライブのときは俺ずっと白井くんだけを睨んでましたから(笑)。

白井 そう、怖いんですよ!(笑)

浅沼 でも、この曲の中で僕が最もキレてるのは、(飴村)乱数が「警官も軍人もヤッちゃうぞ」とラップするところ。

ALI-KICK

ALI-KICK あれはホントに紙一重のフレーズですよね。最初に浅沼さんがおっしゃったように、バトルとはいえエンタテインメントじゃなきゃダメだし、そのあたりを探りながら書きました。最初の段階ではもう少し穏やかな表現に留めていたのですが、レーベル側から「もうちょっと踏み込んでほしい」と言われ、エンタテインメントとしてのギリギリのラインまで攻めたのが、あのフレーズだったんです。

浅沼 そうだったんですね。ストーリーを追っていると、(碧棺)左馬刻は昔Mad Comic Dialogueを一緒に組んでいた白膠木簓を失い、The Dirty Dawgのメンバーだった山田一郎と妹である碧棺合歓を失い、さんざん人に去って行かれてきたわけですけど、それなのにようやく巡り会った入間銃兎と毒島メイソン理鶯まで乱数は奪うつもりなのか! という怒りが湧いてくるんですよ。

白井 だってしょうがないじゃないですか、そっちが「ボケカスが」なんて言うんですもん(笑)。シブヤにはシブヤの、乱数には乱数の事情もあるし。

浅沼 確かに。でも乱数がすげえなと思うのは、実はクローンによって濡れ衣をかぶせられている面もありながら、そこを言い訳せずに「全部、僕がやりました」と言えちゃうところ。そこは敵ながら評価している部分ですね。

白井 ただ、本心はちょっとわからないですけどね。僕も「なんで言わないのかな?」と思うところもあるし、今後もしかしたら新たな展開があるのかも知れないですね。

浅沼 あと、個人的に好きなのは理鶯と(有栖川)帝統のやり取りです。

白井 あそこは微笑ましさもありますよね。

浅沼 「貴殿に食わす食材はもうない」に対しての、「一飯の恩はマジサンキューな! だが関係ねえだろうラップには」のところとか、ファンの感想で「まだご馳走してもらうつもりはあるんだ」とも取れるのが面白かった(笑)。

TeddyLoid きっと理鶯はまたご馳走しちゃうでしょうしね。

浅沼 そうそう! そうなんですよ(笑)。あと、いつも寡黙で大人な神尾(晋一郎)さんが、このバトル曲にしろディビジョン曲にしろ、これまでのイメージをぶっ壊してめちゃくちゃ熱く吠えているんですよ。「覚悟の強度が違うのだよ」のところとか。そこもグッときましたね。

技術的な次元を超えて、思いを追求

──重層的なストーリーも踏まえつつ、6人の個性的なキャラのリリックを書き分けるのは大変だったでしょうね。

ALI-KICK 頭が破裂するかと思いました(笑)。「Reason to FIGHT」は、2つのディビジョンのバトル曲でもありつつ、その先には中王区を倒したいという野望を内包していることも入れたくて。そこから「連れてくぜ to the NEXT LEVEL そのために負けるわけにはいかないBATTLE」というラインが生まれました。

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TeddyLoid 普通、ラッパーって自分のパートのリリックしか書かないじゃないですか。なのに、ここまでそれぞれの人格にマッチした精度の高いリリックを書くのはすさまじいものがあるなと思います。デモトラックをALI-KICKさんに渡して、リリックが乗ったものが最初に返ってきたときは本当にビックリしました。仮のラップもALI-KICKさんがやっているんですけど、その段階で6人のキャラもしっかり演じ分けているんですよ。

ALI-KICK 実はラップが一番難しかった(笑)。TeddyLoidさんがおっしゃるように、ラップは「誰が言うか?」がすごく重要で。同じ言葉でも、それをラップする人物がどんな人生を歩んできたのかによって、説得力もニュアンスもまったく変わってくるので。そういう意味でも、「本人が言うであろう言葉」を選ばなければというプレッシャーはかなりありましたね。そこは、TeddyLoidさんのトラックにも助けられました。あの曲を聴きながら、それぞれの戦う理由、勝たなければならない理由を考えていたら、どんどん気持ちが昂ってきたので。

──ラップのレコーディングはいかがでしたか?

白井 ドラマパートを録ったあとだったので、ストーリーも踏まえたリリックに感情が入りました。歌入れは3人とも別々に行ったのですが、シブヤは3人のLINEグループがあって、レコーディングをするたびに「今回の曲、マジヤバいね」「めちゃくちゃエモいじゃん」みたいな感想が飛び交っていましたね。

浅沼晋太郎

浅沼 ヨコハマも同じです。先に歌入れをしたメンバーから「シブヤを粉々にする気でラップしてきました」みたいな報告が随時入ってきていました(笑)。

白井 LINEでもガラ悪いんですか、ヨコハマは!(笑)

ALI-KICK レコーディングでディレクションしているときも、テクニカルなディレクションじゃないんですよ。ラッパーじゃない人にラップをディレクションするときは、いつも「こういう発声で」「リズムはこんなふうに取ってみてください」みたいに、技術的な部分を詰めていくことが多いんですけど、「ヒプノシスマイク」の場合はそんな次元ではなくて。「どういう気持ちを入れるか」「どんな言い方にするか?」を追求していく感じ。

──演技指導のような。

ALI-KICK そうなんです。ラッパーが自分自身についてラップするのともまた違う。声優さんがキャラを演じているわけだから、声色のニュアンスや気持ちの込め方によって、物語にも大きく影響していくわけじゃないですか。

浅沼 そうそう。左馬刻の「聞いてんだろ?ぶっ潰す」だけでも、何度も録り直しましたよね。

ALI-KICK そういうレコーディングができるので、改めてすごいコンテンツだなと。非常にやりがいを感じましたね。


2021年3月25日更新