HYDEが2020年第1弾作品となるシングル「BELIEVING IN MYSELF / INTERPLAY」を3月18日にリリースした。
このシングルに収録されているのは、爽快なサウンドが特徴の「東京マラソン2020」のイメージソング「BELIEVING IN MYSELF」と、「パチスロ真・北斗無双」のテーマソングに決定している激しくラウドな「INTERPLAY」の2曲。いずれもタイアップのために書き下ろされた新曲だ。
2018年6月のソロ再始動後から作り上げたアルバム「ANTI」のツアーを昨年末に完結させ、新たなフェーズに入ったHYDE。今回は楽曲制作の舞台裏と共に、音楽制作のスタイルやミュージックビデオに対する考えなどを聞いた。
取材・文 / 中野明子
やっとHYDEとしての土台ができた
──2019年12月にアルバム「ANTI」を携えてのツアーファイナルがありましたが(参照:HYDE、“理解者”たちと「ANTI」を完成させた壮絶ツアーファイナル)、終えてみてどんな手応えがありましたか?
「ANTI」の収録曲はリリースの1年くらい前から時間をかけて演奏していたので、ファイナルでは「こういうことをやったらカッコいいんじゃないか」という自分として理想的なライブを披露できた感じがします。ステージにしてもそうだし、ファンの盛り上がりも最後はカオスな状態になって、「こういう景色が観たかったんだよな」と。やっとHYDEとしての形がまとまったというか、土台ができた気がしました。
──HYDEさんは「ANTI」のリリース時から「『ANTI』は招待状のようなものでファンの力によって完成する」とおっしゃっていましたよね。つまりソロ再始動から1年半かけて、第1段階が完了したと。
そうそう。
──そして、「ANTI」を完結したあとの第1弾が今回のシングルだと思うのですが、楽曲はいつ頃作られていたんですか?
どちらも昨年末の段階でほぼ完成してたかな。
──そうなんですね。まずは「BELIEVING IN MYSELF」についてお聞きしたいのですが、この曲は「東京マラソン2020」のイメージソングとして、同大会のレースディレクターである早野忠昭氏との対談をきっかけに作られたそうで。オファーがあったとき、どう感じられました?
お話をいただいたのはうれしかったんですが、僕のライブや楽曲は仮面を着けて激しい音楽をやるような感じなので、正直「マラソンのイメージと合うのかな?」と思ってました。マラソンの健康的なイメージと、HYDEとしてのアンダーグラウンドな雰囲気を合わせるのは難しいなと感じましたが、自分のイメージを気にしてるとダメだなと思って。
──パブリックイメージと違うからとオファーを避けてはいけないと。
そう。せっかくオファーをいただいたので、マラソンやランニングをする人たちが気持ちよく聴ける曲にしたいなと。曲と自分のイメージをつなげようと思ったのは後半からですね。まずは自分が音楽を聴きながら走ることが多いので、走ってるときにエンジンがかかるような曲にしようと考えて。それこそ「ANTI」でも、「MAD QUALIA」とかテンポの速い曲を聴きながら走ると気持ちがいいんです。あと、意識したのはライブで盛り上がること。走っていて気持ちいいこと、ライブでも盛り上がることを融合させた曲にしようと考えて、Shoくん(MY FIRST STORY)と作っていきました。
「東京マラソン」がなかったら生まれてなかった
──Shoさんには「走っていて気持ちよく聴ける曲」「ライブで盛り上がる曲」以外にオーダーしたことは?
最初はそれくらいかな? あとは、上がってきた音に対してああだこうだ言った感じですかね。
──そういったやり取りはどれくらいされるものなのですか?
10回くらいかな。僕は「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」とか文句ばっかり言ってるんですけど(笑)。そのやり取りを重ねて完成に至った感じです。すごいいい曲になったと思います。
──ソロ再始動以降の楽曲、例えば「ANTI」に収録されている大半の曲が激しくてマイナー調のサウンドで、怒りや悲しみといった感情を歌っていたと思うんです。でも、この曲に関してはすごく開けた、ポジティブな印象を受けたので、少し方向性が変わったのかなと感じたのですが。意図した部分はありますか?
いや、こういう曲は「東京マラソン」というタイアップがなかったら生まれてなかった曲だと思います。マラソンというテーマがなかったら、もっとヘビーな曲になってただろうし。
──そうなんですね。Shoさんとのやり取りはどんな形ですか?
メールでのやりとりだけですね。
──曲のイメージを文章だけで表現するのは難しそうですね。
難しいんだけど、仕方がない部分もあって。直接会ってやり取りする機会がなかなかなくて、実はまだ挨拶くらいしかしていないんです。でも、例えば「RED SWAN」を作ったときもYOSHIKIさんとは一切お会いしてなくて。こちらでボーカルだけ録って、YOSHIKIさんにデータで送る感じでした。今回も同じ流れでしたね。
──実際に会えなくても、メールやネットワークを駆使して音楽を作るのは今の制作スタイルとしては少なくないですよね。サウンドはShoさんとの共作ですが、HYDEさんが作曲に使っているツールはなんですか?
僕が使うのはAPPLE GarageBandくらい。それを使って、トラックに対してメロディをはめたりしてます。
──最近の作曲方法はその形が多いんですか?
いや、自分でプログラムすることもあるし、ギターをスタジオに持っていって、マニピュレーターに対して「こういう曲にドラム入れて」とか指示することもあるし、ケースバイケースです。
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いいタイトルが付くと完成度が上がる