音楽ナタリー Power Push - HY
夏、海、沖縄「LIFE」の原点
HYって沖縄にいる
──HYは2013年に自主レーベルを立ち上げて、沖縄に拠点を移して活動しているんですよね。そこからチャレンジ精神が増してきたということもありますか?
名嘉 それはもう、すごくありますね。新しいレーベルを立ち上げて、発信力がさらに強くなったからこそ、いろんなチャレンジができてる。苦しみもあるけれど、喜びも達成感も増えてきています。
新里 自分たちでレーベルを立ち上げて拠点を地元の沖縄に移したことで、やりたい音楽をもっと追求できる環境ができたんです。そこから生まれる自分たちの素直なサウンドをどんどん突き詰めていってる。レーベルをやってると大変なこともあるけれど、それを経験した上で作り上げる歌詞も、きっと努力しているからこそ出てくる、つらさを知った人間くさい詞になると思っているし。
──今改めて振り返ると、独立したことはHYにとっての大きな転機になったと思いますか?
名嘉 めちゃくちゃ大きかったよね。まず、一番身近にいる沖縄の人たちに「あ、HYって沖縄にいるんだ」っていうのが伝わった。それまでは「次いつ帰るの?」ってよく聞かれてたんですよ。「どういう意味?」って聞くと「いや、東京にいつ帰るのかなって」って言うから「いやいや、俺たち東京に住んでないよ」って(笑)。でも今は沖縄でラジオもさせてもらってるし、自分たちのローカル番組も持てるようになった。新しいレーベルを立ち上げるときに掲げた「more local, more global」っていうテーマをどんどん追求していけてると思いますね。ちゃんと地元に密着しながら、そこで得たものを音楽に還元して世界に発信していくようになっている。
──このインタビューは東京で行っているわけですが、最近はライブの出演にあわせて東京に来て、終わったらすぐに沖縄に帰るんですよね?
名嘉 そうですね。
──沖縄が拠点になったことで、バンドのスケジュールも変わりました?
名嘉 東京に来たときに、前以上に集中できてますね。いい環境だと思います。
仲宗根 前は1週間くらいこちらにいて、その中でまばらに仕事があるような状況だったんですよ。
新里 レコーディングのときも、マンスリーマンションを借りて生活してたりしてね。
仲宗根 でも今は沖縄にほとんどいるから、本当に仕事のためだけに東京に来ている感覚です。
新里 拠点を移して、帰る場所があるっていう心構えができたんでしょうね。
名嘉 地元の友達と会う回数も多くなりましたね。心は昔と変わってないけど、自分たちのように新しくいろんなことにチャレンジしている友達がいる。そういう同級生や先輩や後輩と話をする機会とかが増えてることも、すごくいい刺激になってますね。
──皆さんって、同級生や地元の友達から刺激を受けた、影響を受けたということをよくおっしゃってますよね。
名嘉 そうですね。みんなタフなんですよ。自分だったらへこたれるような状況でも「あの仕事は俺しかできないから」って言って仕事に向かっていく……そういうプロ意識を持ってる同級生や先輩がめちゃくちゃいるんです。
宮里悠平(G) 自分にも同じ沖縄でがんばってるギタリストの友達がいまして。最近ひさしぶりにそいつと会う機会があって「お互い15年よくがんばったよな」って話をしたんです。で、彼の言うことを聞いていたら彼は音楽をすごく追求してて、話を聞いて「お前、そんなこと考えてるんだ。じゃあ自分ももっと、個性を出しながらがんばっていかなきゃいけないな」って思わされたりしました。
許田信介(B) 県外に出てがんばってる同級生もいるしね。沖縄の人ってだいたい2、3年したら沖縄に帰ってくるんですけど、もう7、8年も東京にいてがんばってる同級生もいる。そういう刺激もありますね。
名嘉 だから、自分ももっとがんばらないとって思います。
HYの「LIFE」が見えるアルバム
──ここからはアルバムの内容について聞いていこうと思います。まず「LIFE」というタイトルはどういう経緯で付けられたんでしょうか?
名嘉 作品が完成して、最後にみんなでホワイトボードに向かってああでもないこうでもないと話し合って決めました。
仲宗根 「このアルバムの曲、全部自分たちの『LIFE』を象徴したものだね」って。アルバムを頭から最後まで聴いたら、HYの1日というか「LIFE」が見えるよねっていう話になったんです。いくつか候補がある中から、そうやって「LIFE」になりました。
──ジャケット写真のような海辺の風景のイメージもその時点であった?
名嘉 そうですね。沖縄は海に囲まれてるし、みんなオフに海に行く機会がとても多いので、きれいな海の前で写真を撮ろうというのはありました。ジャケット写真の「LIFE」っていう文字も、自分たち5人が木で作ったんですよ。「LIFE」って、やっぱり自分で作っていくものだからね。そういう手作り感を感じられるようなジャケットにしました。
──1曲目の「my friend」から、かなりアッパーな曲調ですね。
名嘉 これはもともとこんなにアッパーな曲ではなかったんです。この曲にはイメージがあるんですよ。高校を出たあとに大学や仕事があってだんだん会う機会が減っていった友達と、ひさしぶりに一緒にビーチに行くような情景を思い浮かべながら作ったんです。でも、最初はもっとゆったりした感じで……“30代半ば”くらいの曲だった(笑)。でも、5人で作っていくうちに「もっと夏にしよう」「もっともっと若くしていこう」っていうことになって……最終的に“18歳”くらいの曲になりました。
──「夏だ!!!パーティー」も、タイトル通りハイテンションなサウンドですね。
仲宗根 これはハッキリ夏を意識して作った曲ですね。とても弾けた「ザ・夏!」みたいなものを作りたいなって思って。
──「Be Happy!!」はどうでしょう? これもかなりパワフルで明るい曲になっています。
宮里 これも作っていくうちに曲調が変わっていった曲ですね。この曲はもともと友達との別れがあって作った曲なんです。最初はクリーントーンがいいんじゃないかと思ってたんだけれど、ギターをがっつり歪ませて、こういうちゃんとしたバンド感があるロックの曲があってもいいんじゃないかと思い至ってこのようなロック調になりました。
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- ニューアルバム「LIFE」 / 2015年7月15日発売 / ASSE!! Records
- 初回限定盤 [CD+タオル] / 3996円 / UPCH-7031
- 通常盤 [CD] / 2376円 / UPCH-2044
初回限定盤収録曲
- my friend
- 夏だ!!! パーティー
- Be Happy!!
- キヅイタ
- ハレル(Bonus Track)
- 風になって花になって
- 愛しあって許しあって
- HOLD
- いつまでたっても女の子
- さよならまたね
- スマイル
通常盤収録曲
- my friend
- 夏だ!!! パーティー
- Be Happy!!
- キヅイタ
- 風になって花になって
- 愛しあって許しあって
- HOLD
- いつまでたっても女の子
- さよならまたね
- スマイル
HY(エイチワイ)
2000年に沖縄で結成された、男性4人女性1人からなるミクスチャーロックバンド。2001年にミニアルバム「Departure」を沖縄限定で発表し、高い支持を得る。2003年にリリースしたアルバム「Street Story」は口コミで人気を集め、インディーズながらも100万枚以上もの大ヒット。続く2004年の3rdアルバム「TRUNK」もメガヒットを記録し、Linkin Parkの東京・日本武道館公演でオープニングアクトを務めるなど躍進を果たす。2007年には初の海外ツアーを行い、北米の8都市を回った。2013年、バンドは沖縄にASSE!! Recordsを設立し、本格的に地元に拠点を移す。2014年2月にはこのレーベルの設立を記念した9thアルバム「GLOCAL」をリリースした。同年12月に全曲がラブソングで構成された10thアルバム「LOVER」を発表。2015年7月に通算11枚目のアルバム「LIFE」をリリースする。